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第5章 クロスフォードに迫る危機

第48の宴 我、バイクを創り出す。

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「よし、次だ!
前回はブレーキが無かったから付けないとな。」
「あのー。
タナトス様は何を作っているのですか・・・?」
「ああ、これはバイクと言ってな・・・。
この街には風の魔石が多く取れるらしいからな。
それを使った乗り物だ。
これが完成すれば、ここからアレンの街まで3時間くらいで行けるぞ!」
『えぇぇぇぇぇ!!3時間!?』
「そ、それは本当ですか!?
うちの街の風の魔石で!?」
「ああ。革命起きるだろ?」
「か、革命どころの騒ぎではありませんよ!!」
「文化遺産レベルですぞ!!」
そんな、大げさな。
「だから、完成まで、もうちょっと待っててくれ。
あ、ヴァーンは鉄が加工できる職人を集めといてくれ。
これを大量生産しないといけないからな・・・。」
「わ、わかりました!!
早速、集めますですぞ!」

ヴァーンは早速お付の者に手配を頼む。

「さあ、俺は2台目を創るか・・・。」

ブレーキを搭載したモノを創らないとな。
さて、どうしよう?
普通のバイクならディスクブレーキシステム
とかあるけど、仕組みも分からんし、タイヤなんてローラーだしなあ・・・。
タイヤ止めたところで動力は風だから関係ないよな・・・。
風を止めればいいのかな・・・?
でも、風を止めたところで、勢いが付いちゃってるからなぁ・・・。

勢いを止める方法か・・・。

そうだ!
逆に風を送ればいいのか!!
前に動く力を後ろに動く力で相殺できるはず!!
じゃあ、こういう感じか?

《クリエイトアイテム!!》

ハルトの前にまたもバイクが現れる。
今度は後ろのマフラーだけではなく、前にもマフラーらしきモノをセットしてみた。

早速魔石をセットして・・・

いざ!
ハルトはスイッチを入れる。

が・・・

「ぐわぁぁ!!」

いきなり最高速度に達した為、身体が持っていかれるハルト。
何とか体制を持ち直すが・・・
「壁にぶつかる!!
ブレーキ!!」

ブレーキボタンを押すと今度は後ろに急発進して、ハルトはふっ飛ばされてしまう!!

「うわぁぁぁぁぁ!!」

どすぅぅぅん!!

「た、タナトス様!!
大丈夫ですか!?」
「イテテテ・・・はぁぁぁ。失敗だ・・・」
「え!?全然大丈夫そう!?なんで!?」
「次こそは・・・!」

アレンの心配を気にも止めず、ハルトは次のバイクに取り掛かる。

今の失敗は先ず、スタート。
いきなり強風の魔石だとかなり身体を持っていかれる・・・。
もう少し弱い魔石も搭載して、早い方に切り替えた方がいいな・・・。

後はブレーキ。

これも弱めの魔石の方がいいな。
だが、弱すぎると勢いを殺せない・・・。
これも調整が必要だな。

《クリエイトアイテム!!》

そして次なるバイクが現れる。
先ずは後ろのマフラーには中風の魔石と強風の魔石。

ブレーキに弱風にしてみようかな?

「よし!行くぞ!!」
先ずは中風スイッチを押す。

スィィィィィ・・・・

「・・・・時速で20キロくらいか・・・?
最初はこれでいいが、このあとが・・・」 
ハルトは強風を押す。

すると一気に加速するバイク!!

「ぐっ!!」
先程よりかはマシだが、少し体を持っていかれてしまう!!
そして、またも壁に衝突しかけるハルト!!

ハルトはブレーキのボタンを押すが・・・。

ドガァァァァン!!

またも壁に衝突してしまうハルト!!

「ぎゃぁぁぁ!!
タナトス様ァァァァァ!!!」

「いてててて・・・。」

むくりと起き上がるハルト。

「えぇぇぇぇぇ!?
生きてるぅぅぅ!?
何で大丈夫なんですかぁぁ!?」 
もう、バイクよりハルトの身体のほうが凄いと思い始めるアレン。
「弱風じゃ止まらないか・・・。
スタートは良かったが、その後だな。
強風と中風の間の魔石かな・・・。
ブレーキは中風にしてみよう・・・。」

《クリエイトアイテム!!》

ハルトは次のバイクを出す。
次のバイクは後ろにマフラー3つ。
前にマフラーを一つ、中に魔石をセット出来る仕様。
後ろに中風、強中風、強風。
前に中風の魔石をセット。

「よし!いくぞ!!」

先ずは中ボタン。
ゆっくりと進み始め、時速20キロくらいに到達する。
次に強中風ボタン。
徐々にスピードが上がっていく!

「中々いいスピードになってきたな!」
大体50くらいかな?
そして強風ボタン。

「これなら身体が持っていかれないな!」

時速は80程。
後はブレーキ!!
俺はブレーキボタンを押す。
すると少しづつスピードが落ち、ボタンを押して5メートル程の所で完全にバイクが停止する!
「す、凄い!!
やりましたね!!タナトス様!!
完璧じゃないですか!!」
「いや、だめだな・・・。
もう少し早く止まるようにしないとな・・・。
ブレーキは強中風だな・・・。
スピードももっと欲しい・・・。
後は走ってるときに振動が凄いな。
サスペンションをつけるか?・・・。
ローラー部分に固めのゴムを巻くか・・・?
それともいっそのこと浮かすか・・・?
軽量もしたいな・・・。
もう少しスピードが上がるはず・・・。」
「え!?まだ、駄目なんですか!?」
「ああ?
まだいたのか、アレン。」

「えぇぇぇぇぇぇ!!
忘れられてた!?
それより、まだ改良するんですか!?」
「当たり前だろう?
完璧なものじゃないと買った人に申し訳ないだろ?」
「流石、タナトス様・・・!
勉強になります!!」

いや、お前商売人じゃ無いだろ?
何を学ぶ必要がある?

「次だな・・・。」

さっき考えた浮かすっていうのはどうだろう?
それならタイヤもいらないし、サスペンションも要らない。
風の魔石で車体を浮かせ、進ませればかっこいいかもしれない!
某7つの玉を集める壮大な物語でもそうゆう乗り物あったしな!
でも、車輪がないから曲がるときどうするか・・・。
そうだ!前輪にも魔石をつけてハンドルで操作しよう!!
あとはライトをつけて・・・良し、イメージが湧いた!

《クリエイトアイテム!!》

そして、ハルトの前にイメージ通りのバイクが現れた!
今までのバイクと違い、タイヤの代わりのローラーは無く、前輪部分に小さなマフラーのようなものが左右に二つづつ。後ろには左右に3つづつマフラーが搭載しされている。
そして、真ん中にブレーキ用に逆方向にマフラーを左右にセット。
前輪部分と後輪部分の下には車体を浮かすための風穴がある。

ぱっと見は前の世界のアメリカンバイクの様だ。
シートにはバックレストも完備だ!!
「いいな!
あとはどの風量で浮くかだな。
中風か強中風だろうな。」

先ずは中風で試す。
ハルトはスイッチを押す。
すると、車体が浮き始める!!

「おお!浮いた!
アレン、どのくらいだ?」
「大体50センチくらいです!」
「そうか、じゃあアレンも俺の後ろに乗ってみろ!」
「え、いいんですか!?」
「二人で乗ったときどうなるか検証したい。
さあ、早く!」
「わ、わかりました!」

一度スイッチを切り、アレンを後ろに乗せ再スタート。

すると・・・。

「・・・うーん。
やはり重くなるとあまり浮かなくなるな・・・。」
「人一人増えただけで違うんですね・・・。」

二人乗りになると10センチくらいしか浮かなくなる。

「じゃあ、強中風でやってみよう。」
アレンをまず降ろし、強中風でスイッチオン。
中風の時と違い、結構な高さで浮き始める!
「うお!結構浮くな!」
「1メートルくらい浮いてますよ!!」
「これでアレンを載せてみよう!」
一度スイッチを切り、アレンを乗せ、リスタート!
二人を乗せた車体は一人のときよりも浮かなかったが、50センチ程浮いている!!

「二人の時はこの魔石だな!
丁度いい高さだ!」
「では、一人の時と二人の時で石を替える感じですね!」
「そうだな・・・。創り直そう。」

そしてまた、バイクを創造する!

「今度こそ完成だ!!」
「やりましたね!タナトス様!」
「じゃあ、最後のテストだ!
行くぞ、アレン!!」
「へ?行くって何処へ・・・?」
「これに乗ってクロスフォードに行くんだよ!!」
「えぇぇぇぇぇ!?」
「これに乗ったら何時間で着くか検証しないと!
お前には証人になってもらう!」
「わ、わかりました!行きましょう!」

俺達は町の外に出て、早速クロスフォードを目指す。

「いざ!出発!!」
ハルトはスイッチを入れ、車体を浮かす。
そして1stギアスイッチ。(中風)

スィィィッと進み出すバイク。

「わあ!動いた!この速度でも歩くより断然速いですね!
馬車より速いんじゃないですか!?」
「感動するのはまだ早いぞ!
よし、2ndだ!」
ハルトは2ndギアスイッチを押す!
すると更にスピードが上がる!!
「おお~!?
2ndでこのスピード!?
充分速いですね!!」

ぐんぐん進んでいくバイク。

「よし、スピードが乗ってきた!!
3rdいくぞ!!」

ハルトは3rdギアスイッチを押す!!
更にスピードを上げるバイク!!

「す、凄い!!
こんなに速いとは!!」
「ハティはもっと速いぞ!!」
〈ガウガウ!!〉

実はずっと横にいたハティ。
バイクの最高速度にもついてくるハティ。
まだ余裕はあるな!
「流石はタナトス様の眷属ですね!!」
〈ガウ♪〉

八咫烏の案内の元、2時間半ほどで到着する。
途中、ハンドル操作の検証もしたが、問題なく曲がったりすることも出来た。
ブレーキもスイッチを押してから二メートル位でストップすることが出来た!

「よし!完璧だ!!」
「やりましたね!!
まさか、ここまで2時間半で着いてしまうとは!!」
「なあ、アレン・・・これ、売れると思うか?」
「欲しいと言う方は沢山いると思います!!
後は値段ですかね。
これだと軽く1000万はしますよね?
金額的に手の届かない人もいますからね・・・。」
「は?1000万!?
そんなするわけ無いだろ!
ボッタクリか!!
そんな高いもん売れるかよ!!
高くても200万だろ?」
「そ、そんなに安いのですか!?
馬車よりも安いじゃないですか!!
安すぎですよ!!」
「え、そうなの!?
馬車っていくらなの?」
「安くても500万くらいしますよ?」
「あんな遅いものが!?
それこそ、ぼったくりだろ!!」
「そ、そうですかね・・・?
でも、このバイクなるものが200万・・・
売れる予感しかしません!!
しかし・・・。」
「どうした?」
「二人しか乗れないとなると家族向けではないですよね?」
「・・・そうだな。
このバイクはな!!」

「へ?」

「このバイクは次に進むためのモノに過ぎない。
勿論、これも商品化するがな。」
「次に進むため・・・?」
「そうだ。
次は車を創る!!
車がが出来れば、更なる革命が起きるぞ!!」
「更なる革命・・・!?」


次回・・・ハルト、車を創る。

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