上 下
64 / 70
ダメって燃えるの?

ダメって燃えるの?②

しおりを挟む

別に激しく突かれている訳でもないのに、ナカが収縮して、ぞくぞくんっと気持ちよくなる。

「んっ……結衣さん……今のもしかしてイった?持っていかれるかと思いました。ヤバ……僕、動いていいですか?」

待って、と言う声はもちろん聞こえていないし、仮に聞こえていても、今の熱く上擦った声の涼真には、きっと聞いてもらえない。
「は……あっ、すご、結衣さん、ナカ……イッたせいかな。すごく濡れていてぐちゃぐちゃだし柔らかいのに、包み込まれるみたいでダメだ。結衣さん、もっと……もっとしたい」

結衣はシーツを引っかくようにして、ぎゅっと掴む。
涼真がそれに気づいて、上から手を握ってくれた。
容赦なく追い上げても、決して結衣を一人にはしない。
酷くしているようで、本当に嫌なことは絶対しない。

大事に、されている……。
「涼真さん……」
「ん?」

涼真の熱に浮かされたような顔は、決して普段、誰にも見せない顔だ。
結衣に、結衣だけに見せる顔。
「腰が蕩けちゃいそう……です」

一瞬目をみはった涼真は、優しく笑って結衣を仰向けにする。
「可愛いこと言いますね。やっぱり、最後は顔見てしたいかな」

「でも……声、や……」
「僕も結衣さんの声は独り占めしたいから。じゃあ、キスで封じてあげますよ。それなら、いいでしょう?」

結衣の甘い声は全部、涼真に吸い取られて、好きな人とひとつになる幸せを噛み締めつつ、二人は甘くて幸せな時間を過ごしたのだった。


「……はよ」
結衣が洗面所で洗濯の準備をしていると、楓真がふらりと現れた。

「あ! おはようございます。洗濯物、洗濯機の中に入れておいて下さいね。朝食はパンですけど大丈夫ですか?」
「ん……すいません」

頭が鳥の巣のようになって、少しぼうっとしている楓真を見て、結衣がくすくす笑いながら案内する。

「眠れました?」
「あ、まあ……」
寝ぼけたような様子なので、そう尋ねてみたわけなのだが。

「寝れたんだけど、ちょっと……」
ん?
「寝付き……が……」
ふんふん?

「えっと、涼真兄の声が少し聞こえて。ごめんなさい。聞くつもりはなかったんだけど……」
がたっ……と結衣は手に持っていた洗濯用のカゴを落とす。

「大丈夫です。結衣さんの声はほとんど聞こえていないし。ここ、ちゃんと壁は厚いんで。大丈夫です! 結衣さんの声は聞こえていないんで!」

「お前は、朝から何を結衣さんを困らせているんだ?」
結衣が真っ赤になって立ち尽くしているのを見て、涼真が後ろから声を掛け、片手で結衣をきゅっと抱く。

「こちらこそすみません。その……お聞き苦しいものを」
消え入りそうな声で結衣が答える。

「結衣さん、それは僕の声が聞くに耐えないってこと? 僕の声も好きって言ってましたよね」
はう……あー……。

「困らせてんのは涼真兄でしょ。てか、困ってる結衣さん、むっちゃ可愛いね」
「結衣さんは、僕のだ」

「だから分かっているから。もー、褒めただけじゃん。結衣さん、ホントいいの? こんな独占欲強い人で」
兄弟して、朝からなんなのー?

「えっと……とりあえず、ご飯にしませんか?」
ここはひとつ!食べ物で誤魔化すしかない!!



ダイニングに移動した三人は、結衣が準備した朝食を揃って食べる。
「なんなの! もう、激うまなんだけど!」
「残り物ですって……」
朝はパンがあるので、オムレツにしようと昨日のビーフストロガノフのソースを少し残しておいた結衣である。

オムレツにそのソースをかけたものを出したところ、物凄く喜ばれてしまったのだ。

「涼真兄いいなー。可愛くてお料理上手でしかも自分のこと理解してくれるなんて、こんな人なかなかいないよ?」
「分かっている」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法

栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

出会ったのは間違いでした 〜御曹司と始める偽りのエンゲージメント〜

玖羽 望月
恋愛
 親族に代々議員を輩出するような家に生まれ育った鷹柳実乃莉は、意に沿わぬお見合いをさせられる。  なんとか相手から断ってもらおうとイメージチェンジをし待ち合わせのレストランに向かった。  そこで案内された席にいたのは皆上龍だった。  が、それがすでに間違いの始まりだった。 鷹柳 実乃莉【たかやなぎ みのり】22才  何事も控えめにと育てられてきたお嬢様。 皆上 龍【みなかみ りょう】 33才 自分で一から始めた会社の社長。  作中に登場する職業や内容はまったくの想像です。実際とはかけ離れているかと思います。ご了承ください。 初出はエブリスタにて。 2023.4.24〜2023.8.9

副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~

真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

処理中です...