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鳥は窓辺で歌う
鳥は窓辺で歌う①
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北原が客間の窓から外を見ると、別荘に向かう小路を一人の少女が歩いてくるのが見える。
少女と言っても既に成人はしているのだから女性と表現すべきなのだが、その純粋さや振る舞いはいつもまるで少女のようだから、ついそんな表現になってしまうのだ。
彼女のために朝は入口のドアの鍵は開けてある。
とんとドアが閉まる音がして、階下でカチャカチャと何かしている音。
おそらく食事の準備をしているのだろう。
とたとた……と軽やかに階段を上がってくる音。
コンコンっ!と部屋がノックされて、彼女がひょいっと顔を出す。
「院長先生、おはようございます」
いつもと変わらないその笑顔には、北原でさえ、つられて笑顔になってしまうほどのものなのだ。
最近は秘書の佐々木に『院長、丸くなりましたね』と驚かれるほどだ。
すでに着替えも終えて、部屋でゆっくりしていた北原は、その挨拶を聞いて、
「おはよう」
と返す。
「食事かな?」
「はい! 今日はパンが焼きたてですよ」
ふんわりとした彼女の笑顔に、癒されることは間違いはない。
「焼きたてのパンがこんなに美味しいと思わなかったよ」
一緒に階下に降りる。
「ホントに焼きたてのパンって美味しいですよね。でも、うちのパンはお客様にもとても好評なんですよ」
今日はダイニングには、スクランブルエッグとベーコン、綺麗な彩りのサラダと小さなフランスパンのようなパンがころんと3つほど置かれていた。
「これはブールっていうパンです。フランス語でボールっていう意味なんですって」
「確かに丸いね」
「はい。一見フランスパンのようですけど、中はふんわりもちもちしてて美味しくてオススメです」
そんなことを言いながらも彼女はテキパキとコーヒーを入れ、テーブルを整えてしまう。
「先生はごゆっくりしていて下さいね」
北原が一階で食事をしているうち彼女は二階に上がって、客間を整えてくれるのだ。
ペンションで働いているというだけあって要領は良く、いつも快適だ。
自分が倒れたと聞いても妻は自分のペースを乱さない。
そうしてきたのは自分なのだと分かっているけれど。
北原は息子である圭一郎にはしかるべき妻をと思っていた。
最近までは。
圭一郎がこの別荘に女性を連れ込み帰ってこないと聞くに至って、秘書に方法は問わないから連れ戻せと命じて、結果、圭一郎は一時外に出ることも出来なくなるくらいのダメージを受けた。
我が息子ながら情けないとイライラしたり、このままでは困るという焦りもあったり、複雑ではあったのだ。
そんな少し前から、時折胸の調子が悪いかもしれないとは思ってはいた。
まさか自分が倒れるとは思わなかったから。
幸い開腹手術は必要はないという主治医の判断と、その後の圭一郎の処置で今はゆっくりと安静にしながら静養中だ
その療養中のある日、圭一郎が連れてきたのが、今2階をパタパタと歩き回っている珠月だったのだ。
圭一郎は北原に向かって『俺の大事な人です』と言った。
今までなら、突っぱねていただろうと思う。
少女と言っても既に成人はしているのだから女性と表現すべきなのだが、その純粋さや振る舞いはいつもまるで少女のようだから、ついそんな表現になってしまうのだ。
彼女のために朝は入口のドアの鍵は開けてある。
とんとドアが閉まる音がして、階下でカチャカチャと何かしている音。
おそらく食事の準備をしているのだろう。
とたとた……と軽やかに階段を上がってくる音。
コンコンっ!と部屋がノックされて、彼女がひょいっと顔を出す。
「院長先生、おはようございます」
いつもと変わらないその笑顔には、北原でさえ、つられて笑顔になってしまうほどのものなのだ。
最近は秘書の佐々木に『院長、丸くなりましたね』と驚かれるほどだ。
すでに着替えも終えて、部屋でゆっくりしていた北原は、その挨拶を聞いて、
「おはよう」
と返す。
「食事かな?」
「はい! 今日はパンが焼きたてですよ」
ふんわりとした彼女の笑顔に、癒されることは間違いはない。
「焼きたてのパンがこんなに美味しいと思わなかったよ」
一緒に階下に降りる。
「ホントに焼きたてのパンって美味しいですよね。でも、うちのパンはお客様にもとても好評なんですよ」
今日はダイニングには、スクランブルエッグとベーコン、綺麗な彩りのサラダと小さなフランスパンのようなパンがころんと3つほど置かれていた。
「これはブールっていうパンです。フランス語でボールっていう意味なんですって」
「確かに丸いね」
「はい。一見フランスパンのようですけど、中はふんわりもちもちしてて美味しくてオススメです」
そんなことを言いながらも彼女はテキパキとコーヒーを入れ、テーブルを整えてしまう。
「先生はごゆっくりしていて下さいね」
北原が一階で食事をしているうち彼女は二階に上がって、客間を整えてくれるのだ。
ペンションで働いているというだけあって要領は良く、いつも快適だ。
自分が倒れたと聞いても妻は自分のペースを乱さない。
そうしてきたのは自分なのだと分かっているけれど。
北原は息子である圭一郎にはしかるべき妻をと思っていた。
最近までは。
圭一郎がこの別荘に女性を連れ込み帰ってこないと聞くに至って、秘書に方法は問わないから連れ戻せと命じて、結果、圭一郎は一時外に出ることも出来なくなるくらいのダメージを受けた。
我が息子ながら情けないとイライラしたり、このままでは困るという焦りもあったり、複雑ではあったのだ。
そんな少し前から、時折胸の調子が悪いかもしれないとは思ってはいた。
まさか自分が倒れるとは思わなかったから。
幸い開腹手術は必要はないという主治医の判断と、その後の圭一郎の処置で今はゆっくりと安静にしながら静養中だ
その療養中のある日、圭一郎が連れてきたのが、今2階をパタパタと歩き回っている珠月だったのだ。
圭一郎は北原に向かって『俺の大事な人です』と言った。
今までなら、突っぱねていただろうと思う。
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