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15.プレゼントの意味
プレゼントの意味①
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浅緋は出社してくるとまず、社長である槙野宛ての文書の振り分けから始める。
社外社内問わず、会社の代表あてには一日で様々な文書が届く。
槙野に言われているのは、親展以外は全部開封して至急と対応要と不要に分けて欲しいということだ。
文書の振り分けの後はメールのチェックをする。
メールも同じくで、その振り分けだけでもかなりの時間がかかってしまうのだ。
ほとんどをパソコンからのメールで対応する槙野だが、ごく稀に、文書で返信することもあって、その際に宛先を書くのは浅緋の仕事だ。
子供の頃から毛筆を習っていた浅緋の字はとても綺麗だと好評らしい。
そんな風に仕事を進めていたら、社内がザワザワしだしたのを感じた。
──どうしたのかしら?
ふと、顔を上げた時、会社の入口に槙野や他の役員を伴って現れた片倉の姿を見つけて、浅緋は動けなくなってしまった。
え⁉︎慎也さん?
どうして?
朝、一緒に食事した時は何も言っていなかったはずだ。
片倉は槙野から何か説明を受けているのかうんうん、と頷いている。
他の役員も時折発言している様子なのが見てとれた。
とてもスマートなスーツ姿と真剣な表情、片倉が槙野に向かって何か言うと、役員が必死で頷いて中にはメモをとっている人もいた。
すごい……と浅緋は見とれてしまう。
あんな風に誰にも物怖じせず、指導力を発揮しているのが浅緋の婚約者なのだ。
浅緋はいつまでも見とれてしまいそうな片倉の姿から目を離して、手元の仕事を進めていく。
「浅緋、大丈夫? 槙野にいじめられてない?」
笑いを含んだ声で声をかけられて、浅緋はびくん、としてしまった。
先程までの厳しい顔とは違う、いつもの片倉だ。
おい!だれがいじめて……とか言う槙野を片倉は全く無視して、「いじめられたらいつでも言うんだよ」と笑っている。
つい、浅緋もくすりと笑ってしまった。
「慎也さん、槙野さんはいじめたりしませんよ?」
先ほどまでの緊迫した雰囲気はどこに行ったのかというくらい、2人の間に流れる空気は柔らかい。
社内の人たちは槙野も含め、浅緋と片倉が一緒にいるところは見たことがなかったのだ。
浅緋の事を愛おし気に見つめる片倉と、片倉の事を心から信頼している浅緋が片倉を見つめるその雰囲気は、誰も邪魔できないようなものだった。
スマートな片倉と清楚な浅緋は見ていてうっとりするようなカップルなのだ。
それまで、政略結婚では⁉︎という噂があったなど、この片倉の訪問でどこかに行ってしまっただろう。
それくらいに2人の雰囲気はお似合いで甘い。
片倉は浅緋に笑顔を向ける。
「何かあったらいつでも言ってくださいね」
浅緋はにっこり笑った。
「はい」
周りの同僚も浅緋が無防備な笑顔を向けるところなどあまり見たことがなくて、元々綺麗だとは思っていたけれど、あんな表情をするんだ、と浅緋の表情を見た人は驚いている。
「片倉CEO? みんな仕事に集中できなくなるんだが?」
槙野がそう声をかけると、片倉は出口の方に顔を向けた。
「ああ、悪い。じゃあ、浅緋、後でね」
それでも、浅緋に一言声をかけることは忘れない。
社外社内問わず、会社の代表あてには一日で様々な文書が届く。
槙野に言われているのは、親展以外は全部開封して至急と対応要と不要に分けて欲しいということだ。
文書の振り分けの後はメールのチェックをする。
メールも同じくで、その振り分けだけでもかなりの時間がかかってしまうのだ。
ほとんどをパソコンからのメールで対応する槙野だが、ごく稀に、文書で返信することもあって、その際に宛先を書くのは浅緋の仕事だ。
子供の頃から毛筆を習っていた浅緋の字はとても綺麗だと好評らしい。
そんな風に仕事を進めていたら、社内がザワザワしだしたのを感じた。
──どうしたのかしら?
ふと、顔を上げた時、会社の入口に槙野や他の役員を伴って現れた片倉の姿を見つけて、浅緋は動けなくなってしまった。
え⁉︎慎也さん?
どうして?
朝、一緒に食事した時は何も言っていなかったはずだ。
片倉は槙野から何か説明を受けているのかうんうん、と頷いている。
他の役員も時折発言している様子なのが見てとれた。
とてもスマートなスーツ姿と真剣な表情、片倉が槙野に向かって何か言うと、役員が必死で頷いて中にはメモをとっている人もいた。
すごい……と浅緋は見とれてしまう。
あんな風に誰にも物怖じせず、指導力を発揮しているのが浅緋の婚約者なのだ。
浅緋はいつまでも見とれてしまいそうな片倉の姿から目を離して、手元の仕事を進めていく。
「浅緋、大丈夫? 槙野にいじめられてない?」
笑いを含んだ声で声をかけられて、浅緋はびくん、としてしまった。
先程までの厳しい顔とは違う、いつもの片倉だ。
おい!だれがいじめて……とか言う槙野を片倉は全く無視して、「いじめられたらいつでも言うんだよ」と笑っている。
つい、浅緋もくすりと笑ってしまった。
「慎也さん、槙野さんはいじめたりしませんよ?」
先ほどまでの緊迫した雰囲気はどこに行ったのかというくらい、2人の間に流れる空気は柔らかい。
社内の人たちは槙野も含め、浅緋と片倉が一緒にいるところは見たことがなかったのだ。
浅緋の事を愛おし気に見つめる片倉と、片倉の事を心から信頼している浅緋が片倉を見つめるその雰囲気は、誰も邪魔できないようなものだった。
スマートな片倉と清楚な浅緋は見ていてうっとりするようなカップルなのだ。
それまで、政略結婚では⁉︎という噂があったなど、この片倉の訪問でどこかに行ってしまっただろう。
それくらいに2人の雰囲気はお似合いで甘い。
片倉は浅緋に笑顔を向ける。
「何かあったらいつでも言ってくださいね」
浅緋はにっこり笑った。
「はい」
周りの同僚も浅緋が無防備な笑顔を向けるところなどあまり見たことがなくて、元々綺麗だとは思っていたけれど、あんな表情をするんだ、と浅緋の表情を見た人は驚いている。
「片倉CEO? みんな仕事に集中できなくなるんだが?」
槙野がそう声をかけると、片倉は出口の方に顔を向けた。
「ああ、悪い。じゃあ、浅緋、後でね」
それでも、浅緋に一言声をかけることは忘れない。
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