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2.男運悪すぎ問題
男運悪すぎ問題②
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「ちょっと!」
お店の人を呼ぶ横柄な態度に亜由美の方が驚く。
ひとしきり文句を言って、お店の人が「申し訳ございませんでした」と頭を下げているのに「二人で食べるのに取り皿を持ってこないとかあり得ない」とか「あれほど待たせてこの程度のサービスしかできないなんて、店として終わってる」とか散々聞かされた。
そこでさすがにあれ? と思ったのだ。
──この人、ちょっとモラハラっぽくない?
テーブルに来たパンケーキの写真も撮っていたし食べているときは笑顔だったし、亜由美は気持ちを落ち着かせる。
けれど、その後一緒に食事へ行った帰りにホテルへ誘われたのを断った時には
「俺が誘ってんのに断るってどういうこと? もったいつけるほどのものかよ?」
と言ったのだ。
あまりのことに亜由美は呆然とする。
初めての彼氏でよく分からなかったということもあったけれど、さすがにこれはないかも……と思い始めていた矢先のことだった。
「別に亜由美だけってわけでもないし。終わりにしよう」
そう言った彼に亜由美はにっこりと笑った。
「そうね」
亜由美の即答に「はあ!?」となっていたが引き留めるとでも思っていたのだろうか。
よくよく考えてみたら、最初に出逢った時から『すごく飲みそう』とかは亜由美の外見で判断していたのだと思うし、『女の子はみんな好きだよね』という発言も女性を一括りにしているからの発言とも考えられる。
それに加えて『亜由美だけではない』という言葉もだ。
なんとなく察してはいた。色んなことに違和感はあったけど、目を瞑っていた。
確かに恋愛に夢見てたけれど、こんなふうに現実を突きつけることはないんじゃないか。
神様はいじわるだ。
家に帰ったらなんだか無性に悲しくなって泣けてきてしまった。
確かに見る目がなかったと言われればそれまでだけれど、こんな目に合わなくてもよかったんじゃないのかと思えて涙が我慢できなかったのだ。
その日はわんわん泣いた。
やけ酒できないところが下戸のつらいところだ。
(ついてない……)
自分への誹謗中傷を目の当たりにするというショックを引きずりつつ、亜由美はビルの窓から外を見る。
駅からワンブロック歩いたところにある姫宮商事は、高層ビルを自社ビルとしている準大手の総合商社である。
そのリフレッシュルームに向かう大きな窓を備えたビルの廊下からは、駅周辺のビル群が綺麗に見えてなかなかの景観なのだった。
亜由美は窓の外に目をやる。窓から見える景色は綺麗なのに亜由美の心は晴れない。
──融通効かないってダメなことなの?
そうでなくても『亜由美は大人だから』『しっかりしているから』
その言葉だけで片付けられてしまうことは今までもたくさんあった。
今回もそのうちの一回に過ぎない。だから大丈夫。
そう言い聞かせながら飲み物は買わず、席に戻った亜由美だった。
「あれ? 杉原さん飲み物を買いに行ったんじゃなかったの?」
手ぶらで帰ってきた亜由美に奥村が首を傾げる。その可愛らしさを見て亜由美はため息が出そうだった。
「私、融通利かないからダメなんでしょうか?」
お店の人を呼ぶ横柄な態度に亜由美の方が驚く。
ひとしきり文句を言って、お店の人が「申し訳ございませんでした」と頭を下げているのに「二人で食べるのに取り皿を持ってこないとかあり得ない」とか「あれほど待たせてこの程度のサービスしかできないなんて、店として終わってる」とか散々聞かされた。
そこでさすがにあれ? と思ったのだ。
──この人、ちょっとモラハラっぽくない?
テーブルに来たパンケーキの写真も撮っていたし食べているときは笑顔だったし、亜由美は気持ちを落ち着かせる。
けれど、その後一緒に食事へ行った帰りにホテルへ誘われたのを断った時には
「俺が誘ってんのに断るってどういうこと? もったいつけるほどのものかよ?」
と言ったのだ。
あまりのことに亜由美は呆然とする。
初めての彼氏でよく分からなかったということもあったけれど、さすがにこれはないかも……と思い始めていた矢先のことだった。
「別に亜由美だけってわけでもないし。終わりにしよう」
そう言った彼に亜由美はにっこりと笑った。
「そうね」
亜由美の即答に「はあ!?」となっていたが引き留めるとでも思っていたのだろうか。
よくよく考えてみたら、最初に出逢った時から『すごく飲みそう』とかは亜由美の外見で判断していたのだと思うし、『女の子はみんな好きだよね』という発言も女性を一括りにしているからの発言とも考えられる。
それに加えて『亜由美だけではない』という言葉もだ。
なんとなく察してはいた。色んなことに違和感はあったけど、目を瞑っていた。
確かに恋愛に夢見てたけれど、こんなふうに現実を突きつけることはないんじゃないか。
神様はいじわるだ。
家に帰ったらなんだか無性に悲しくなって泣けてきてしまった。
確かに見る目がなかったと言われればそれまでだけれど、こんな目に合わなくてもよかったんじゃないのかと思えて涙が我慢できなかったのだ。
その日はわんわん泣いた。
やけ酒できないところが下戸のつらいところだ。
(ついてない……)
自分への誹謗中傷を目の当たりにするというショックを引きずりつつ、亜由美はビルの窓から外を見る。
駅からワンブロック歩いたところにある姫宮商事は、高層ビルを自社ビルとしている準大手の総合商社である。
そのリフレッシュルームに向かう大きな窓を備えたビルの廊下からは、駅周辺のビル群が綺麗に見えてなかなかの景観なのだった。
亜由美は窓の外に目をやる。窓から見える景色は綺麗なのに亜由美の心は晴れない。
──融通効かないってダメなことなの?
そうでなくても『亜由美は大人だから』『しっかりしているから』
その言葉だけで片付けられてしまうことは今までもたくさんあった。
今回もそのうちの一回に過ぎない。だから大丈夫。
そう言い聞かせながら飲み物は買わず、席に戻った亜由美だった。
「あれ? 杉原さん飲み物を買いに行ったんじゃなかったの?」
手ぶらで帰ってきた亜由美に奥村が首を傾げる。その可愛らしさを見て亜由美はため息が出そうだった。
「私、融通利かないからダメなんでしょうか?」
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