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6.好きな子は大事にする
好きな子は大事にする④
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「大きな企業の会社員さんのようですね。問題なさそうだ。綺麗な人でしたね」
最後の一言は完全に久木の個人的な感想であることは、笑みを含んだ表情で鷹條を見ていることからも、察しがついた。
「だから心配なんですよ。それでいて自分の魅力には気づいていない人なのでなおさらです」
「なるほど。鷹條くんとでは美男美女で非常にお似合いそうですが」
「どこがです? 美女と野獣みたいなものでしょう」
自分の魅力に気づいていないのは、鷹條も同じなのだった。
◇◇◇
午後からの仕事はスムーズに終わって、スーパーで買い物をし、家に帰るとそれを見計らったようにスマートフォンが着信を知らせる。
連絡先を交換した鷹條からだった。
亜由美は嬉しくて、胸がほわっと温かくなる。
「はい」
通話に出た声が少し浮かれてしまっても大目に見てほしい。
『今、仕事中じゃない?』
「今日は定時に終わって、今、お家です」
『無事に帰ったか? 転倒したり、どこかで絡まれたりしなかったか?』
どういう心配の仕方なんだろう? と思うがすべて鷹條に助けられた時の状況だから、それには強く返せない亜由美でもある。
「ちゃんと無事でした」
『そうか。良かった』
からかった訳ではなくて、本当に心配していたらしい。
「一条さんのことも、今後はイレギュラーがあれば課長で対応してくださることになったんです」
あの時の状況がきっかけだったので、これ以上心配させてもいけないしと亜由美は報告する。
『それは良かった。杉原さんの会社はすごくしっかりしている。それに、普段の杉原さんの様子をみんなも見てくれているんだろうな』
穏やかな電話の向こうの声を聞いて、亜由美はとても嬉しい気持ちになり、見守ってくれる人のいる安心感に満たされていた。
「鷹條さん……」
『ん?』
「心配して下さって、ありがとう」
『いや。うん。杉原さんは心配だよ。でもそんな風に言ってもらえると……嬉しいもんだな。彼女、って感じする』
とても真っすぐな鷹條の言葉は、いつも亜由美の心をぎゅっと掴んでしまう。
だから素直に亜由美も返せるのだ。
「私も嬉しい……。心配してもらえるのって幸せですね」
はーっと深いため息が電話の向こうから聞こえてきた。
『くっそ、なんで電話なんだか。抱き締めたい。すごくぎゅうっとしたいよ』
甘やかに伝えられる言葉がくすぐったい。
こんなことを言っていても、きっと冷静なはずの鷹條の顔を想像すると亜由美は笑えてきてしまった。
『こら、笑うなよ』
「だって……ふふっ」
『今度の休み、どこか行かないか?』
「行きたいです!」
『勤務体制は独特なんだけど、今週末は非番なんだ。遠出はできないから近場で』
「あ、それなら……」
亜由美は水族館やプラネタリウムも併設している商業施設の名前をあげる。
『行ったことない。行ってみたいとは思ってたけど』
「じゃあ、そこにしましょう」
『分かった。時間とかはまた後で連絡する。無事に帰ったかを確認したかったから』
じゃあ、ゆっくり休めよ、と電話を切られて亜由美は急に顔が熱くなってしまった。
優しいとは思っていたけれど、心配して電話を掛けてくれるとは思わなかった。
メールでも済ませられるかもしれないことを、わざわざ電話してくれたのが嬉しかった。
とても大事にされている。
それは心がとても温かくなって、こんなに幸せな気持ちになるものだったのだと亜由美は知った。
最後の一言は完全に久木の個人的な感想であることは、笑みを含んだ表情で鷹條を見ていることからも、察しがついた。
「だから心配なんですよ。それでいて自分の魅力には気づいていない人なのでなおさらです」
「なるほど。鷹條くんとでは美男美女で非常にお似合いそうですが」
「どこがです? 美女と野獣みたいなものでしょう」
自分の魅力に気づいていないのは、鷹條も同じなのだった。
◇◇◇
午後からの仕事はスムーズに終わって、スーパーで買い物をし、家に帰るとそれを見計らったようにスマートフォンが着信を知らせる。
連絡先を交換した鷹條からだった。
亜由美は嬉しくて、胸がほわっと温かくなる。
「はい」
通話に出た声が少し浮かれてしまっても大目に見てほしい。
『今、仕事中じゃない?』
「今日は定時に終わって、今、お家です」
『無事に帰ったか? 転倒したり、どこかで絡まれたりしなかったか?』
どういう心配の仕方なんだろう? と思うがすべて鷹條に助けられた時の状況だから、それには強く返せない亜由美でもある。
「ちゃんと無事でした」
『そうか。良かった』
からかった訳ではなくて、本当に心配していたらしい。
「一条さんのことも、今後はイレギュラーがあれば課長で対応してくださることになったんです」
あの時の状況がきっかけだったので、これ以上心配させてもいけないしと亜由美は報告する。
『それは良かった。杉原さんの会社はすごくしっかりしている。それに、普段の杉原さんの様子をみんなも見てくれているんだろうな』
穏やかな電話の向こうの声を聞いて、亜由美はとても嬉しい気持ちになり、見守ってくれる人のいる安心感に満たされていた。
「鷹條さん……」
『ん?』
「心配して下さって、ありがとう」
『いや。うん。杉原さんは心配だよ。でもそんな風に言ってもらえると……嬉しいもんだな。彼女、って感じする』
とても真っすぐな鷹條の言葉は、いつも亜由美の心をぎゅっと掴んでしまう。
だから素直に亜由美も返せるのだ。
「私も嬉しい……。心配してもらえるのって幸せですね」
はーっと深いため息が電話の向こうから聞こえてきた。
『くっそ、なんで電話なんだか。抱き締めたい。すごくぎゅうっとしたいよ』
甘やかに伝えられる言葉がくすぐったい。
こんなことを言っていても、きっと冷静なはずの鷹條の顔を想像すると亜由美は笑えてきてしまった。
『こら、笑うなよ』
「だって……ふふっ」
『今度の休み、どこか行かないか?』
「行きたいです!」
『勤務体制は独特なんだけど、今週末は非番なんだ。遠出はできないから近場で』
「あ、それなら……」
亜由美は水族館やプラネタリウムも併設している商業施設の名前をあげる。
『行ったことない。行ってみたいとは思ってたけど』
「じゃあ、そこにしましょう」
『分かった。時間とかはまた後で連絡する。無事に帰ったかを確認したかったから』
じゃあ、ゆっくり休めよ、と電話を切られて亜由美は急に顔が熱くなってしまった。
優しいとは思っていたけれど、心配して電話を掛けてくれるとは思わなかった。
メールでも済ませられるかもしれないことを、わざわざ電話してくれたのが嬉しかった。
とても大事にされている。
それは心がとても温かくなって、こんなに幸せな気持ちになるものだったのだと亜由美は知った。
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