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20.スライディング土下座
スライディング土下座③
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「帰国するときは教えてくれるって言ってたじゃない」
少しむくれて父に言う。
「驚かせようと思ったんだよ」
「驚いたけども……」
一方で鷹條は甘えたり、むくれたりする亜由美を微笑ましい気持ちで見ていた。
やはり親の前ならば素直に甘えられるんだなと感じる。
緩く微笑んだ鷹條はお茶を飲み終わったあと、リビングのソファから立ち上がった。
「せっかくの親子水入らずなんだし、ゆっくり話したいこともあるだろう。今日は俺は失礼するよ」
「なんだか申し訳なかったわ」
両親と亜由美は玄関まで鷹條を見送る。
「本当に申し訳ありませんでした」
玄関を出る時、再度頭を下げる鷹條に父は笑顔を向けた。
「気にしないで。ご両親にもぜひよろしくお伝えください」
「はい。じゃあ、亜由美また」
「うん。気をつけて帰ってね」
玄関を出る時、鷹條はふわりと家族に笑顔を向けた。
「驚きましたけど、お会いできてご挨拶できて嬉しかったです。またこちらにいるうちにゆっくり食事でも行きたいです」
「もちろんそうしよう」
「こちらこそよろしくね」
そして鷹條はドアの向こうに姿を消したのだが、亜由美はその笑顔に胸を射抜かれてしまっていた。
(千智さんの笑顔……レアすぎるし、破壊力がスゴすぎる)
「なかなか好青年だな」
父はそう言って、うんうん頷いていた。横で母も頷いている。
「すごく素敵な方ねぇ、亜由美ちゃん」
「うん」
両親に鷹條を認められるのは素直に嬉しいことだった。
亜由美がお風呂から上がってくると、父はソファで居眠りしていて、母はダイニングで雑誌をめくっていた。
二人が海外に行く前には当たり前だった光景だ。
亜由美は父に軽く声をかける。
「お父さん、ここじゃゆっくりできないからベッドで寝たら?」
「う……ん」
亜由美に声をかけられ、ぼうっとした父がしぶしぶ起き上がってベッドに行くのもいつものことだ。
母は亜由美がマガジンラックに置いていた、結婚情報誌を持ってきて、それを先程から熱心に見ていたようだった。
「ドレス、見てるの?」
亜由美が声をかけると母は雑誌から顔を上げる。
「ええ。可愛いのがたくさんあるのね。もうどんなのにするか決めた?」
「いいえ。まだ」
「今度一緒に見に行く?」
「え? いいの?」
母と一緒にドレスを見に行けるとは思っていなかった亜由美はうれしくて笑顔になる。
「もちろんよ。娘と一緒にドレスを見に行けるなんて幸せだわー。決めてしまわなくても、結婚が決まって一緒に選べるってだけで幸せ」
母のこういう明るいところが亜由美は大好きだ。
「うん。じゃあ、一緒に行こうね。予約しなくちゃ」
「亜由美ちゃんにはどういうのが似合うかしら? やっぱりお姫様に憧れてるの?」
「似合うものの方がいいかなぁって思っているの」
久しぶりの親子の時間はゆっくりと夜更けまで続いたのだった。
亜由美の両親は仕事の関係で三ヶ月ほど日本に滞在することになったらしく、その間に鷹條との両親の顔合わせを済ませたり、式場を決めたりと結婚式の準備を進める。
いろいろと検討した結果、会社近くのチャペルを併設している迎賓館で結婚式と披露宴をすることに決めた。
鷹條の先輩もそこで結婚式を挙げることが多いと聞いたし、その場所は亜由美の会社からも近く、交通の便もいい。
また、ブライダルプランナーの担当者が一顧客一担当と聞いたら、鷹條がここにしようと言ったのだ。
多くは語らなかったけれど、亜由美がプランナーに相談しやすい式場を選んでくれたのだろうと思う。
会社の先輩の中には亜由美が結婚するのだという話を聞いて『男性は結婚式の準備では本当に当てにならないし、それで何度喧嘩したか分からない』と言ってきた人もいたのだが、今のところ結婚式の準備で鷹條と喧嘩をしたことはない。
──亜由美のしたいように。
そう言ってくれていても、必要な時にはプランナーに必要なことを伝えてくれるのは本当に助かった。
少しむくれて父に言う。
「驚かせようと思ったんだよ」
「驚いたけども……」
一方で鷹條は甘えたり、むくれたりする亜由美を微笑ましい気持ちで見ていた。
やはり親の前ならば素直に甘えられるんだなと感じる。
緩く微笑んだ鷹條はお茶を飲み終わったあと、リビングのソファから立ち上がった。
「せっかくの親子水入らずなんだし、ゆっくり話したいこともあるだろう。今日は俺は失礼するよ」
「なんだか申し訳なかったわ」
両親と亜由美は玄関まで鷹條を見送る。
「本当に申し訳ありませんでした」
玄関を出る時、再度頭を下げる鷹條に父は笑顔を向けた。
「気にしないで。ご両親にもぜひよろしくお伝えください」
「はい。じゃあ、亜由美また」
「うん。気をつけて帰ってね」
玄関を出る時、鷹條はふわりと家族に笑顔を向けた。
「驚きましたけど、お会いできてご挨拶できて嬉しかったです。またこちらにいるうちにゆっくり食事でも行きたいです」
「もちろんそうしよう」
「こちらこそよろしくね」
そして鷹條はドアの向こうに姿を消したのだが、亜由美はその笑顔に胸を射抜かれてしまっていた。
(千智さんの笑顔……レアすぎるし、破壊力がスゴすぎる)
「なかなか好青年だな」
父はそう言って、うんうん頷いていた。横で母も頷いている。
「すごく素敵な方ねぇ、亜由美ちゃん」
「うん」
両親に鷹條を認められるのは素直に嬉しいことだった。
亜由美がお風呂から上がってくると、父はソファで居眠りしていて、母はダイニングで雑誌をめくっていた。
二人が海外に行く前には当たり前だった光景だ。
亜由美は父に軽く声をかける。
「お父さん、ここじゃゆっくりできないからベッドで寝たら?」
「う……ん」
亜由美に声をかけられ、ぼうっとした父がしぶしぶ起き上がってベッドに行くのもいつものことだ。
母は亜由美がマガジンラックに置いていた、結婚情報誌を持ってきて、それを先程から熱心に見ていたようだった。
「ドレス、見てるの?」
亜由美が声をかけると母は雑誌から顔を上げる。
「ええ。可愛いのがたくさんあるのね。もうどんなのにするか決めた?」
「いいえ。まだ」
「今度一緒に見に行く?」
「え? いいの?」
母と一緒にドレスを見に行けるとは思っていなかった亜由美はうれしくて笑顔になる。
「もちろんよ。娘と一緒にドレスを見に行けるなんて幸せだわー。決めてしまわなくても、結婚が決まって一緒に選べるってだけで幸せ」
母のこういう明るいところが亜由美は大好きだ。
「うん。じゃあ、一緒に行こうね。予約しなくちゃ」
「亜由美ちゃんにはどういうのが似合うかしら? やっぱりお姫様に憧れてるの?」
「似合うものの方がいいかなぁって思っているの」
久しぶりの親子の時間はゆっくりと夜更けまで続いたのだった。
亜由美の両親は仕事の関係で三ヶ月ほど日本に滞在することになったらしく、その間に鷹條との両親の顔合わせを済ませたり、式場を決めたりと結婚式の準備を進める。
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また、ブライダルプランナーの担当者が一顧客一担当と聞いたら、鷹條がここにしようと言ったのだ。
多くは語らなかったけれど、亜由美がプランナーに相談しやすい式場を選んでくれたのだろうと思う。
会社の先輩の中には亜由美が結婚するのだという話を聞いて『男性は結婚式の準備では本当に当てにならないし、それで何度喧嘩したか分からない』と言ってきた人もいたのだが、今のところ結婚式の準備で鷹條と喧嘩をしたことはない。
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