30 / 46
堕ちてくれる?
堕ちてくれる?①
しおりを挟む
「来い」
美桜の腕をつかんだまま引っ張って、美桜の部屋に向かう柾樹だ。
ぽんっとベッドの上に放りだされて美桜は柾樹を見上げた。
冷たい表情なのに、眉根を寄せているその顔はひどく苦しそうにも見えた。
ベッドに転がっている美桜の上に柾樹はまたがった。そうして上から美桜を見下ろしている。その整った顔にはどんな表情も見えなかった。
「美桜……」
冷たいのに甘い声。
美桜の上に乗ったまま膝立ちをしている柾樹は先ほどジャケットを脱いだだけの姿だ。
まだベストも着たままだし、ネクタイも外してはいない。
「柾樹さん……」
──どうしてだろう?
どうしていつもうまく伝わらないのだろうか。とても好きなのに。一目惚れをした人で今こんな風にされていてさえ好きな人なのに。
「美桜……」
柾樹の手が伸びてきて、するりと美桜の頬を撫でた。
すり……と美桜はその手に擦り寄る。
柾樹がゆっくりと顔を近づけてきて美桜と軽く唇が触れ合う。
「……っん」
「甘い声だな……」
緩く重なり合う唇。美桜の顎に柾樹の手が添えられて、少し下に引かれる。
その動きで美桜の口元が緩く開いてしまうと柾樹はそこに舌を差し込んできた。軽く舌先が絡み合うだけだったのが、だんだん深くなりお互いに擦り合わせるように夢中になってキスをする。
「っ……は」
まるで頭の芯が痺れて蕩けてしまいそうだ。
「こうやって……颯樹のことも誘惑したのか……?」
その瞬間、まるで目が覚めたかのように美桜はびくっと身体を揺らす。蕩けそうだった気分が一瞬にして醒めた。
柾樹は冷酷な瞳で美桜を見ていたのだ。
「……ちが……います。そんなこと、してません。私は……」
颯樹のことはなんとも思っていない。自分が好きなのは、柾樹なのだと言おうとしているのに、柾樹に唇を塞がれる。
何度も何度も唇を重ねられた。
「まさ……きさん……」
「聞きたくない……」
冷たい表情なのに情熱的なキスで蕩けそうにされて、美桜の身体の力はどんどん抜けていく。その心地よさに逆らえないのだ。
だから、ただただ潤んだ瞳で柾樹を見つめることしかできなかった。
それに気づいた柾樹は着けていたネクタイを首からしゅるっと音をさせて解き、それを美桜の目元に巻いてしまった。
目隠しされてしまった美桜は戸惑うばかりだ。
──見ることも、許されない……。
封じられた目元が熱くなって、目に涙が溢れるのを感じる。そして目元に布地がそれを吸い取っていくのも。
時折、吸いきれない雫が溢れるのを感じた。
「可哀想だな、美桜。泣いても逃げられない……」
そう囁いた柾樹が美桜の耳元にそのまま口付ける。耳元に濡れたようなくちゅっという音が何度も何度も響く。柔らかい舌の感触と、その隠微な水音になぜか腰の辺りがぞくんとするのを美桜は感じた。
「っ……あ……」
「逃げられないんだから、感じろ。気持ちいい方がまだ楽だろう」
耳元に聞こえる声はひどく優しい。
目隠しをされているから、どこに触れられるのか分からなくて、美桜の身体はひどく緊張してしまった。
すると服の隙間から入った手が美桜の肌に触れる。直接肌に指が触れて、美桜はびくっとしてしまった。
目が見えない分、他の感覚が敏感になってしまっているような気がする。
服の隙間から入ってきた手は胸元に辿り着いて、ブラジャーの上からその先端を引っかく。
「んっ……」
美桜の背中がくっと弓なりになってしまった。
柾樹の指はとても的確で、美桜の身体が揺れてしまうような場所にあやまたずに触れるのだ。
「下着の上からでも分かるくらい尖ってるぞ」
「あ……や……」
美桜が胸元を手で覆うと柾樹はその手を頭の上に一つにしてまとめてしまう。
「逆らうなと言っただろ?」
美桜の腕をつかんだまま引っ張って、美桜の部屋に向かう柾樹だ。
ぽんっとベッドの上に放りだされて美桜は柾樹を見上げた。
冷たい表情なのに、眉根を寄せているその顔はひどく苦しそうにも見えた。
ベッドに転がっている美桜の上に柾樹はまたがった。そうして上から美桜を見下ろしている。その整った顔にはどんな表情も見えなかった。
「美桜……」
冷たいのに甘い声。
美桜の上に乗ったまま膝立ちをしている柾樹は先ほどジャケットを脱いだだけの姿だ。
まだベストも着たままだし、ネクタイも外してはいない。
「柾樹さん……」
──どうしてだろう?
どうしていつもうまく伝わらないのだろうか。とても好きなのに。一目惚れをした人で今こんな風にされていてさえ好きな人なのに。
「美桜……」
柾樹の手が伸びてきて、するりと美桜の頬を撫でた。
すり……と美桜はその手に擦り寄る。
柾樹がゆっくりと顔を近づけてきて美桜と軽く唇が触れ合う。
「……っん」
「甘い声だな……」
緩く重なり合う唇。美桜の顎に柾樹の手が添えられて、少し下に引かれる。
その動きで美桜の口元が緩く開いてしまうと柾樹はそこに舌を差し込んできた。軽く舌先が絡み合うだけだったのが、だんだん深くなりお互いに擦り合わせるように夢中になってキスをする。
「っ……は」
まるで頭の芯が痺れて蕩けてしまいそうだ。
「こうやって……颯樹のことも誘惑したのか……?」
その瞬間、まるで目が覚めたかのように美桜はびくっと身体を揺らす。蕩けそうだった気分が一瞬にして醒めた。
柾樹は冷酷な瞳で美桜を見ていたのだ。
「……ちが……います。そんなこと、してません。私は……」
颯樹のことはなんとも思っていない。自分が好きなのは、柾樹なのだと言おうとしているのに、柾樹に唇を塞がれる。
何度も何度も唇を重ねられた。
「まさ……きさん……」
「聞きたくない……」
冷たい表情なのに情熱的なキスで蕩けそうにされて、美桜の身体の力はどんどん抜けていく。その心地よさに逆らえないのだ。
だから、ただただ潤んだ瞳で柾樹を見つめることしかできなかった。
それに気づいた柾樹は着けていたネクタイを首からしゅるっと音をさせて解き、それを美桜の目元に巻いてしまった。
目隠しされてしまった美桜は戸惑うばかりだ。
──見ることも、許されない……。
封じられた目元が熱くなって、目に涙が溢れるのを感じる。そして目元に布地がそれを吸い取っていくのも。
時折、吸いきれない雫が溢れるのを感じた。
「可哀想だな、美桜。泣いても逃げられない……」
そう囁いた柾樹が美桜の耳元にそのまま口付ける。耳元に濡れたようなくちゅっという音が何度も何度も響く。柔らかい舌の感触と、その隠微な水音になぜか腰の辺りがぞくんとするのを美桜は感じた。
「っ……あ……」
「逃げられないんだから、感じろ。気持ちいい方がまだ楽だろう」
耳元に聞こえる声はひどく優しい。
目隠しをされているから、どこに触れられるのか分からなくて、美桜の身体はひどく緊張してしまった。
すると服の隙間から入った手が美桜の肌に触れる。直接肌に指が触れて、美桜はびくっとしてしまった。
目が見えない分、他の感覚が敏感になってしまっているような気がする。
服の隙間から入ってきた手は胸元に辿り着いて、ブラジャーの上からその先端を引っかく。
「んっ……」
美桜の背中がくっと弓なりになってしまった。
柾樹の指はとても的確で、美桜の身体が揺れてしまうような場所にあやまたずに触れるのだ。
「下着の上からでも分かるくらい尖ってるぞ」
「あ……や……」
美桜が胸元を手で覆うと柾樹はその手を頭の上に一つにしてまとめてしまう。
「逆らうなと言っただろ?」
0
お気に入りに追加
556
あなたにおすすめの小説
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
御曹司はまだ恋を知らない
椿蛍
恋愛
家政婦紹介所に登録している桑江夏乃子(くわえかのこ)は高辻財閥の高辻家に派遣されることになった。
派遣された当日、高辻グループの御曹司であり、跡取り息子の高辻恭士(たかつじきょうじ)が婚約者らしき女性とキスをしている現場を目撃するが、その場で別れてしまう。
恭士はその冷たい態度と毒のある性格で婚約者が決まっても別れてしまうらしい。
夏乃子には恭士がそんな冷たい人間には思えず、接しているうちに二人は親しくなるが、心配した高辻の両親は恭士に新しい婚約者を探す。
そして、恭士は告げられる。
『愛がなくても高辻に相応しい人間と結婚しろ』と。
※R-18には『R-18』マークをつけます。
※とばして読むことも可能です。
★私の婚約者には好きな人がいる スピンオフ作品。兄の恭士編です。
冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています
朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。
颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。
結婚してみると超一方的な溺愛が始まり……
「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」
冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。
別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)
黒王子の溺愛は続く
如月 そら
恋愛
晴れて婚約した美桜と柾樹のラブラブ生活とは……?
※こちらの作品は『黒王子の溺愛』の続きとなります。お読みになっていない方は先に『黒王子の溺愛』をお読み頂いた方が、よりお楽しみ頂けるかと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
シングルマザーになったら執着されています。
金柑乃実
恋愛
佐山咲良はアメリカで勉強する日本人。
同じ大学で学ぶ2歳上の先輩、神川拓海に出会い、恋に落ちる。
初めての大好きな人に、芽生えた大切な命。
幸せに浸る彼女の元に現れたのは、神川拓海の母親だった。
彼女の言葉により、咲良は大好きな人のもとを去ることを決意する。
新たに出会う人々と愛娘に支えられ、彼女は成長していく。
しかし彼は、諦めてはいなかった。
極道に大切に飼われた、お姫様
真木
恋愛
珈涼は父の組のため、生粋の極道、月岡に大切に飼われるようにして暮らすことになる。憧れていた月岡に甲斐甲斐しく世話を焼かれるのも、教え込まれるように夜ごと結ばれるのも、珈涼はただ恐ろしくて殻にこもっていく。繊細で怖がりな少女と、愛情の伝え方が下手な極道の、すれ違いラブストーリー。
【R18・完結】蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない〜
花室 芽苳
恋愛
契約結婚しませんか?貴方は確かにそう言ったのに。気付けば貴方の冷たい瞳に炎が宿ってー?ねえ、これは大人の恋なんですか?
どこにいても誰といても冷静沈着。
二階堂 柚瑠木《にかいどう ゆるぎ》は二階堂財閥の御曹司
そんな彼が契約結婚の相手として選んだのは
十条コーポレーションのお嬢様
十条 月菜《じゅうじょう つきな》
真面目で努力家の月菜は、そんな柚瑠木の申し出を受ける。
「契約結婚でも、私は柚瑠木さんの妻として頑張ります!」
「余計な事はしなくていい、貴女はお飾りの妻に過ぎないんですから」
しかし、挫けず頑張る月菜の姿に柚瑠木は徐々に心を動かされて――――?
冷徹御曹司 二階堂 柚瑠木 185㎝ 33歳
努力家妻 十条 月菜 150㎝ 24歳
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる