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第9章 神の使者、獣人界に降臨(獣人界改革編)

第73の宴 消えない罪

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俺達は奴隷のために創った街に戻る。
傷だらけの兵士たちには王城に戻り、手当を受けてもらって、元獣王は俺たちに付いてくる。

兵士たちに薬を渡してやっても良かったが、次の獣王が決まるまで大人しくしてほしかったので、そのままにしておいた。

まあ、暴れたところで拷問のトラウマがフラッシュバックするだけだけどな。



「皆、帰ったぞ!!」
『おかえりなさい!!』
街では女性と子供達が笑顔で迎えてくれる。
奴隷たちは皆で勝利を喜びあっている!!

「おい、元獣王。
お前、こいつらに言うことあんだろ?」
「・・・わかった。
皆の者・・・今まで済まなかった・・・。
今までの俺は力でモノを言わせ、従わせてきた・・・。
謝って許されることではないとわかっている・・・。
だから、これから少しづつ償っていきたいと思う。
・・・申し訳御座いませんでした!!」

土下座をする元獣王。

『・・・』
黙ってしまう奴隷たち。
そこで、ライオンの獣人が口を開く。

「頭を上げろギャウ。
確かにお前は散々酷いことをした。
だが、酷いことをしていたのは俺たちも一緒ギャウ。
犯罪奴隷の俺達はお前を攻めることはしない。
あとは他の街の獣人達が許すか許さないかだギャウ。
お前達はどうだギャウ?」

ライオンは税が払えなくて奴隷になった獣人達に問いかける。
「・・・先ずは今まで奴隷になって買われた人達を開放してください・・・。
俺達はタナトス様に買われたから助かったけど、それ以前に買われた人達はまだ助かってないワン・・・。
今でも酷い思いにあっているはずワン。」
「それは我が助けよう・・・。
今だけは我が獣王だ。
獣王の特権をフルに使う。
奴隷になった者の心の傷は我が消し去る。
だから、そこは安心してほしい。」

「流石はタナトス様だワン!
ありがとうございます!
でも・・・やはり私はこの人を許すことは出来ない・・・。
この人のせいでどれだけ皆が苦しんだか・・・。
許せと言われても無理に決まってるワン!!」

他の奴隷も涙を流し、同意する。

「・・・そりゃそうだ。
俺が同じことされたら、許せないと思うし、ぶっ殺すと思う。」
「うぅ・・・。」
「それくらいお前は酷いことをしたんだ。
きっとお前は一生許されない。
だけど、お前は一生罪過を背負わなければならない。
いつかは許してもらえるなんて思うなよ・・・?
一生をかけて贖罪しろ。」
「・・・わかった。」

「さて、奴隷共よ。
今日から少しの間、我が獣王になった。
ここで、獣王の我から命令だ。」

『命令・・・?』
奴隷達は息を呑む。

「今すぐ奴隷をやめろ・・・。
奴隷制度は今日で終わりにする!!」

『!!!!』

「・・・どうした?
嬉しくないのか?」
「・・・いや、あんたの奴隷ならいいかなって・・・。」
「タナトス様は優しいからこのままでも構わないブー。」
奴隷達は自由を拒みだす・・・。
「はっ!甘えるな!
そもそも、我は獣王を倒すためにお前らを買っただけだ・・・。
獣王を倒した今、貴様らは用済みだ。
何処へでも自由に生きるがいい。」

『用済み・・・!』

「安心しろ・・・。
お前達が今後、生きていけるように手助けはしてやる。
さてと、ミーナ。
街に戻るぞ。
ソフィア達と合流する。」

「わかったですぅ!」

ミーナは空間魔法を展開する。

「元獣王よ、お前も来い。
じゃあな、お前達。
また来る。」

『タナトス様!!』

ハルトは元奴隷たちの言葉を無視して空間の向こう側に行ってしまう・・・。

「ご主人様・・・用済みは言い過ぎよ!」
「そうだよ!あんなに頑張ったのに!」
「可愛そうですぅ・・・!」
「何を言ってる?
戦いが終わったら、奴隷を開放すると言っただろう?
それを開放しなくていいなんて・・・。
俺の元に居れば楽できるとでも思ったんだろう。
俺は近いうちにここからいなくなる。
あいつらは何時までも奴隷なんてやっては駄目なんだ。」
「そうだけど・・・。」
「ほら、行くぞ。
ソフィア達が待っている。」

街の中に入るとティナが光魔法で街の獣人達を回復していた。
「戻ったぞ。」
「あ!旦那様!!」
「タニャトス!!」
『おかえりなさい!!』

「ああ。
どうだ、回復は順調か?」
「大体終わってるにゃん!!」
「ハティが捕まえた兵士たちも洗脳して大人しくしてるわ!」
「そうか。よくやったな。」
1
俺たちが話していると、ミミがこちらに向かってくる!!
「ハティちゃん!!」
ハティを見つけたミミはまっしぐらにハティの元に行き、抱きしめる!
「良かった!無事だったんだね!!」

〈ガルルルルル!〉
「妾のハティ様に抱きつきおって・・・!ってヤキモチ妬いてるよ!」
〈ガウガウ!〉
「アセナ!黙れ!
ミミ、お前のおかげで街の獣人達は救われた。
ありがとう。って言ってるよ!」
「そうか・・・お前がミミか。
ハティが世話になったな。」
「そんな!
助けて貰ったのは私だから!! 
ハティちゃんが居たから皆を救えたんだよ!!」
「確かに兵士たちを倒したのはハティだが、お前が助けたいと思わなければハティは動けなかった。
お前の想いがハティを動かし、街の獣人達を救ったんだ。
よくやったな・・・。」

ハルトはミミの頭を撫でる。
嬉しそうなミミ。

「そんなミミにはご褒美だ。」
《クリエイトアイテム!》
いっぱいのロリータ服にこの前出した子供用と違い、本物のアクセサリーがミミの前に現れる!
「ええ!いいの!?
この前、貰ったばかりだよ?」
「アクセサリーはこの前のと違い、本物だ。
欲しがっていただろ?」
この前、子供達に服を出したときは子供用のアクセサリーだった。
ミミはそれでも喜んでくれたが、レナ達のもつ本物も欲しそうにしていた。
「気づいてたの・・・!?」
「勿論だ。」
「にゃにゃにゃにゃ!
羨ましいにゃん!!
タニャトス!
みゃーにも出してにゃん!!」
「今度な。」
「ひどいにゃん!!」
うなだれるティナ。
「タナトス様・・・ホントに貰っていいの?」
「当たり前だろう?
お前はそれだけのことをしたんだ。
こんなに小さいのに他の街の獣人の事を考え、行動に移した。
お前の行動は称賛に値する!」

「嬉しい!ありがとうございます!」
「わあ!いいなぁ!ミミちゃん!」

ミミの近くにいた犬の獣人が羨ましそうにする。
ミミの友達みたいだ。
「ポメちゃん!一緒につけよ!
沢山あるから!
いいですか?タナトス様!」
「ふっ、それはもうお前の物だ。
好きにすればいい・・・。」

『わぁぁぁぁい!!』

ふっ、この子は凄いな。
他人のことをちゃんと考えられる子なんだな。

どっかの精霊にも見習ってほしいな。

こういう子が沢山いれば獣人界も安泰なんだけどな。
「ミミ!」
ミミの母親が駆け寄ってくる。
「ママ!
みて!タナトス様がくれたんだよ!」

ミミが母親にロリータ服とアクセサリーを見せる。
「まあ!羨ましいぴょん!
じゃなかった!
タナトス様!いいんですかぴょん!」

「ああ。勿論だ。」
〈ガウガウ!〉
「ん?なんだ?ハティ?」
「ハティちゃんがママのお陰で迷わず街に行けたんだって言ってるよ!」
「ハティの言葉がわかるのか・・・!?」
「うん!
私はどんな生き物とも会話できるよ!!」
「ルナより優秀じゃないか・・・!」
「がーん!!うう・・・どうせ私なんて・・・。」

・・・あ、悪い。

「だから、ハティと行動が出来たんだな。
ミミの母親もよく頑張ってくれたな。
褒美だ!受け取れ!」

《クリエイトアイテム!》

目の前に大人用のロリータ服一式が何着か現れる!

「キャァァァァァァ!
可愛いぴょん!!素敵ぴょん!!」

子供のようにはしゃぐミミの母親。

「はっ!すいません・・・あまりの可愛さに取り乱したぴょん。」

周りの獣人もロリータ服を羨ましがっているな。 
まあ、慌てるな。

近いうちに買えるからな。

その後、付いてきた元獣王は全ての街に謝罪をした。
勿論、どの街も許してくれなかった。

それほど、街の恨みは根深く、元獣王は自分のしでかしたことがどんなに罪深いかを知ることになった・・・。

「なあ・・・タナトス・・・
俺は何をしたらいい・・・?
勿論、一生許されないのはわかってるギャウ。
許して貰おうとは思っていない。
だが、今まで酷いことをした獣人達に何かしたいギャウ・・・。」
「・・・じゃあ、俺がここにいる間は俺のそばにいろ。
今から俺が獣人界を変える。
それを見て、お前が出来る事をすればいい。」
「俺が出来ることギャウ・・・?」
「まあ、見てろ。
さあ王都に行くぞ。
全奴隷の開放をする。
ソフィア、お前の力が必要だ。
今から活躍ぶりしてもらうからな。」

「ほう?妾はの力が欲しいか?
じゃあ、愛の口づけをするがよい!!」

ごちんっ!!


「いった~い!!
何よ!冗談じゃないの!!
久しぶりに殴られたわ!!」
「今のはソフィアが悪いわ。」
「こんな時に冗談はないよ。」
「ざまあみろですぅ!!」
「アホだにゃん!!」

「馬鹿なこと言ってないで行くぞ・・・。」

「はい・・・。」

そして、俺達は王都に空間移動する。
王都に行くと早速絡まれる!!

かと思ったが、逆に誰も近寄ってこない。
あ、こいつがいるからか。

王都の獣人はまだ王が交代したことを知らない。
つまり、こいつが獣王だと思っている。
皆近づくどころか、膝をついて敬礼する。

「タナトス・・・皆に言ったほうがいいのでは・・・。」
「まだいい。
それより、全員王都に中央の広場に集めてくれ。
奴隷を連れてだ。」
「ああ。わかった。」

元獣王が中央広場に行き、大声で叫ぶ。

「皆の者ォォォォォ!!
今すぐ俺の所に集まれぇぇぇぇ!!!
奴隷も連れて来い!!!
一人残らずだ!!!
隠していたら命はないと思えぇぇぇぇ!!!」

元獣王の声に王都の獣人達が慌てて中央広場に集まる!!
ちゃんと奴隷も連れてきている。
二十分近くで全員が集まる!

「集まったぞ。」
「わかった・・・。
皆の者!我は神の使者、タナトス。
今は獣王も兼任している!!」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

王都がどよめく。
「今、獣王って言わなかったかガウ!?」
獣王はあの方じゃ・・・?」
「俺はこのタナトスに大敗した・・・。
よって、今の獣王はこのタナトスだ!」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

「獣王の我の言うことは絶対だ・・・。
今から貴様らに命令する・・・。

貴様ら・・・奴隷を全員開放しろ・・・。」

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