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10.恋愛っていいものですね
恋愛っていいものですね③
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そんな思いやりも、大事にされていることもとても嬉しいので、亜由美は心配をかけないためにもこまめに連絡をするようにしていた。
自宅に帰ってきたことと、今日はコミックスの新刊を入手したので読むのが楽しみだと鷹條にメールを送っておく。
そしてソファに座って楽しみにしていたコミックスを開いた。
前巻はいいところで終わってしまっていたから続きがとても気になっていたのだ。
両片想いだったのが、もしかして? とお互いの想いに気づいたところで終わっていた。わくわくしながら亜由美はページを開く。
なんとなくお互いの気持ちに気づきながらも伝えることができず、素直になれないヒロインとヒロインをどこまでも溺愛したいヒーローにきゅんきゅんしながら読み終わった。
今回も結ばれることはなかったけれど、じれじれする展開も嫌いではない。
幸せな気持ちでベッドに入り、お行儀悪いとは分かっているけれど、寝転がったままもう一度コミックスに手を伸ばす。そして、眠った。
朝、スマートフォンを確認すると、鷹條からのメッセージが入っている。
『昨日は楽しんだ? すごく楽しみにしていた様子が伝わってきていたから、楽しめたらいいなと思ったよ』
返信の時間は亜由美がすっかり眠ってしまっている真夜中だった。
警護の仕事というのは対象者に側でピッタリ張り付くだけのものではないのだそうだ。
あらかじめ決められている行先予定の場所をチェックしたり、事前の打ち合わせや事後のミーティングなどもかなり重要なことらしい。
もともと鷹條からは一旦警護の業務に入るとかなり忙しいとは聞いていたので、こうやって隙間の時間にも連絡をくれること自体が本当に亜由美への気づかいだと分かる。
この日帰ってきた亜由美はいつものように、ポストの中に入っていた手紙類をダイニングテーブルの上に置いた。
パラっと広がったその中の封筒が妙に気になる。
なんでもない封筒なのにやけに存在感があるのだ。なぜだろうか?
亜由美は気になったその封筒を手に取った。気になった理由が分かる。住所が記載されていないのだ。そして宛名だけが印刷されている。
『杉原 亜由美様』
不審に思いつつも封筒にはさみを入れた。中から出てきたのは亜由美の写真だ。コンビニで買い物をしているものや、先日書店で本を買った時のものもあった。
──イタズラ……?
封筒の住所の記載がないということは差出人がポストへ直接投函したものだということだ。
そのことに気づいて亜由美は少し怖くなる。
一体誰が?
心当たりが全くない。
気持ち悪いことも確かだ。けれど、どうしたらいいのかも分からない。過剰に反応するものどうかという気がして、写真を封筒に戻し一瞬捨てようかと少し迷ったけれど、請求書などと一緒にまとめておいた。
「少し、遅くなっちゃったわね?」
隣の席の奥村に話しかけられて、パソコン画面に集中していた亜由美は手を止め時計を確認する。
「あ……そうですね」
気づいたら定時を過ぎていた。
「杉原さん、今日はあの素敵な彼と待ち合わせとかしてない?」
「今、出張中なんです」
「あら、じゃあ一緒に食事でもどう?」
「いいんですか? ぜひ、お願いします!」
ランチで一緒に食事に行くことはあっても、業務の終了後に声を掛けられることはあまりない。
自宅に帰ってきたことと、今日はコミックスの新刊を入手したので読むのが楽しみだと鷹條にメールを送っておく。
そしてソファに座って楽しみにしていたコミックスを開いた。
前巻はいいところで終わってしまっていたから続きがとても気になっていたのだ。
両片想いだったのが、もしかして? とお互いの想いに気づいたところで終わっていた。わくわくしながら亜由美はページを開く。
なんとなくお互いの気持ちに気づきながらも伝えることができず、素直になれないヒロインとヒロインをどこまでも溺愛したいヒーローにきゅんきゅんしながら読み終わった。
今回も結ばれることはなかったけれど、じれじれする展開も嫌いではない。
幸せな気持ちでベッドに入り、お行儀悪いとは分かっているけれど、寝転がったままもう一度コミックスに手を伸ばす。そして、眠った。
朝、スマートフォンを確認すると、鷹條からのメッセージが入っている。
『昨日は楽しんだ? すごく楽しみにしていた様子が伝わってきていたから、楽しめたらいいなと思ったよ』
返信の時間は亜由美がすっかり眠ってしまっている真夜中だった。
警護の仕事というのは対象者に側でピッタリ張り付くだけのものではないのだそうだ。
あらかじめ決められている行先予定の場所をチェックしたり、事前の打ち合わせや事後のミーティングなどもかなり重要なことらしい。
もともと鷹條からは一旦警護の業務に入るとかなり忙しいとは聞いていたので、こうやって隙間の時間にも連絡をくれること自体が本当に亜由美への気づかいだと分かる。
この日帰ってきた亜由美はいつものように、ポストの中に入っていた手紙類をダイニングテーブルの上に置いた。
パラっと広がったその中の封筒が妙に気になる。
なんでもない封筒なのにやけに存在感があるのだ。なぜだろうか?
亜由美は気になったその封筒を手に取った。気になった理由が分かる。住所が記載されていないのだ。そして宛名だけが印刷されている。
『杉原 亜由美様』
不審に思いつつも封筒にはさみを入れた。中から出てきたのは亜由美の写真だ。コンビニで買い物をしているものや、先日書店で本を買った時のものもあった。
──イタズラ……?
封筒の住所の記載がないということは差出人がポストへ直接投函したものだということだ。
そのことに気づいて亜由美は少し怖くなる。
一体誰が?
心当たりが全くない。
気持ち悪いことも確かだ。けれど、どうしたらいいのかも分からない。過剰に反応するものどうかという気がして、写真を封筒に戻し一瞬捨てようかと少し迷ったけれど、請求書などと一緒にまとめておいた。
「少し、遅くなっちゃったわね?」
隣の席の奥村に話しかけられて、パソコン画面に集中していた亜由美は手を止め時計を確認する。
「あ……そうですね」
気づいたら定時を過ぎていた。
「杉原さん、今日はあの素敵な彼と待ち合わせとかしてない?」
「今、出張中なんです」
「あら、じゃあ一緒に食事でもどう?」
「いいんですか? ぜひ、お願いします!」
ランチで一緒に食事に行くことはあっても、業務の終了後に声を掛けられることはあまりない。
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