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14.このままでは済まさない
このままでは済まさない①
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久木に呼ばれて鷹條は小会議室に向かう。いつぞやのように、久木は鷹條の向かいにテーブルを挟んで座った。
「被害届は出してくださったんですね」
「はい。いろいろとありがとうございました」
「まだ、事件は終わったわけではないので油断しないように」
久木に言われて、鷹條は表情を引き締め頷く。
「了解です」
亜由美の件は事件番号を振られて、事件として取り扱っている。
あの後、亜由美の家に帰ったあとに刑事課から連絡があって、亜由美と鷹條はマンションの集合ポストの実況見分に立ち会い、詳細な事情聴取もされている。
その際に、ポストに入っていた郵便物は証拠品として押収された。
むしろ亜由美としては側に置いておきたくなかったようなので、その方が良かったと言っていたが。
「防カメの提出も今依頼しています。集合ポストには必ず設置してありますからね。近いうち、姿を拝めるはずですよ。杉原さんは大丈夫ですか?」
「昨日はかなりショックを受けていました。あと、軽く見ていたことを反省したと言っていました」
ふっと久木から笑い声が漏れる。
「可愛い人ですね」
こくりと鷹條は頷く。
「とても素直で奥ゆかしい人なんです」
「真剣ですね」
「はい。大事な人です」
「そんな鷹條くんだから、官舎以外への帰宅も承認したんですよ。それに君は包み隠さずきちんと報告してくれている。それが一番大事なことです」
久木が自分を信頼してくれて外泊について承認してくれていることは十分に分かっている。
鷹條は今日から亜由美の家に外泊することになっていた。
情報を管理する観点から警察官の同棲は基本的に認められてはいない。そんな中で連続した外泊を許可するというのはある意味超法規的な措置でもあった。
「聞き取りをしてくださったのが広見警部だったのも良かったかもしれません」
「そうですねぇ……とても穏やかな方でなおかつ真面目です。本当に警察組織を今後どうしていくべきか真剣に考えている方です」
久木は硬い顔をして腕を組んだ。
「彼はキャリアなのでいずれ本庁に帰る。その時に現場のことを知っておいてほしいんです」
亜由美の件を所轄署で対応してくれた広見は、キャリアと呼ばれる国家公務員試験に合格して入庁している幹部候補生だったのだ。
「鷹條くんだからお話しますけど、広見さんは妹さんがストーカー被害に遭われたことがあるそうです」
「だからストーカー被害について詳しかったんですね」
「ええ。警察は被害届を受け入れて捜査も開始した。けど妹さんは若かったこともあって、被害にあっていたことが学校でも広まってしまい、あらぬ誹謗中傷にも晒されたようです」
犯罪被害者が誹謗中傷に晒されるなど、本来はあってはいけないことなのだが、昨今のSNSの普及などもあり、自分に向けられた情報を全て遮断することは難しいのが現状なのだ。
もはやそれは二次被害なのではないかと鷹條も思う。
「若いゆえ、周りに助けを求めることもできなかったんでしょうね。学校を辞めてしまって、一時期は自宅から外出することもできなかったとか。その後、広見さんは警察官僚を目指したそうですから」
「だからなんですね……」
「だから?」
「とても寄り添った対応だったんです。そういう方が幹部を目指すのはとても心強い」
「強くて、素晴らしい人ですよ。彼が所轄署にいる時に届けを出せたのはある意味運が良かった。これは内部情報なのでもちろん口外厳禁です」
「はい」
鷹條の返事を聞いて、久木は表情を引き締める。それだけではないようだ。
「鷹條くん、二通目の手紙の中身は見ましたか?」
「はい」
「被害届は出してくださったんですね」
「はい。いろいろとありがとうございました」
「まだ、事件は終わったわけではないので油断しないように」
久木に言われて、鷹條は表情を引き締め頷く。
「了解です」
亜由美の件は事件番号を振られて、事件として取り扱っている。
あの後、亜由美の家に帰ったあとに刑事課から連絡があって、亜由美と鷹條はマンションの集合ポストの実況見分に立ち会い、詳細な事情聴取もされている。
その際に、ポストに入っていた郵便物は証拠品として押収された。
むしろ亜由美としては側に置いておきたくなかったようなので、その方が良かったと言っていたが。
「防カメの提出も今依頼しています。集合ポストには必ず設置してありますからね。近いうち、姿を拝めるはずですよ。杉原さんは大丈夫ですか?」
「昨日はかなりショックを受けていました。あと、軽く見ていたことを反省したと言っていました」
ふっと久木から笑い声が漏れる。
「可愛い人ですね」
こくりと鷹條は頷く。
「とても素直で奥ゆかしい人なんです」
「真剣ですね」
「はい。大事な人です」
「そんな鷹條くんだから、官舎以外への帰宅も承認したんですよ。それに君は包み隠さずきちんと報告してくれている。それが一番大事なことです」
久木が自分を信頼してくれて外泊について承認してくれていることは十分に分かっている。
鷹條は今日から亜由美の家に外泊することになっていた。
情報を管理する観点から警察官の同棲は基本的に認められてはいない。そんな中で連続した外泊を許可するというのはある意味超法規的な措置でもあった。
「聞き取りをしてくださったのが広見警部だったのも良かったかもしれません」
「そうですねぇ……とても穏やかな方でなおかつ真面目です。本当に警察組織を今後どうしていくべきか真剣に考えている方です」
久木は硬い顔をして腕を組んだ。
「彼はキャリアなのでいずれ本庁に帰る。その時に現場のことを知っておいてほしいんです」
亜由美の件を所轄署で対応してくれた広見は、キャリアと呼ばれる国家公務員試験に合格して入庁している幹部候補生だったのだ。
「鷹條くんだからお話しますけど、広見さんは妹さんがストーカー被害に遭われたことがあるそうです」
「だからストーカー被害について詳しかったんですね」
「ええ。警察は被害届を受け入れて捜査も開始した。けど妹さんは若かったこともあって、被害にあっていたことが学校でも広まってしまい、あらぬ誹謗中傷にも晒されたようです」
犯罪被害者が誹謗中傷に晒されるなど、本来はあってはいけないことなのだが、昨今のSNSの普及などもあり、自分に向けられた情報を全て遮断することは難しいのが現状なのだ。
もはやそれは二次被害なのではないかと鷹條も思う。
「若いゆえ、周りに助けを求めることもできなかったんでしょうね。学校を辞めてしまって、一時期は自宅から外出することもできなかったとか。その後、広見さんは警察官僚を目指したそうですから」
「だからなんですね……」
「だから?」
「とても寄り添った対応だったんです。そういう方が幹部を目指すのはとても心強い」
「強くて、素晴らしい人ですよ。彼が所轄署にいる時に届けを出せたのはある意味運が良かった。これは内部情報なのでもちろん口外厳禁です」
「はい」
鷹條の返事を聞いて、久木は表情を引き締める。それだけではないようだ。
「鷹條くん、二通目の手紙の中身は見ましたか?」
「はい」
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