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14.熊に負けた狼
熊に負けた狼④
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美冬の仕事の相談や、ドレスの相談なんてできるわけがない。
書類を片付けた美冬はソファでクマを抱いてしゅん、とする。
──私、なにやってるんだろう。
槙野に触れられてもいい、と思っているのに。
契約だったはずなのに。
頼りがいのある笑顔や、意外と面倒見の良いところとか、仕事がすっごくできるところとか、とてもとても惹かれていた。
そんな槙野に触れられるのも嫌じゃない。
ちょっと意地悪で、容赦のない触れ方で、あの色気たっぷりな雰囲気で迫られるのは悪くはない……のに、押し退けてしまった。
違う、触れられてもいいんじゃない。
触れられたいんだ。
──私、祐輔に触れられたい。
それに気づいたらクマをぎゅううっと抱きしめてしまっていた。
そうして、ふう……とため息をつく。
「寝よ……」
バスルームで念入りに洗って寝室に入った槙野は足を止める。
ベッドの上ですやすやと寝ている美冬はあのいつものクマをぎゅっと抱きしめているのだ。
頼む、頼むから俺に抱きついてくれないか?
そして寝付きが良すぎる!
美冬の腕の中のクマに『お前なにしてんの?』と小馬鹿にされているような気がして、槙野は美冬に背中を向けて布団に潜り込んだ。
ベッドの中がほっこり温かいのさえ、切ない。
「はーっ……」
さすがに深いため息が出た。
なにしてんだろうな……。
ぬいぐるみのクマに負けるとか。
温かい布団とぬくもりを感じるのになんだか、妙に寂しい気持ちになってしまった槙野なのだった。
美冬が朝目を開けた時、槙野にしっかりと後ろから抱きしめられていた上に、胸のところにある腕に美冬もきゅうっと抱きついていた。
そっと身体を動かそうとすると、後ろから槙野にぎゅうっとされて美冬は身動きできなくなる。
自分と違うシャンプーやボディソープの香り。高めの体温も心地好くてほぼ初めての場所だったのにとても良く寝れた。
すう、すうと耳元で規則正しく聞こえる呼吸の音にも何だか安心してしまう。
もに……。ふにふにふに。
後ろから抱きしめられ、美冬の胸元にある手が後ろから美冬の胸を揉んでくる。
──え?わざと?無意識?
最初は美冬が腕の中にいることを確認するかのようだったのに、今度は手の平で、その柔らかい丸みを包み込むようにして揉まれる。
美冬は胸がドキドキしてきた。
「っ……」
漏れそうになる声を美冬は必死で抑える。いたずらな手はつんと尖った先端を指で確認していた。
尖って凝っているのを確認すると指先でつついたり、親指と人差し指がつまんだり軽く捻ったりするのだ。
声は出せない。その呼吸がまだ規則正しくて寝ぼけているような気がするから。
触れられているのは胸のはずなのに、だんだんお腹の方がきゅん、としてきた。美冬は膝を擦り合わせる。
時に強く、時に羽のように柔らかく触れられると胸の先がじんじんしてきて、かすかに触れられるのでさえ感じるようになってきてしまった。
槙野の手がパーカーの前ファスナーを探り当ててそれをそっと少しだけ下げる。
──触られちゃう……っ。
書類を片付けた美冬はソファでクマを抱いてしゅん、とする。
──私、なにやってるんだろう。
槙野に触れられてもいい、と思っているのに。
契約だったはずなのに。
頼りがいのある笑顔や、意外と面倒見の良いところとか、仕事がすっごくできるところとか、とてもとても惹かれていた。
そんな槙野に触れられるのも嫌じゃない。
ちょっと意地悪で、容赦のない触れ方で、あの色気たっぷりな雰囲気で迫られるのは悪くはない……のに、押し退けてしまった。
違う、触れられてもいいんじゃない。
触れられたいんだ。
──私、祐輔に触れられたい。
それに気づいたらクマをぎゅううっと抱きしめてしまっていた。
そうして、ふう……とため息をつく。
「寝よ……」
バスルームで念入りに洗って寝室に入った槙野は足を止める。
ベッドの上ですやすやと寝ている美冬はあのいつものクマをぎゅっと抱きしめているのだ。
頼む、頼むから俺に抱きついてくれないか?
そして寝付きが良すぎる!
美冬の腕の中のクマに『お前なにしてんの?』と小馬鹿にされているような気がして、槙野は美冬に背中を向けて布団に潜り込んだ。
ベッドの中がほっこり温かいのさえ、切ない。
「はーっ……」
さすがに深いため息が出た。
なにしてんだろうな……。
ぬいぐるみのクマに負けるとか。
温かい布団とぬくもりを感じるのになんだか、妙に寂しい気持ちになってしまった槙野なのだった。
美冬が朝目を開けた時、槙野にしっかりと後ろから抱きしめられていた上に、胸のところにある腕に美冬もきゅうっと抱きついていた。
そっと身体を動かそうとすると、後ろから槙野にぎゅうっとされて美冬は身動きできなくなる。
自分と違うシャンプーやボディソープの香り。高めの体温も心地好くてほぼ初めての場所だったのにとても良く寝れた。
すう、すうと耳元で規則正しく聞こえる呼吸の音にも何だか安心してしまう。
もに……。ふにふにふに。
後ろから抱きしめられ、美冬の胸元にある手が後ろから美冬の胸を揉んでくる。
──え?わざと?無意識?
最初は美冬が腕の中にいることを確認するかのようだったのに、今度は手の平で、その柔らかい丸みを包み込むようにして揉まれる。
美冬は胸がドキドキしてきた。
「っ……」
漏れそうになる声を美冬は必死で抑える。いたずらな手はつんと尖った先端を指で確認していた。
尖って凝っているのを確認すると指先でつついたり、親指と人差し指がつまんだり軽く捻ったりするのだ。
声は出せない。その呼吸がまだ規則正しくて寝ぼけているような気がするから。
触れられているのは胸のはずなのに、だんだんお腹の方がきゅん、としてきた。美冬は膝を擦り合わせる。
時に強く、時に羽のように柔らかく触れられると胸の先がじんじんしてきて、かすかに触れられるのでさえ感じるようになってきてしまった。
槙野の手がパーカーの前ファスナーを探り当ててそれをそっと少しだけ下げる。
──触られちゃう……っ。
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