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14.時期と判断
時期と判断④
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「はいっ!」
「浅緋からのキスが欲しいな」
──心臓が止まるかとおもいました……。
「キスして? 浅緋」
片倉はそう言って眼鏡を外してベッドサイドの小物入れに置いた。
そして、浅緋の手を握る。
逃げ出したいような、けどそんなことは許されないような。
浅緋は顔を上げて片倉を見た。
目が合うとにこっと笑ってくれる。
それが慎也さんの欲しいもの。
浅緋はきゅっと目をつぶって、その綺麗な形の唇に自分の唇を付ける。
……少し外れたかもしれない。
「ありがとう。浅緋」
とても下手くそなキスだったのに片倉は優しく浅緋を抱きしめてくれて、お礼を言ってくれて、とても嬉しそうな顔をしていた。
「上手くなくて、ごめんなさい」
「どうしてごめんなさい? 君からくれたものは何でも嬉しいよ。そうだな。もし気にしているのなら、練習しようか?」
「れ……練習?」
「そう。練習」
そうにっこり笑って、片倉は浅緋の頬に手を触れる。
先ほど止まりそうだった浅緋の心臓は、今度はそんなに主張するのかと言うくらいにうるさい音を立てている。
「浅緋、僕の目を見て?」
じ……っと浅緋は片倉の目を見つめる。
──綺麗な茶色……優しそうな瞳。大好きだわ……。
「口元を見て?」
今度は言われたままに片倉の口元を見る。
薄めの綺麗な形の口の端がきゅっと上がったのが分かった。
片倉がご機嫌な証拠だ。
(あ……)
吸い寄せられるように浅緋はその唇に自分のを重ねた。今度は上手くいった気がする。
ふっと笑った片倉は浅緋の手を取り自分の頬に触れさせる。
「気持ちいいですよ。浅緋」
気持ち……いいの……?
初めて手で触れた片倉の頬は見た目通り滑らかで、けれど、女性である浅緋のものとは全然違う。
そんな風に思った浅緋の表情を読んだのか、片倉は浅緋ににこりと笑った。
「気持ちいいよ。こうやって、触れてくれるのも。浅緋も僕とのキスを気持ちいいって思ってくれたら嬉しい」
浅緋が触れている片倉の頬の手はそのままに、片倉は今度は浅緋の顔に、自分の手で触れて顔を近づけた。
唇がそっと重なる。
浅緋には気持ちいいというよりも、ドキドキしてしまう。
唇を何度も重ねながら、片倉の手が耳元に触れた。
それにピクンと身体が揺れてしまって、せっかく息ができるようになってきたのに、途端に呼吸の乱れる浅緋だ。
そのまま首に触れた手は浅緋の首の後ろをきゅっと抱いた。その後は知っている。
片倉の舌が浅緋のものと絡み合う深いキスになるのだ。
緩く口の中で絡み合わされると、身体の力が抜けそうになる。
ふにゃっと力なく、浅緋は片倉にもたれた。
「気持ちいい?」
耳元でそっと囁かれる。
──気持ちいい?
力が入らなくて呼吸が乱れてしまって、胸が苦しくなってなんだか身体の中心がきゅんってするような、自分で自分の身体が支えられないような、これが気持ちいいってこと?
浅緋は片倉にぎゅっとしがみつく。
「分かりません。でも、もっとしたい……です」
「ん、いい子」
もう一度唇が重なるけれど今度は最初から、片倉に唇を甘く舐められる。
そうされるとつい、緩く浅緋の唇が開いてしまって、また舌を絡められた。
「浅緋、舌出して」
とても恥ずかしいけれど、そっと舌を差し出す。
するとそれを音がするくらいに吸われた。
痛くはないけれど、ちゅ……と濡れたような音が何度も寝室に響くのが、浅緋には恥ずかしい。
この日は何だか浅緋がとろとろになるまで片倉は何度も何度もキスを繰り返したのだ。
──これって、練習?だったのかしら……?
「浅緋からのキスが欲しいな」
──心臓が止まるかとおもいました……。
「キスして? 浅緋」
片倉はそう言って眼鏡を外してベッドサイドの小物入れに置いた。
そして、浅緋の手を握る。
逃げ出したいような、けどそんなことは許されないような。
浅緋は顔を上げて片倉を見た。
目が合うとにこっと笑ってくれる。
それが慎也さんの欲しいもの。
浅緋はきゅっと目をつぶって、その綺麗な形の唇に自分の唇を付ける。
……少し外れたかもしれない。
「ありがとう。浅緋」
とても下手くそなキスだったのに片倉は優しく浅緋を抱きしめてくれて、お礼を言ってくれて、とても嬉しそうな顔をしていた。
「上手くなくて、ごめんなさい」
「どうしてごめんなさい? 君からくれたものは何でも嬉しいよ。そうだな。もし気にしているのなら、練習しようか?」
「れ……練習?」
「そう。練習」
そうにっこり笑って、片倉は浅緋の頬に手を触れる。
先ほど止まりそうだった浅緋の心臓は、今度はそんなに主張するのかと言うくらいにうるさい音を立てている。
「浅緋、僕の目を見て?」
じ……っと浅緋は片倉の目を見つめる。
──綺麗な茶色……優しそうな瞳。大好きだわ……。
「口元を見て?」
今度は言われたままに片倉の口元を見る。
薄めの綺麗な形の口の端がきゅっと上がったのが分かった。
片倉がご機嫌な証拠だ。
(あ……)
吸い寄せられるように浅緋はその唇に自分のを重ねた。今度は上手くいった気がする。
ふっと笑った片倉は浅緋の手を取り自分の頬に触れさせる。
「気持ちいいですよ。浅緋」
気持ち……いいの……?
初めて手で触れた片倉の頬は見た目通り滑らかで、けれど、女性である浅緋のものとは全然違う。
そんな風に思った浅緋の表情を読んだのか、片倉は浅緋ににこりと笑った。
「気持ちいいよ。こうやって、触れてくれるのも。浅緋も僕とのキスを気持ちいいって思ってくれたら嬉しい」
浅緋が触れている片倉の頬の手はそのままに、片倉は今度は浅緋の顔に、自分の手で触れて顔を近づけた。
唇がそっと重なる。
浅緋には気持ちいいというよりも、ドキドキしてしまう。
唇を何度も重ねながら、片倉の手が耳元に触れた。
それにピクンと身体が揺れてしまって、せっかく息ができるようになってきたのに、途端に呼吸の乱れる浅緋だ。
そのまま首に触れた手は浅緋の首の後ろをきゅっと抱いた。その後は知っている。
片倉の舌が浅緋のものと絡み合う深いキスになるのだ。
緩く口の中で絡み合わされると、身体の力が抜けそうになる。
ふにゃっと力なく、浅緋は片倉にもたれた。
「気持ちいい?」
耳元でそっと囁かれる。
──気持ちいい?
力が入らなくて呼吸が乱れてしまって、胸が苦しくなってなんだか身体の中心がきゅんってするような、自分で自分の身体が支えられないような、これが気持ちいいってこと?
浅緋は片倉にぎゅっとしがみつく。
「分かりません。でも、もっとしたい……です」
「ん、いい子」
もう一度唇が重なるけれど今度は最初から、片倉に唇を甘く舐められる。
そうされるとつい、緩く浅緋の唇が開いてしまって、また舌を絡められた。
「浅緋、舌出して」
とても恥ずかしいけれど、そっと舌を差し出す。
するとそれを音がするくらいに吸われた。
痛くはないけれど、ちゅ……と濡れたような音が何度も寝室に響くのが、浅緋には恥ずかしい。
この日は何だか浅緋がとろとろになるまで片倉は何度も何度もキスを繰り返したのだ。
──これって、練習?だったのかしら……?
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