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005 生誕以前のルール
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「これどこまで戻れるんだ……?」
俺は画面をスクロールし続ける。彼これ数分めくり続けているが、恐らく去年までしかまだ戻れていない。
年単位で戻れるということらしいが、これでは時間がいくらあっても足りない。
軽く絶望しかけた時、画面の下に細い棒のような表示を見付けた。
「スクロールバー……?」
触れると名称が表示された。それをスクロールすると、大幅に年月が飛んだ。恐らく十代の頃の自分が映っている。
なるほど、これを使えばいいのか。
「なんだこの赤いの」
調子よく巻き戻っていると、赤い仕切りのような画像が表示される。軽く撫でると説明書きが浮かんできた。
「『これ以上遡る際は、肉体がない為霊体として遡ります』……?」
つまり。
この赤いのは母の胎内か何かだろうか。そしてそれ以前からやり直す際は霊体、つまり幽霊かなにかで過去に戻れるのか……。しかもそれよりも更に以前の過去に行けるようだ。
それ、やり直しの力超越してないか?? こんな時間に飛んでしまったら俺はどうなるんだ……? また三十年近くやり直すのは流石に嫌だ。
「あ……」
手が触れる。触ってはいけないと思っているとき程、こういうことが起きてしまうものだ。
運悪く俺は生まれる以前の画像をタッチしてしまう。
光が溢れる。
「……ここは」
呟くと、何故か頭の中で自分の声が響くような気がした。
足元を見ると、そこにあるはずの地面がない。
「うわ!? 浮いてる!!」
俺は見慣れた村の、上空にいた。パニックになってしまい、一通り騒いだが、村人は頭上を見上げることはなかった。
どうやら本当に幽霊として存在しているらしい。
画面を出してみたところ、無事に出せたので一先ず安堵する。
「これ、未来にもいけるんだな」
いつもとは逆にスクロールしてみると、今よりは未来の、つまり俺が生まれた以降の画像があった。スクロールバーで大幅に飛ばして最後の画面を見ると、先程までいた部屋が映っていた。
未来は俺が過ごした日までが最後となるらしい。つまり30歳まで。とりあえず元の時間へ帰ろうと思い、画面を選択しようとすると、『警告』と表示された画面に切り替わった。
「『大幅に時間を進める際は、世界へ及ぼした行動から未来への影響が懸念されます。現在の世界への影響値0.00%』……『バタフライエフェクトの強度を変更する』……? なんだこれ」
画面には見慣れない言葉が表示されている。バタフライエフェクトとは……? 現在の強度は『普通』ということらしい。
タッチしてみると更に選択肢が現れ、上から順に、強、普通、弱、無と書かれている。
一度そのまま普通に設定し、現在へ帰ると、相も変わらぬ俺の部屋。村を軽く見て回ったが世界への影響とやらはありそうになかった。
安心した俺はまた霊体になる時間まで戻る。
「スクロールバーを見た感じ、多分俺を妊娠した頃くらいだと思うんだよなぁ」
呟きつつ、俺は村を見て回る。勿論空から。歩くという概念が通じなかったが、行きたい方向へ進む意思を持つと自然に体が動いて行った。
そして俺は幾分綺麗な我が家を見付けた。
「母さん若っ!」
丁度家から出てきたのは母だった。面影は当時のまま残っているので簡単にわかったが、思った以上に若い。
少し腹が出ているのか、服装がゆったりしたものになっている。それとなくついていくと、行く先々で体に気を遣うように労られていた。
間違いない。あの中に俺がいる。
「今の母さんに食べ物とか気を付けるように言えば、俺の体が強く生まれたりしないものか……」
どうしようもない願望を呟いてみる。そんな食事だけで体が変わるほど世の中単純でもないだろう。しかも今の俺は霊体だ。誰も俺を見ることすらできない。
と、思っていたが。
「おや、あんた霊に憑かれとるね」
「え、霊ですか?」
「ええ!?」
村の老婆が俺の目を真っすぐ見ながら母に告げた。
俺は画面をスクロールし続ける。彼これ数分めくり続けているが、恐らく去年までしかまだ戻れていない。
年単位で戻れるということらしいが、これでは時間がいくらあっても足りない。
軽く絶望しかけた時、画面の下に細い棒のような表示を見付けた。
「スクロールバー……?」
触れると名称が表示された。それをスクロールすると、大幅に年月が飛んだ。恐らく十代の頃の自分が映っている。
なるほど、これを使えばいいのか。
「なんだこの赤いの」
調子よく巻き戻っていると、赤い仕切りのような画像が表示される。軽く撫でると説明書きが浮かんできた。
「『これ以上遡る際は、肉体がない為霊体として遡ります』……?」
つまり。
この赤いのは母の胎内か何かだろうか。そしてそれ以前からやり直す際は霊体、つまり幽霊かなにかで過去に戻れるのか……。しかもそれよりも更に以前の過去に行けるようだ。
それ、やり直しの力超越してないか?? こんな時間に飛んでしまったら俺はどうなるんだ……? また三十年近くやり直すのは流石に嫌だ。
「あ……」
手が触れる。触ってはいけないと思っているとき程、こういうことが起きてしまうものだ。
運悪く俺は生まれる以前の画像をタッチしてしまう。
光が溢れる。
「……ここは」
呟くと、何故か頭の中で自分の声が響くような気がした。
足元を見ると、そこにあるはずの地面がない。
「うわ!? 浮いてる!!」
俺は見慣れた村の、上空にいた。パニックになってしまい、一通り騒いだが、村人は頭上を見上げることはなかった。
どうやら本当に幽霊として存在しているらしい。
画面を出してみたところ、無事に出せたので一先ず安堵する。
「これ、未来にもいけるんだな」
いつもとは逆にスクロールしてみると、今よりは未来の、つまり俺が生まれた以降の画像があった。スクロールバーで大幅に飛ばして最後の画面を見ると、先程までいた部屋が映っていた。
未来は俺が過ごした日までが最後となるらしい。つまり30歳まで。とりあえず元の時間へ帰ろうと思い、画面を選択しようとすると、『警告』と表示された画面に切り替わった。
「『大幅に時間を進める際は、世界へ及ぼした行動から未来への影響が懸念されます。現在の世界への影響値0.00%』……『バタフライエフェクトの強度を変更する』……? なんだこれ」
画面には見慣れない言葉が表示されている。バタフライエフェクトとは……? 現在の強度は『普通』ということらしい。
タッチしてみると更に選択肢が現れ、上から順に、強、普通、弱、無と書かれている。
一度そのまま普通に設定し、現在へ帰ると、相も変わらぬ俺の部屋。村を軽く見て回ったが世界への影響とやらはありそうになかった。
安心した俺はまた霊体になる時間まで戻る。
「スクロールバーを見た感じ、多分俺を妊娠した頃くらいだと思うんだよなぁ」
呟きつつ、俺は村を見て回る。勿論空から。歩くという概念が通じなかったが、行きたい方向へ進む意思を持つと自然に体が動いて行った。
そして俺は幾分綺麗な我が家を見付けた。
「母さん若っ!」
丁度家から出てきたのは母だった。面影は当時のまま残っているので簡単にわかったが、思った以上に若い。
少し腹が出ているのか、服装がゆったりしたものになっている。それとなくついていくと、行く先々で体に気を遣うように労られていた。
間違いない。あの中に俺がいる。
「今の母さんに食べ物とか気を付けるように言えば、俺の体が強く生まれたりしないものか……」
どうしようもない願望を呟いてみる。そんな食事だけで体が変わるほど世の中単純でもないだろう。しかも今の俺は霊体だ。誰も俺を見ることすらできない。
と、思っていたが。
「おや、あんた霊に憑かれとるね」
「え、霊ですか?」
「ええ!?」
村の老婆が俺の目を真っすぐ見ながら母に告げた。
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