39 / 109
9.助けて食われるっ!
助けて食われるっ!③
しおりを挟む
中途半端にエロいとか言われるくらいなら、脱いでしまった方がいい。
着たままでいることによって、逆にさらに淫靡さを増しただけのようにも思えたのだ。
ずっと触れられて快感だけ引き出されるのはつらい。
どこにも逃せない熱だけが身体の中をぐるぐるしていて、もどかしくて、美冬にはどうしたらいいのか分からないのだ。
「や……」
「ん? やだ?」
「やだ……」
こんな風に快楽を引き出されたことなんてなくて、どうすればいいか分からなくて、美冬は泣けてきてしまった。
「おい、泣くな美冬。ごめん。俺がいじめすぎた」
「煽ってないもん……それになんか思ったよりえっちいし、そんなおっきいのなんて絶対はいんないし、祐輔がいやらしすぎるよー」
「褒めてんのか貶してんのかお前は……」
「褒めてない。貶してもないけど」
「ほら、こっちこい」
それでも槙野にそう言われて腕を広げられたら美冬はその腕の中に入ってしまうのだ。
「そんなに嫌か?」
包み込むように抱擁されるのも、優しく囁かれるのも悪くはない。むしろもたれたくなってしまうくらいなのに。
「嫌じゃないよ。ごめんね慣れなくて。でも……」
「でも?」
こめかみに優しくキスされる。こういう甘やかされるのは好きだ。
「こんな風になったことがないんだもの。自分がおかしくなりそうで怖い」
「おかしくしたいんだよ」
「あとこういうのは好きみたい」
「こういうの?」
「うん。こーやって優しく抱かれて、キスされるのも嫌いじゃないみたい」
こめかみから頬に落ちてきたキスが柔らかく唇に重なる。
何度も槙野はキスして、美冬が緩く口元を開くと、甘く舌が絡んだ。美冬は槙野の身体にきゅっと腕を回してしがみつく。ぎゅっと抱き返されたのが分かった。
──ほら、やっぱり優しいし、安心する。
肩や背中や腰やもしかしたらお尻くらいは触られたかもしれないけれど、それは許容範囲だ。
「美冬……」
「んー?」
「お互いの家への挨拶が終わったら籍入れるからな」
「うん……」
お腹の辺りに先程美冬が手で触れて確認した、槙野の屹立したものがあったけれど、全身で抱かれるようにされて、包み込むその感じが気持ちよくて、美冬は槙野に抱かれたまま眠ってしまったのだった。
自分の腕の中で寝てしまった美冬を見て、槙野は嬉しかったのだけれど、ため息をついた。
ついさっきまで奪うつもりだった。
最後までするつもりだったのだ。
なのに、できなかった。しなかったのだ。
こんなことは今までないことだ。
美冬も感じていたし、あのまま強引にでもできたはずなのだ。
なのに槙野はあえてしなかった。
常日頃の槙野ならありえない事だが、涙を零す美冬を見たら、守らなくては、大事にしなくては、と思ったのだ。
『大事だよ。大事過ぎて触れるのも怖い。嫌われたらどうしようかとそんなことばかり考えてしまって。こんな風に思うことは今までなかったな』
親友の言葉が今になって胸に響く。
あの時はよく分からなかった。好き同士ならなんとかなるのだろうし、さっさと結ばれてしまえばいいのに、と思っていた。
着たままでいることによって、逆にさらに淫靡さを増しただけのようにも思えたのだ。
ずっと触れられて快感だけ引き出されるのはつらい。
どこにも逃せない熱だけが身体の中をぐるぐるしていて、もどかしくて、美冬にはどうしたらいいのか分からないのだ。
「や……」
「ん? やだ?」
「やだ……」
こんな風に快楽を引き出されたことなんてなくて、どうすればいいか分からなくて、美冬は泣けてきてしまった。
「おい、泣くな美冬。ごめん。俺がいじめすぎた」
「煽ってないもん……それになんか思ったよりえっちいし、そんなおっきいのなんて絶対はいんないし、祐輔がいやらしすぎるよー」
「褒めてんのか貶してんのかお前は……」
「褒めてない。貶してもないけど」
「ほら、こっちこい」
それでも槙野にそう言われて腕を広げられたら美冬はその腕の中に入ってしまうのだ。
「そんなに嫌か?」
包み込むように抱擁されるのも、優しく囁かれるのも悪くはない。むしろもたれたくなってしまうくらいなのに。
「嫌じゃないよ。ごめんね慣れなくて。でも……」
「でも?」
こめかみに優しくキスされる。こういう甘やかされるのは好きだ。
「こんな風になったことがないんだもの。自分がおかしくなりそうで怖い」
「おかしくしたいんだよ」
「あとこういうのは好きみたい」
「こういうの?」
「うん。こーやって優しく抱かれて、キスされるのも嫌いじゃないみたい」
こめかみから頬に落ちてきたキスが柔らかく唇に重なる。
何度も槙野はキスして、美冬が緩く口元を開くと、甘く舌が絡んだ。美冬は槙野の身体にきゅっと腕を回してしがみつく。ぎゅっと抱き返されたのが分かった。
──ほら、やっぱり優しいし、安心する。
肩や背中や腰やもしかしたらお尻くらいは触られたかもしれないけれど、それは許容範囲だ。
「美冬……」
「んー?」
「お互いの家への挨拶が終わったら籍入れるからな」
「うん……」
お腹の辺りに先程美冬が手で触れて確認した、槙野の屹立したものがあったけれど、全身で抱かれるようにされて、包み込むその感じが気持ちよくて、美冬は槙野に抱かれたまま眠ってしまったのだった。
自分の腕の中で寝てしまった美冬を見て、槙野は嬉しかったのだけれど、ため息をついた。
ついさっきまで奪うつもりだった。
最後までするつもりだったのだ。
なのに、できなかった。しなかったのだ。
こんなことは今までないことだ。
美冬も感じていたし、あのまま強引にでもできたはずなのだ。
なのに槙野はあえてしなかった。
常日頃の槙野ならありえない事だが、涙を零す美冬を見たら、守らなくては、大事にしなくては、と思ったのだ。
『大事だよ。大事過ぎて触れるのも怖い。嫌われたらどうしようかとそんなことばかり考えてしまって。こんな風に思うことは今までなかったな』
親友の言葉が今になって胸に響く。
あの時はよく分からなかった。好き同士ならなんとかなるのだろうし、さっさと結ばれてしまえばいいのに、と思っていた。
1
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
ポンコツクールビューティーは王子の溺愛に気づかない
来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
友好国であるラングフォード王国の美丈夫で有名な王子ルークの元に嫁いで来た、艶やかな長い黒髪と青い瞳のきらめくような美貌で広く知られるウェブスター王国第三王女のエマ。
お似合いの美男美女と国民に祝福されたが、エマはとある理由から終始緊張を強いられていた。どうしても隠しておきたい秘密があったからだ。
そんな彼女の内面の葛藤に気づかぬルークは、子供の出会った頃のエマとあまりに違う雰囲気に困惑していた……。
長年の片思いと己のイメージを守らねばと必死な恋愛ポンコツクールビューティーの姫と、子供の頃から好意を抱いていた姫の変化に戸惑う王子の、結婚から少しずつお互いの仲を深めていくラブコメ。
【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった
華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。
でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。
辺境伯に行くと、、、、、
白き結婚という条件で新興国の王太子に嫁いだのですが、眠っている間に妊娠させられていました
天草つづみ
恋愛
神託を何よりも重んじるヒラソル帝国の皇女、エステファニア。
彼女にくだった神託は、新興国であるロブレ王国の王太子に嫁げというものだった。
しかし世界一の歴史と力を持つ帝国の皇女の自分が、できたばかりの王家の男に組み敷かれるなど受け入れられない。
そこで彼女は、ロブレ王太子シモンと婚姻こそ結ぶものの、体の関係は持たないという条件を突きつける。
王国はその条件を飲み、二人は結婚した。
エステファニアはシモンに心を開き始めると同時に夜な夜な淫らな夢を見るようになり、男を知らぬ体を疼かせていたのだが――ある日体調を崩したエステファニアは、医師に妊娠していることを告げられる。
高飛車皇女様が、一途だが倫理観がぶっ壊れている王太子に体から堕とされ分からされる(?)お話です。
*R18描写のあるお話には※がつきます。
*R18シーンは濃いめです。
本編完結済み。用意出来次第番外編投稿予定。
私を追い出しても大丈夫だというのなら、どうぞそうなさってください
新野乃花(大舟)
恋愛
ハイデル第二王子と婚約関係にあった、貴族令嬢のメリア。しかしある日、ハイデルは突然にメリアとの婚約を破棄したうえ、新しい婚約者として自身の幼馴染であるアリッサを迎え入れると宣言する。自分がいなくなったら王宮は破滅すると警告を発するメリアだったものの、ハイデルはそんな彼女の言葉に一切耳を貸さず、結局一方的にメリアの事を追い出してしまう。メリアの言葉は負け惜しみに過ぎないと思っていたハイデルだったが、メリアが予言した通りに自分の地位が少しずつ崩壊していく姿を目の当たりにして、彼女の言っていたことは本当だったのだと理解するも、時すでに遅しであり…。
目覚めた公爵令嬢は、悪事を許しません
さち姫
恋愛
公爵の娘として生まれたスティングは、この国の第1王子ガナッシュと幼い時から婚約が決まっていた。
政略結婚でありながらもスティングはガナッシュのことが好きだった。
だが、ガナッシュは乳母の孫であるレインを溺愛していた。
ことある事にガナッシュはレインの肩を持ち、スティングの言う事を全く聞かなかった。
そんな中帝国より留学できている皇子、皇女とスティングは仲良くなる。
ガナッシュ様。私は幾つも、忠告をして参りました。それなのにレインを望まれるのです。
いいんです。もう、疲れました。
私は少し自由に生きてみたいと思います。
前に投稿していた小説です(*^^*)
幸せは、歩いて来ない。ならば、迎えに行きましょう。
緋田鞠
恋愛
【完結】 『もしも、あの時、あの決断をしていなければ』。誰しも一度くらいは、考えた事があるのではないだろうか。
不仲の夫に突き飛ばされ昏倒した事で、実加と言う名で生きた人生を思い出した男爵家の娘ミカエラ。実加もまた、夫にモラハラを受け、不幸な結婚生活を送っていた。疎遠になっていた幼馴染の公爵ダリウスとの再会をきっかけに、実加のように人生を諦めたくない、と決意したミカエラは、離婚、自立への道を歩み始める。「可愛い妹分だから」と、ミカエラを何かと気に掛けるダリウスに対し、募っていく恋心。身分差を理由に距離を置かざるを得なかった彼への想いは、ミカエラを変えていく。
死に役はごめんなので好きにさせてもらいます
橋本彩里(Ayari)
恋愛
フェリシアは幼馴染で婚約者のデュークのことが好きで健気に尽くしてきた。
前世の記憶が蘇り、物語冒頭で死ぬ役目の主人公たちのただの盛り上げ要員であると知ったフェリシアは、死んでたまるかと物語のヒーロー枠であるデュークへの恋心を捨てることを決意する。
愛を返されない、いつか違う人とくっつく予定の婚約者なんてごめんだ。しかも自分は死に役。
フェリシアはデューク中心の生活をやめ、なんなら婚約破棄を目指して自分のために好きなことをしようと決める。
どうせ何をしていても気にしないだろうとデュークと距離を置こうとするが……
まったりいきます。5万~10万文字予定。
お付き合いいただけたら幸いです。
たくさんのいいね、エール、感想、誤字報告をありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる