72 / 109
16.濡れ衣なんだっ!
濡れ衣なんだっ!②
しおりを挟む
「逃げないよ」
指輪を美冬の左手薬指に付ける。
会場は今日イチの盛り上がりを見せた。
ちなみにこの時の写真を手持ちのスマートフォンで撮ったのは一人二人ではなくて、それをSNSにタグ付きで上げたのも、一人二人ではなかった。
そのビルはプロポーズが成功するビルとして話題になるのは後日のことである。
取引先も話題になることで非常に喜んだことも後日の話だ。
そして今はレセプションパーティ会場である。
「素敵! 素敵だわ!」
綾奈も涙を流しながら感動していた。
ちょっと涙もろいのかもしれないが悪気はない人物なのも間違いはなかった。
「本当。あの槙野さんがねー。年貢の納め方も派手だなあ」
国東が感心したような声を上げる。
その声に気付いて綾奈が顔を上げ国東を見た。
「あなたは?」
綾奈が尋ねる。
「僕は株式会社ソイエの代表をしています、国東と言います」
「あら、繊維の会社でなくて?」
「ああ、そうです。よくご存知ですね」
「私の母はエス・ケイ・アールという会社の代表なんです」
「ケイエムさんか!」
さすがに繊維の専門商社を経営しているだけのことはあって、国内のアパレルブランドのことには国東は詳しいのだった。
それを見た槙野が声をかける。
「綾奈さん、そいつも独身ですよ」
「お祖父さんに私を紹介してほしいと言ったくらいだから、フリーかもしれないわね」
美冬は悪気なく付け加える。
「え?」
綾奈の瞳がキラキラと国東の方を見ていた。
国東はゾッとしたような顔になる。
「色々詳しいお話を聞かせてくださる?」
国東は大福に……いや、綾奈に拉致された。悲鳴が尾を引いている。
「成仏しろ国東」
槙野はその姿にそっと両手を合わせた。
「死んではないでしょ」
美冬は国東の姿を見守りながら、さらりと槙野に言う。
会場はもう演し物は終わりか、とばかりに落ち着いた雰囲気を取り戻していた。
片倉が笑って槙野と美冬に近寄ってくる。
「派手だな、槙野」
「こんなつもりじゃなかったのに」
「いや、運営会社の社長は非常に喜んでいらっしゃった。よかったよ。改めておめでとう。おめでとうございます、美冬さん」
片倉の隣で浅緋も嬉しそうな顔をしていた。
「槙野さんには本当にお世話になったもの。お幸せそうで嬉しいわ」
浅緋は両手の指を絡めて、顔の前できゅうっと握っている。先程の告白にいたく感動したようだった。
「うん。幸せだよ」
槙野はそんな浅緋と、浅緋を微笑ましげに見つめている片倉にも、幸せだと胸を張って言えることをとても嬉しく思った。
「ちょっと、美冬に話があるから外す」
槙野は美冬の手を繋いで、二人の前を離れてガーデンの方に移動する。
ガーデンはレストラン階に緑が配置されていて、ビルの中のオアシスだ。
夜はグリーンにライトアップされているのが美しくて良い雰囲気だった。
「予定外のことが起きてしまった」
「すごく恥ずかしかったわ」
「悪かったな」
「でも嬉しかったの」
指輪を美冬の左手薬指に付ける。
会場は今日イチの盛り上がりを見せた。
ちなみにこの時の写真を手持ちのスマートフォンで撮ったのは一人二人ではなくて、それをSNSにタグ付きで上げたのも、一人二人ではなかった。
そのビルはプロポーズが成功するビルとして話題になるのは後日のことである。
取引先も話題になることで非常に喜んだことも後日の話だ。
そして今はレセプションパーティ会場である。
「素敵! 素敵だわ!」
綾奈も涙を流しながら感動していた。
ちょっと涙もろいのかもしれないが悪気はない人物なのも間違いはなかった。
「本当。あの槙野さんがねー。年貢の納め方も派手だなあ」
国東が感心したような声を上げる。
その声に気付いて綾奈が顔を上げ国東を見た。
「あなたは?」
綾奈が尋ねる。
「僕は株式会社ソイエの代表をしています、国東と言います」
「あら、繊維の会社でなくて?」
「ああ、そうです。よくご存知ですね」
「私の母はエス・ケイ・アールという会社の代表なんです」
「ケイエムさんか!」
さすがに繊維の専門商社を経営しているだけのことはあって、国内のアパレルブランドのことには国東は詳しいのだった。
それを見た槙野が声をかける。
「綾奈さん、そいつも独身ですよ」
「お祖父さんに私を紹介してほしいと言ったくらいだから、フリーかもしれないわね」
美冬は悪気なく付け加える。
「え?」
綾奈の瞳がキラキラと国東の方を見ていた。
国東はゾッとしたような顔になる。
「色々詳しいお話を聞かせてくださる?」
国東は大福に……いや、綾奈に拉致された。悲鳴が尾を引いている。
「成仏しろ国東」
槙野はその姿にそっと両手を合わせた。
「死んではないでしょ」
美冬は国東の姿を見守りながら、さらりと槙野に言う。
会場はもう演し物は終わりか、とばかりに落ち着いた雰囲気を取り戻していた。
片倉が笑って槙野と美冬に近寄ってくる。
「派手だな、槙野」
「こんなつもりじゃなかったのに」
「いや、運営会社の社長は非常に喜んでいらっしゃった。よかったよ。改めておめでとう。おめでとうございます、美冬さん」
片倉の隣で浅緋も嬉しそうな顔をしていた。
「槙野さんには本当にお世話になったもの。お幸せそうで嬉しいわ」
浅緋は両手の指を絡めて、顔の前できゅうっと握っている。先程の告白にいたく感動したようだった。
「うん。幸せだよ」
槙野はそんな浅緋と、浅緋を微笑ましげに見つめている片倉にも、幸せだと胸を張って言えることをとても嬉しく思った。
「ちょっと、美冬に話があるから外す」
槙野は美冬の手を繋いで、二人の前を離れてガーデンの方に移動する。
ガーデンはレストラン階に緑が配置されていて、ビルの中のオアシスだ。
夜はグリーンにライトアップされているのが美しくて良い雰囲気だった。
「予定外のことが起きてしまった」
「すごく恥ずかしかったわ」
「悪かったな」
「でも嬉しかったの」
1
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
孕むまでオマエを離さない~孤独な御曹司の執着愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「絶対にキモチイイと言わせてやる」
私に多額の借金を背負わせ、彼氏がいなくなりました!?
ヤバい取り立て屋から告げられた返済期限は一週間後。
少しでもどうにかならないかとキャバクラに体験入店したものの、ナンバーワンキャバ嬢の恨みを買い、騒ぎを起こしてしまいました……。
それだけでも絶望的なのに、私を庇ってきたのは弊社の御曹司で。
副業がバレてクビかと怯えていたら、借金の肩代わりに妊娠を強要されたんですが!?
跡取り身籠もり条件の愛のない関係のはずなのに、御曹司があまあまなのはなぜでしょう……?
坂下花音 さかしたかのん
28歳
不動産会社『マグネイトエステート』一般社員
真面目が服を着て歩いているような子
見た目も真面目そのもの
恋に関しては夢を見がちで、そのせいで男に騙された
×
盛重海星 もりしげかいせい
32歳
不動産会社『マグネイトエステート』開発本部長で御曹司
長男だけどなにやら訳ありであまり跡取りとして望まれていない
人当たりがよくていい人
だけど本当は強引!?
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
お前を誰にも渡さない〜俺様御曹司の独占欲
ラヴ KAZU
恋愛
「ごめんねチビちゃん、ママを許してあなたにパパはいないの」
現在妊娠三ヶ月、一夜の過ちで妊娠してしまった
雨宮 雫(あめみや しずく)四十二歳 独身
「俺の婚約者になってくれ今日からその子は俺の子供な」
私の目の前に現れた彼の突然の申し出
冴木 峻(さえき しゅん)三十歳 独身
突然始まった契約生活、愛の無い婚約者のはずが
彼の独占欲はエスカレートしていく
冴木コーポレーション御曹司の彼には秘密があり
そしてどうしても手に入らないものがあった、それは・・・
雨宮雫はある男性と一夜を共にし、その場を逃げ出した、暫くして妊娠に気づく。
そんなある日雫の前に冴木コーポレーション御曹司、冴木峻が現れ、「俺の婚約者になってくれ、今日からその子は俺の子供な」突然の申し出に困惑する雫。
だが仕事も無い妊婦の雫にとってありがたい申し出に契約婚約者を引き受ける事になった。
愛の無い生活のはずが峻の独占欲はエスカレートしていく。そんな彼には実は秘密があった。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
極上の一夜から始まるCEOの執着愛からは、逃げきれない
季邑 えり
恋愛
旧題:ワンナイトしちゃった極上CEOの執着愛からは、逃げきれません⁉
この度、エタニティ・ブックスにて『極上の一夜から始まるCEOの執着愛からは、逃げきれない』と改題し出版することとなりました。
応援ありがとうございました!
「どうしよう、本当にCEOとエッチしちゃったの?」ニューヨークで出会った哲司(31)と玲奈(25)。
元カレに手ひどく裏切られた玲奈は、失恋の痛みと酔った勢いで黒豹のようにスマートな哲司とワンナイトしてしまう。彼の絶倫ぶりに驚かされた翌朝、玲奈は連絡先も教えず逃げ去ってしまう。
けれど京都の老舗の料亭で、再び出会った哲司は勝堂コーポレーションのCEOだった!しかも――
「え?これってお見合い⁉ 私がCEOの哲司さんと?」
「僕から逃げきれると思ってた?」
世界各地のホテルを取材することになった玲奈とそれを追いかける哲司。
ヨーロッパに中近東と旅する玲奈は、哲司の執着愛から逃げきれるのか⁉
*訪問地:京都、沖縄、ニューヨーク、シンガポール、ロンドン、パリ、ローマ、モナコ、ウィーン、ドバイ、モルディブと世界各国を旅しながらも、恋愛のドキドキ感を楽しむTLです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる