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14.時期と判断
時期と判断②
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「ゆるふわが片倉を嫌うことなんてないと思うがな……」
「ん?」
「別に時期を外したってわけじゃないだろ。まだ、ゆるふわの心の準備が出来るまでお前が待ってるってことだろ。あいつはそういうの、慣れてなさそうだしそれでいいんじゃないのか?」
片倉の先々まで考えることは良い事だと思うが、逆に考え過ぎてしまうこともある。槙野は直感的に判断する事が多いのだ。
そんな槙野の判断を、片倉も当てにしていることは確かなのである。
「そうだな。今まで僕はこういうことで失敗がないから、お前に聞くのが間違いないんじゃないかと思ったんだが、お前に話してやはり正解だな」
「まるで俺が失敗だらけのような言い草だな」
「そんな風には……」
そこで笑顔で言葉をとめる片倉だ。
「そこで言葉を止めるな! 感じ悪いぞ!」
はあ……とため息をついた槙野はいつにない片倉の様子に、親友の相談に乗ってやることにした。
「聞くけどな、ゆるふわはお前が触れるのもダメなのか?」
槙野に聞かれて片倉は少し考える。
確かに、赤くなってしまったりはするけれど、本気で嫌がられたことはない。
「それは、ないな」
これから、夫婦になるのなら、膝の上に乗せるのは当然だといったら、こくん、と頷いて素直に乗っていたし。
近くで見る浅緋の可愛らしさはまた格別だった。
「じゃあ、あとは時期次第だろ。前に会社の奴と食事に行っていたときは、触れられるのもダメって感じだったぞ」
「触れられるのも?」
「指輪みせてくださいー、とかって覗き込まれただけで、身体ごと避けていたからな」
──そいつ、どこか飛ばすか……。
「言っておくが、そいつ自身は優秀な営業社員なんだからな、どこか飛ばそうとかするなよ」
槙野は片倉の考えを先読みしてそんな警告をする。
片倉は首を傾げた。
「ダメなのか?」
「ダメに決まっているだろうが!!」
すかさず槙野は突っ込みを入れた。
真っ直ぐな目をするな!
どうして? とかいう表情をするな!
浅緋を溺愛しすぎて、こいつ厄介過ぎる!!
しかもこんなに溺愛している相手と寝室が一緒なのに何もないだと?
どんな心頭を滅却しているんだ、こいつ!?
そんな槙野に決裁を迫られ、微妙な目で見られながら書類を渡した片倉は、帰り支度を始める。
そうして、帰り道の車の中だ。
──あんな目で見なくてもいいだろうに。
槙野のことである。
見た事のない生き物を見るような目で見られた。
小声で「よく我慢できるな……」と言ったのも聞こえていた。
もちろん浅緋とのことは焦ってはいないけれども、意識をしてほしい気持ちはある。
片倉自身正直に言えば、可能ならば今すぐでも抱きたい。
あの白い肌に指を滑らせて、触れて味わって、甘い声を聞きたいと思う。
焦ってはいない。大事にしたい。今すぐ抱きたい。
相反するすべての気持ちが正直なところだ。
そして嫌じゃない。怖い、けれど大事に思ってる、という浅緋の気持ちも理解している。
もう、2人の間に障壁はないと思っていたが、お互いが大事な気持ちが障壁になるなんて、片倉は思っていなかった。
片倉は綺麗なラインの口元に指をあてて考える。
園村の浅緋に対する言葉が蘇ってきたから。
『積極的ではないけれども、落ち着いて物事をしっかり見ることのできる子だと思う。思慮深い子なんだ』
その思慮深さで自分の気持ちを理解してほしいと思った片倉は、タブレット端末の操作を始めた。
「到着しました」
渡辺の声に片倉は自分が集中していたことを知った。
「ありがとう」
お礼を言って車を降りた片倉は、マンションのエントランスに向かう。
今日も0時を過ぎての帰宅で、浅緋はすでに休んでいる。
「ん?」
「別に時期を外したってわけじゃないだろ。まだ、ゆるふわの心の準備が出来るまでお前が待ってるってことだろ。あいつはそういうの、慣れてなさそうだしそれでいいんじゃないのか?」
片倉の先々まで考えることは良い事だと思うが、逆に考え過ぎてしまうこともある。槙野は直感的に判断する事が多いのだ。
そんな槙野の判断を、片倉も当てにしていることは確かなのである。
「そうだな。今まで僕はこういうことで失敗がないから、お前に聞くのが間違いないんじゃないかと思ったんだが、お前に話してやはり正解だな」
「まるで俺が失敗だらけのような言い草だな」
「そんな風には……」
そこで笑顔で言葉をとめる片倉だ。
「そこで言葉を止めるな! 感じ悪いぞ!」
はあ……とため息をついた槙野はいつにない片倉の様子に、親友の相談に乗ってやることにした。
「聞くけどな、ゆるふわはお前が触れるのもダメなのか?」
槙野に聞かれて片倉は少し考える。
確かに、赤くなってしまったりはするけれど、本気で嫌がられたことはない。
「それは、ないな」
これから、夫婦になるのなら、膝の上に乗せるのは当然だといったら、こくん、と頷いて素直に乗っていたし。
近くで見る浅緋の可愛らしさはまた格別だった。
「じゃあ、あとは時期次第だろ。前に会社の奴と食事に行っていたときは、触れられるのもダメって感じだったぞ」
「触れられるのも?」
「指輪みせてくださいー、とかって覗き込まれただけで、身体ごと避けていたからな」
──そいつ、どこか飛ばすか……。
「言っておくが、そいつ自身は優秀な営業社員なんだからな、どこか飛ばそうとかするなよ」
槙野は片倉の考えを先読みしてそんな警告をする。
片倉は首を傾げた。
「ダメなのか?」
「ダメに決まっているだろうが!!」
すかさず槙野は突っ込みを入れた。
真っ直ぐな目をするな!
どうして? とかいう表情をするな!
浅緋を溺愛しすぎて、こいつ厄介過ぎる!!
しかもこんなに溺愛している相手と寝室が一緒なのに何もないだと?
どんな心頭を滅却しているんだ、こいつ!?
そんな槙野に決裁を迫られ、微妙な目で見られながら書類を渡した片倉は、帰り支度を始める。
そうして、帰り道の車の中だ。
──あんな目で見なくてもいいだろうに。
槙野のことである。
見た事のない生き物を見るような目で見られた。
小声で「よく我慢できるな……」と言ったのも聞こえていた。
もちろん浅緋とのことは焦ってはいないけれども、意識をしてほしい気持ちはある。
片倉自身正直に言えば、可能ならば今すぐでも抱きたい。
あの白い肌に指を滑らせて、触れて味わって、甘い声を聞きたいと思う。
焦ってはいない。大事にしたい。今すぐ抱きたい。
相反するすべての気持ちが正直なところだ。
そして嫌じゃない。怖い、けれど大事に思ってる、という浅緋の気持ちも理解している。
もう、2人の間に障壁はないと思っていたが、お互いが大事な気持ちが障壁になるなんて、片倉は思っていなかった。
片倉は綺麗なラインの口元に指をあてて考える。
園村の浅緋に対する言葉が蘇ってきたから。
『積極的ではないけれども、落ち着いて物事をしっかり見ることのできる子だと思う。思慮深い子なんだ』
その思慮深さで自分の気持ちを理解してほしいと思った片倉は、タブレット端末の操作を始めた。
「到着しました」
渡辺の声に片倉は自分が集中していたことを知った。
「ありがとう」
お礼を言って車を降りた片倉は、マンションのエントランスに向かう。
今日も0時を過ぎての帰宅で、浅緋はすでに休んでいる。
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