上 下
38 / 137
第4章 神の使者、王都に降臨

第38の宴 3人の想い

しおりを挟む
公爵二人のお仕置きも終わり、俺達は店に戻った。
ハティは子供達と遊んでる途中なので、そのまま帰っていった。

店に戻ると、まだまだ人の列は途絶えていなかった!
「タナトスさん!
ヤバいです!!
在庫の数と並んでるお客さんの数が合いません!!
このままだと今並んでる半分以上のお客さんは買えないです!!」
「何!?
やはり足りなかったか・・・!」

どうする・・・。
このまま帰ってもらうか・・・?
いや、皆楽しみにしていた筈だ・・・。
せめて、今並んでいる人だけでも・・・!

「シルビア!仕方ない!
今並んでいる人までで打ち切りにしよう!
従業員は最後尾で看板を持って、もう並ばないようにしてくれ!」
「はい!」
「しかし、衣装は・・・!」
「上で作り終わったやつはどんどん持ってくること!
それでも足りない場合は今日に限り、我が創る!
今並んでる人達の分だけでも確保する!」
「タナトスさん、申し訳ありません・・・!」
「いや、これは俺の誤算だ!
最初から作業員ももっと多く入れるべきだった!
今回は全て俺のせいだ・・・。
皆は本当に頑張ってくれた。」
「いえ!
タナトスさんにはホントに感謝しています!!
私の考えた服をこんなに人気にしてくれました!
貴方がいてくれたお陰でこんな嬉しい悲鳴をあげることが出来たんです!
だから、自分のせいとか言わないでください!!
皆、そして私も貴方に感謝してるんですから!!」

シルビアは笑顔で俺に感謝を述べる。

「・・・ありがとう。
そう言われるだけでやった甲斐があったな・・・。
兎に角・・・今日は来たお客さんを全員笑顔で帰す。
もうひと踏ん張りだ!
皆やるぞ!!」

『はい!!』

それから、途中やはり在庫切れをするものの、ハルトのスキルにより、解決され、全てのお客に衣装を購入してもらうことが出来た。
店がしまったのは夕方5時・・・。
予定より2時間早く閉めることになった。
店の中はもう何も残されていない・・・。

「完売だァァァァァァァァァ!!」
『わぁァァァァァァァァァァ!!!!』
「やっぱり全部売れたわね!!」
「もう何も残ってないよー!!」
「すっからかんですぅ!!」
「凄い・・・!
私の店の商品が何も無くなるなんて・・・。
タナトスさん・・・ありがとうございます・・・!!うう・・・!
そして、協力してくれたレナさん、ルナさん、ミーナさん・・・お店のために全力で働いてくれた作業員、従業員の皆さん・・・
今回の偉業は決して私一人では成し遂げることが出来ませんでした・・・。
皆さんの力かがあってからこそです!!
ホントに・・・ありがとうございます・・・うぅ・・・」

静かに泣き始めるシルビア!


「うわぁぁぁぁぁん!!
売れたわ・・・!
全部売れましたわ!!
私達はやりましたわ・・・!!」

うるさく泣き始めるレジーナ。

「レジーナ、お疲れ様。」
「リース・・・。
うわぁぁぁぁぁん!
頑張って売ってくれてありがと~!!」

リースに抱きつくレジーナ!

「ちょっと・・・!全く・・・。
ちゃんと約束は守りましたわよ・・・。」
「うん・・・!ワタクシは貴女のことを信じてたわ・・・!
うわぁぁぁぁん!!」
ちょっと前までが嘘のように抱きしめ合う二人。
「ふふ、仲良くなってよかったね!
アイルもお疲れ様。」
「ミリアちゃん・・・。
ミリアちゃんも頑張って売ってくれてありがとね!」
「これからも頑張ろうね!」
「うん!!」

「わ~ん!
お姉ちゃん!!
私頑張ってお姉ちゃんの衣装売ったよ!!
いい子いい子してぇー!!」
「こら・・・こんなところで・・・抱きつかないで・・・!」
「だってぇ!嬉しいんだもん!!」
「・・・よく・・・頑張ったわね・・・。
ありがとう・・・。」
カリンの頭を撫でるコリン。
「うわ~ん!
お姉ちゃんが久しぶりに頭撫でてくれたよ~!!」

他の作業員も従業員も皆抱き合って喜び合う!
が・・・


「喜び合ってるところ悪いが、今日はまだ初日だぞ? これからがもっと忙しくなる。
喜んでる場合じゃないぞ?」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』

「だ~か~ら~!!
何で貴方はそうやって水を差すのよ!!
今、皆がお互いを称え合う時間でしょ!!」

「やっぱりご主人様は心がないわね・・・。」
「感動台無しにだねー!!」
「ムードクラッシャーですぅ!!」

「お前ら、最近容赦ないな・・・?
最近、特にミーナの言葉がキツくなってるな・・・。
ごほん!・・・いいか?
明日のほうがやばいんだぞ?
今店にある在庫は0。
それでも明日からお客さんは来るんだ。
今日買えなかった者。
もう一着欲しい者。
今日買った人のモノを見て、興味が湧いた者。
明日までに何着作れる?
俺のスキルがあれば、対応可能だが、俺だってずっと王都にいるわけでは無い。」

『え!?』

「何れは俺の力無しでここに来るお客さんを全員喜ばせないといけない。
それに、どんどん新しいデザインを取り入れないとお客も飽きてしまう。
沢山作らないとお客が買えず、信頼を失ってしまう。
今のお前達に喜び合っている暇はないはずだ・・・。」
「ねえ・・・貴方・・・居なくなってしまうの・・・?」
「ん?当たり前だろう?
俺は王都の人間ではない。
我は神の使者。
ここに来たのだって・・・」
「なんでよ!!
ずっとここに居なさいよ!!
貴方が居なくなるなんて嫌よ!!
うわぁぁぁぁぁん!!」

またも泣き出すレジーナ。

「タナトス様・・・私も嫌です!!
私は貴方とずっと一緒がいいです!!」

アイルまで泣き出してしまう!!

「ずっと・・・ここに・・・いて・・・!
貴方がいてくれないと・・・嫌だ・・・!!」

コリンも目に涙を浮かべる!

「おい!泣くな!!
我らがここに来たのはあるモノを探すためなんだ!!
この服屋を助けたのも我の気まぐれだ!」

今の今まで忘れてたけどな!!

「じゃあ・・・それが見つかったらここに帰ってくるんでしょう!!」
「いや、そしたらまた違う所に行く。
我の助けを必要とする者は他にも沢山いる。
我は神の使者・・・。
この世の悪を終焉に誘う者。
この世に悪がいる限り、我の旅は終止符を打てない・・・。」
「そんな・・・タナトス様がいなくなるなんて・・・!
じゃあ、私も連れてってください!!
私はずっと貴方の傍に居たいです!!」
「わ、ワタクシも行くわ!!
ワタクシを叱ってくれる人は貴方だけだもの!
ワタクシには貴方が必要なのよ!!」
「・・・私も・・・貴方が・・・必要だから・・・ついて・・・行きたい・・・!」
「巫山戯るな!駄目に決まってるであろう!!」

『なんで・・・!?』

「お前らがいなくなったら衣装は誰が作るんだ?
リーダーは?ムードメーカーは?それを支える人間は?
お前らは既にここに無くてはならない人間なんだ!!
俺が居なくたってお前らならやっていけるはずだ!!」

『・・・』

下を向き、泣いている3人・・・。

「ねえ・・・ルナ。
ご主人様って鈍感よね・・・?」
「うん・・・。
3人の気持ち全然わかってないね・・・。」
「ニブチンですぅ・・・。」
小声で話す3人・・・。


「タナトスさん・・・。
私はいつか貴方がいなくなることわかってました。
貴方が居なくなってしまうのは私も寂しいです。
でも、ずっと貴方に甘えては要られません・・・。

ここは私の店ですから!

でも、いなくなる前にもう少しだけ、甘えてもいいですか・・・?」
「・・・あと3日だ。」
「え・・・?」
「我はあと3日、お前達を助ける。
それまでに体制を整えろ。
泣いている暇はない!
皆、今自分が出来ることを全力で取りかかれ!」

『・・・・』

「返事はどうした?」

『・・・はい。』

各自、俯きながらも持ち場に戻っていく。
「あの・・・。」
「どうした、リース。」
「本日は父がご迷惑をお掛けして申し訳御座いませんでした・・・。
あの後、父は・・・?」
「ああ。二人共、仲良く抱き合って震えてたな。」
「な、仲良く抱き合って震えて!?
ええ!?あの二人が!?
え!?何をしたんですか!?」
「ちょっとお仕置きをしたまでだ。
まあ、もう我には逆らうまい・・・。」
「まあ、あんなにされちゃね・・・」
「ご主人様、怖かったもんね!(顔が)」
「正気の沙汰とは思えなかったですぅ!」
「一体、何が・・・!?」
「リース、お前は親のようにはなるなよ?
これからもレジーナを支えてやってくれ。
きっと、レジーナもそれを望んでいる。
口には出さないと思うがな・・・。」
「ホントに望んでるのかしら・・・?
まあ、そうですわね。
私は父のような人にはなりません。
ありがとうございました・・・。」

リースはレジーナの方へと去ってゆく。

さあ、俺も人員の増加と明日の商品を創り出さないと・・・。
流石に明日は間に合わないからな・・・。
そして、杖も探さないと・・・。
なんで大事なこと忘れてたんだろ?
まさか、犯人のマインドコントロールか!?
やるな・・・犯人!!
我をマインドコントロールするとは!!

ロリータファッションのことで頭がいっぱいになり、杖のことを忘れたのにハルトは気づかないままだった・・・。

次の日・・・お店にはまたも大量のお客が!
この店に客が取られた為に、他の服屋は閑古鳥が鳴いている状態だ。
並んでるお客に必死にアピールして集客しようとしているが、皆を見向きもしない!
ロリータファションを真似して作ろうとしてるのか、商品を買うために並んでる人もいた。

まあ、今の所それは叶わないけどな。

一年間は類似品を売れないようギルドに頼んであるからな。
朝、ボルトンがやってきて、今日の分の商品を持ってきた。

「何!?ワシが作ったものが完売したのか!?」
「ああ。衣装も全てだ。」
「それはすごいのう!!
ワシももっと頑張らなくてはいかんな!」
「あ、そうだ!これ。」

俺はアイテムボックスから大きめのオリハルコンを取り出す。

「こ、これは夢にまで見たオリハルコンではないか!!
しかもこんなに大きいなんて!!
いいのか!?」
「ああ!勿論だ!
約束だからな。
その代わり、これからもこの店のこと頼むな?」
「ああ、勿論じゃ!!
今じゃ、このアクセサリー作りがワシの生きがいじゃ!!
じゃあ、ワシは帰ってアクセサリーを作らんとな!
合間にオリハルコンを・・・!」
オリハルコンを貰ってウキウキしながら帰っていくボルトン。

そして、本日も店は開店する・・・。
今日もせわしなくお店は繁盛している。
今日は全てシルビアのデザインを見て、俺が作り出した商品。
作業員には明日からのストックを作ってもらい、シルビアとアイルは人員確保のための講習会。

明日からは限定100着とかにして販売する予定だ。
その方がプレミア感がでていいのかもしれない。
作業員が増えればもう少し増やせるかな?
俺が次々と衣装を出していると、従業員から呼び出される!

「タナトスさま!!
た、大変です!」
「どうした!?
また貴族か!?」
「いえ!もっと凄い方が・・・!!」

「は?」

俺が店の外に出ると沢山の兵士に周りの人間は跪き、敬礼している。
並んでいる客もだ。

「タナトスの兄貴!!
お久しぶりです!!」
「おお、ジェイクか!
どうしたんだ?これはなんだ?」
「タナトスの兄貴に会いに来ました!」
「お前がか?」
「いえ、国王陛下です!!」

「はぁぁぁぁぁ!?」

兵士の後ろの馬車から国王が現れる。

まじで王来たのかよォォォォォォ!!
どんだけ素直なんだよ!!
普通呼ばれて来ないだろうが!!
お前は一国の主だろうが!!


そして、ハルトは初めて王と対面することになった・・・。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

新米冒険者がダンジョンで怪しい男達の取引現場を目撃。更に背後から近づく仲間に倒され、その男に実験中の薬を飲まされて目が覚めると……?

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
パロ村に住む『ルディ』は茶色い髪、百六十五センチ、普通の肉体の持つ十五歳の少年だ。 特別強くも賢くもない、そんなルディの夢は冒険者として街で暮らす事だった。 冒険者とは、誰でも即日採用されるぐらいに、採用基準が恐ろしく低い仕事で有名な仕事だ。 質素な家の前で両親と別れの挨拶を済ませたルディは、馬車に揺られて街を目指した。 そして、八日間の旅で『ハルシュタット』の街に無事に到着する事が出来た。 でも、既に手持ちのお金三万ギルは、馬車台と食費で一万ギルまで減ってしまっていた。 これではまともな装備を買う前に、宿屋に何日泊まれるか分からない。 ルディの武器は片刃の鉄の短剣、防具は普段着の白の半袖シャツ、茶の半ズボン、布のパンツ、布の靴だけという頼りないものだ。 槍のように尖った建物という情報を手掛かりに、ルディは冒険者ギルドという冒険者になれる建物に辿り着いた。 そこで綺麗な受付女性や爽やかな青年冒険者の手を借りて、無料の仮登録の冒険者となり、初クエストに挑戦する事になった。 初クエストは、洞窟にいるスライムという魔物を倒して、スライムの核を集めるものだった。 冒険者ギルドで貰った地図を頼りに、洞窟に辿り着いたルディは、洞窟の奥を目指して進んでいく。 そして、その洞窟で灰色の服と黒色の服を着た、二人の男の怪しい取引現場を目撃してしまった。 危なそうな話にルディは急いで人を呼びに行こうとするが、突然背後から、もう一人の男に襲われてしまうのだった。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風
ファンタジー
とある貴族の次男として生まれたアルベルトは魔法の才能がないと蔑まれ、冷遇されていた。 そして、16歳のときに女神より贈られる天恵、才能魔法 が『出来損ない』だと判明し、家を追放されてしまう。 「この出来損ない! 貴様は追放だ!!」と実家を追放されるのだが……『お前らの方が困ると思うのだが』構わない、実家に戻るくらいなら辺境の地でたくましく生き抜ぬこう。 冷静に生きるアルだった……が、彼のハズレスキルはぶっ壊れだった。。 そして唯一の救いだった幼馴染を救い、大活躍するアルを尻目に没落していく実家……やがて毎日もやしを食べて生活することになる。

1人だった少年は貴族と出会い本当の自分を知っていく

杜薛雷
ファンタジー
 前世、日本という国で暮らしていた記憶を持つ子供リディルは、知識を使って母親と二人、小さな村で暮らしていた。 しかし前世の知識はこの世界では珍しいもの。どこからか聞きつけた奴隷商人がリディルの元にやって来た。  リディルを奴隷にしようとやって来た商人からリディルを守った母親は殺され、リディルは魔物に襲われて逃げた。 逃げた森の中をさ迷い歩き、森を抜けたときリディルは自分の生き方を、人生を大きく変えることになる一人の貴族令嬢と出会う... ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  この作品が初めての投稿なので不安しかないです。初めは順調に投稿出来ても後々詰まってしまうと思うのでそこは気長に待ってくれると嬉しいです。 誤字脱字はあると思いますが、読みにくかったらすいません。  感想もらえると励みになります。気軽にくれると有り難いです。 『独りぼっちの少年は上級貴族に拾われる』から改名しました

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫
ファンタジー
 孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。  僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。  そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。  それから、5年近くがたった。  5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

史上最強の料理人(物理)~役立たずと言われパーティを追放されましたが、元帝国最強騎士なのは内緒です~

水無土豆
ファンタジー
 ヴィルヘルムにガレイトあり。  世界最大の国家、ヴィルヘルム帝国有する騎士団〝ヴィルヘルム・ナイツ〟  その騎士団にひとりの男がいた。  男の名はガレイト・ヴィントナーズ。  彼は出自こそ華やかなものではなかったが、皇帝にその才を見出され、騎士団に入団。  団内でもその才を遺憾なく発揮し、やがて、当時の団長を破り、新たな団長となった。  そして時は流れ――戦中。  ガレイト・ヴィントナーズは敵国の策に嵌り、行方知れずとなってしまう。  団長を失い、戦力を大幅に削られたヴィルヘルム帝国。  もはや敗戦必至かと思われたが、結果は帝国側の圧勝。  その上、行方不明だったはずのガレイトの帰還が重なり、帝国内は一気に祝勝ムードに。  ……だが、ガレイトはひとり、浮かない表情のまま。  彼は勝利に酔いしれる人々を尻目に、一路、王の待つ玉座へ。  そして、誰もが耳を疑うような発言をする。 「王よ! どうか私の、この誉れある騎士団を辞する愚行をお許しいただきたい!」  ざわざわ……!  城内にいた騎士たちだけでなく、付き人や兵たちからもどよめきが上がる。  そんな中、玉座にて頬杖をついていたヴィルヘルム王が、口を開いた。 「……ふぅん。ちなみに、団長辞めてなにすんの?」 「りょ、料理人に、なりたい……です……!」  人々のどよめきがさらに大きくなる。 「へぇ、コックか。いいね、素敵だね。いいよ、なっても」  即答。  ここで、人々のどよめきが最高潮に達する。 「あ、ありがたき幸せ……!」  こうしてガレイトは呆気なく、世界最強の騎士団、その団長という称号を捨てた。  彼はここより心機一転、料理人として新しい人生を歩み始めたのである。  帝国はこの日、ガレイトの新しい門出を祝う者。  放心する者。  泣き崩れる者。  軽蔑する者。  発狂する者たちとで、混迷を極めた。  そして、さらに時は流れ――帝国中を巻き込んだ騒動から数年後。  ガレイトは見知らぬ国の、見知らぬ土地。  そこの底辺冒険者たちの付き人として、こき使われていた。  この物語は今まで剣を握り、プレートアーマーを身に纏っていた男が、包丁を握り、エプロンに着替えて、数多の食材たちと戦う(主に悪戦苦闘する)物語である。 ※この物語の登場人物は基本的に全員ふざけています。

処理中です...