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第1章 我、異世界に降臨する

第3の宴 技の名前は意味より格好良さで決める方

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何とか初めてのモンスターを倒した・・・。
そう言えばこのオオカミ、高く売れるらしいな。
このままにするには勿体無いな。
燃やしちゃったから毛皮は駄目かな?
でも牙はあるしな。
俺が読んでた異世界モノではアイテムボックスに入っていたな。
はいるかな?
俺はオオカミの死骸に
「アイテムボックス収納!」
すると目の前のオオカミが突如消えてしまう!!
これ成功じゃね?
俺はアイテムボックスの中身を確認する。
〈カイザーウルフの死骸〉
あ!入ってる!!
いいぞ!このまま入れといて街に行った時に換金しよう!
やはり金は大事だからな!
さて、今回の戦いでわかったことがある。
俺、剣の才能ないな。
でも、折角の魔剣だ。
やはりスキルを創るしかないか。
100ポイント使うのは惜しいが死ぬよりいい。
スキルはやっぱり剣術かな?
なんか普通でつまらないな。
我は神の使者タナトス。
きっと皆よりも特別な存在な筈だ。
つまり普通のスキルでは俺が許してもタナトスが許さない・・・。

そうだろう?タナトス!

特別なスキルでなければタナトスが納得しない。
かっこいい名前の剣術を創り出すしかない!!
そうだなあ・・・。
俺が使うのは魔剣だから剣術よりは魔剣術なのかな?
暗黒魔剣術・・・
紅蓮魔剣術・・・
よし、決めた!
「スキル創造!
スキル名、紅蓮羅刹流魔剣術!!
効果、俺の持つ魔剣の性能を100%引き出し、敵を殲滅するスキル!!!」
紅蓮も羅刹もあんまり意味分からんがかっこいいからいいだろう!!

※羅刹・・・大力で足が速く、人を惑わし、人を食うと言われている悪魔や魔物のこと
※紅蓮・・・真赤なハスの花の意で、猛火の炎の色のたとえ。

〈スキル創造成功〉
自分の所有する魔剣の性能を最大限発揮出来る魔剣術

「よし!
これで俺の覇王幻影剣も大活躍間違いなしだな!!」
早速、紅蓮羅刹流魔剣術を試そう。
何処かにモンスターいないかな?

再び森の中を進むと何かの影が見える。

「お、あれは・・・?」
よく見るとそこにいたのは大きいイノシシ。
まるまる太っていて一見可愛く見えるが、顔は可愛くなかった。

「よし・・・
アイツで試すか・・・。」
俺はイノシシに近づく。

〈フシュゥゥゥゥゥ!!〉

マズイ!気づかれた!!
イノシシは俺に向かって突進してくる!
まさに猪突猛進だ!!
「怖いけど・・・やるしかない!!」
俺は魔剣を構える。
すると何か違和感を感じた。
何かが体の中から吸い取られるような・・・。
そんなことを思っているとイノシシが間近に迫ってくる!!

「ヒィィィィィ!!」

そして、次の瞬間・・・

ズバッッッッ!!!



体が勝手に動いた・・・
無意識に少し横に体が動き、魔剣がイノシシを横一文字に真っ二つに切り裂いた!!
「!!!」
そのまま絶命するイノシシ!!
「す、すげぇ・・・!
これが魔剣術!!
勝手に体が動いた!!
こんなにデカいイノシシを瞬殺できるなんて!!」

〈レベルが上がりました〉

〈lv52→lv78に上昇〉
〈創造ポイント30ポイント獲得〉

おお~レベル上がった!
流石にさっきみたいに大幅には上がらなかったが26も上がったのはすごいな。

さっきのオオカミより強いのかな?

俺は鑑定眼を使う。

〈キングボア(死亡)lv89〉
Sランク
死の森に生息する気性の荒いイノシシ属のモンスター。
突進は全身の骨が砕ける程の衝撃。
毛皮・牙・骨・肉が希少な為、高値で取引される。

やっぱりSランク!!
どんだけヤバいとこなんだよ!!この森は!!
創造神は俺を殺そうとしてんのか?
まあ、倒せたからいいけど。
これも売れそうだからアイテムボックスに収納だな。
真っ二つにしたけど売れるのかな?
まあ、いいか。

そろそろ1回戻るか。

ちょっと奥まで来ちゃったけど、あの小屋はあのデカイ木の下だからな。
わかりやすくていいな。

俺は休憩のため、小屋に戻った。
丁度腹も減ったし。
小屋の近くに来ると今までの不穏な空気が晴れ、長閑な森になる。
「なんでこの辺は空気違うんだろ?
まあいいか。飯にしよう。」

昼食を食べ、小一時間程昼寝をした。
モンスターと戦うなんて前の世界ではあり得ないからな。
意外と疲れていたみたいだ。

仮眠後、再び森に向かった。
魔剣術が上手くいったお陰か朝より恐怖感はない。
寧ろ、自信が湧いてくる。
さあ、来るがいい!
我は神の使者、タナトス!!
貴様らを終焉へと導く者だ!!
ふふふ、ははははははは!!

と森を奥へ進むと何やらモンスターの唸り声が聞こえる。

〈グルルルルルルル!!〉
またあのオオカミだ!
しかも2匹いる。
ん?争っているのか?
俺は少し様子を見ることにした。
2匹のオオカミは互いに威嚇しあっている。
片方のオオカミはかなりダメージを食らっている。
もう片方の方が怪我してるオオカミに襲いかかる!!

〈ガアアアアア!!!〉

怪我してるオオカミの首元を噛みつき、振り回すオオカミ!
次第に怪我オオカミは動かなくなった。
同じ種族同士でも争いはあるんだな・・・。
勝った方のオオカミはそのオオカミを食べ始める。

うぇぇぇ・・・
グロい・・・

がその時・・・

「キュゥゥゥン」

茂みの中から小さなオオカミが現れた。
勝ったオオカミがそれに気付き、今にもその子オオカミに襲いかかろうとする!

「マズイ!!
こうなったら・・・!
オラァァァァ!」
俺はそこら辺の石を投げつけ、勝ちオオカミの注意をそらした!

〈グルルルルルルル!〉

「来い!
クソオオカミ!!」
俺は必死だった。
その子オオカミを守りたい一心だった。

〈グワアアアアア!!〉

オオカミが俺に襲いかかってくる!!
俺は尽かさず覇王幻影剣を構える!!
間近まで迫ってきたところで体が勝手に動き、首元を一閃!!
オオカミは悲鳴を上げることなく、首と胴体が分かれる!!

「ふっ!我に歯向かおうなど百年早い!!」

キマった!!
いや、それどころではない。
あの子オオカミは!?

子オオカミは死んだオオカミに元に行き、鳴いていた。
「・・・お前の母親だったのか・・・?」
ずっと鳴いている子オオカミ。
俺は子オオカミを撫でた。
「ごめんな・・・。
俺がアイツを早く倒していたらお前の母親は死なずに済んだのにな・・・。」
様子を見てないで倒しておけば良かった・・・。
そんな後悔が俺を戒めた。
だが、子オオカミは俺の気持ちを読んだのか、俺に近づき、ペロッと一舐めした。
「許してくれるのか?
・・・ありがとな。」
俺はもう一度、オオカミを撫でた。
せめてもの償いとして、お墓を作ってあげた。
まあ、土に埋めて柱を立てただけだけどね。
ずっと悲しそうな様子の子オオカミを撫で、俺は言う。
「お前の母親は死んだ。
だから、お前はこれから一人で生きてくしかないんだ。
辛いこともあるだろうけど、頑張って生きて立派なカイザーウルフになるんだぞ?」

〈くぅぅぅぅん・・・。〉

俺はそう言ってその場を立ち去った。
あ、倒したやつは回収したよ。

そして俺は森を進む。
更に進む。進む・・・。

「・・・何故ついてくる?」
そう、先程の子オオカミがずっとついてくる。
俺が振り向くと嬉しそうによってくる。
凄いしっぽを振りながら。
「なんだ、お前、俺と一緒にいたいのか?」

〈キャン!〉

俺の言葉を理解してるのかな?
そう言えば昔捨て犬拾って家に帰ったことあるな。
ケルベロスって名前つけて。
その後、親にめちゃくちゃ怒られたな。
でも、今は俺を縛る奴はいない!
しょうがない!
飼うか!
オオカミがペットとかかっこいいしな!!
「分かった!じゃあついてこい!」

〈キャン!〉

子オオカミは余程嬉しかったのか俺の顔を舐め回す!!
「わぁ!やめろ!
くすぐったいだろ!
てゆーか、獣臭い!!」
それでもお構いなしに舐めてくるオオカミ。
やっと離したところで俺はこの子の名前をつけることにした。
やはり、オオカミの神様の名前がいいな!
日本では真神とか言ったけどなあ。
名前っぽくないな。
うーん・・・
「よし!決めた!
お前の名前はハティだ!」
たしか、北欧神話に出てくるオオカミの名前だった気がする!
何かの本で読んだ!

〈キャン!〉

多分気に入ったみたいだ!
「よし、ハティ!
次の獲物を狩りにいくぞ!!」
〈キャンキャン!!〉
ハティもやる気みたいだ!
まあ戦力にはならんがな。
そして、俺とハティは森を進むんだ。

3時間経って、今日の狩りは終了。
結局ハティは役には立たなかったな。
しょうがないよな。
多分まだ産まれて何日かってところだもんな。

俺はハティを連れて小屋に帰るが・・・

〈くぅーんくぅーん・・・。〉

「ん?どうした?ハティ。」
小屋に近づくとハティが情けない声で鳴き出す。
何かこれより先には行けないみたいな感じ。
なんでだろう?
「こっから先に来れないのか?」

〈キュゥゥゥン・・・〉

やはりそうみたいだ。
何故だろう?
確かにあの小屋にはモンスターは誰も近づいて来なかった。
いや、小屋が建つ前からだな。
まさかあの木か・・・?
「我が呪われし魔眼よ!
あの大木の正体を突き止めよ!!
鑑定眼!!」

すると目の前に鑑定結果が出る。

〈創造神の大木〉
昔、創造神が植えたとされる、この世界が創生された頃からある大木。
半径100メートル周囲はモンスターは入って来れない。
但し、眷属のモンスターは入れる。

「・・・なるほど。
だからハティはこれ以上入れないのか。
ずっとモンスターが現れなかったのも納得だ。
でも、眷属のモンスターは入れるのか。
じゃあ眷属にすればいいんだな!」
〈クリエイトアイテム!!〉
ハルトがそう唱えると目の前に首輪が現れる。
「よし、完成だ。
ちゃんとできてるかな?」
俺は鑑定眼で首輪の性能を確認する。

〈眷属の首輪〉
付けたモンスターを眷属に出来る首輪。
付けられたモンスターは逆らうことが出来ない。
また、凶暴化もしなくなる。
主人が得た経験値を同じように得ることが出来る。
但し、人間には使えない。

完璧だ・・・!
これでハティもここに入れるし、俺がモンスターを倒せば強くなる!
やはり、神の使者タナトスの眷属であるからには強くなくては困るからな!
大人になって凶暴化もしないからずっと飼えるな!
「ハティ、これを付ければ小屋に入れるぞ!」

〈くうん?〉

俺はハティに首輪をつける。
すると・・・

〈キャン!キャン!〉

神の大木の中に入れるようになり、喜ぶハティ。
よかった。
首輪は嫌がっていない!こう見ると犬みたいで可愛いな!


こうして俺はカイザーウルフの子供を眷属とすることになった。

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