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13.ふたりの休日

ふたりの休日④

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「どなたかといらっしゃるなんて初めてですね」
「うん。彼女がこちらのパンをとても好きなので連れて来てあげたくて」
 そう言って片倉は浅緋に微笑む。

 片倉の甘やかな雰囲気と浅緋の柔らかい雰囲気に、店主はとてもお似合いの2人だと思った。
「ありがとうございます。ゆっくりしていってくださいね」

 どうぞと案内された店内は椅子もテーブルも木製で、全体にウッディでとても落ち着いた可愛らしい雰囲気の店だ。

「おすすめはサラダトーストです」
「サラダトースト?」

 片倉がメニューを開いて見せてくれたそれは、サラダトーストというかサラダだ。
 そこにトーストが散らしてある、というメニューに浅緋は笑ってしまう。

「すごい! でも美味しそうです!」
「美味しいですよ。でも、浅緋さんが食べてみたいものがあったら好きなのを頼んでくださいね。ここのはなんでも美味しいので」

「私、これがいいです」
「飲み物は?」

 こんな風に昼間に外で片倉と食事をすることが初めてで、浅緋はとても楽しい。

 お店はおしゃれで、店員さんも感じよく、食事も美味しい。
 そして、エスコートしてくれる婚約者は完璧で、とても幸せな気分なのだ。

 また片倉もとても幸せな気分だった。

 「美味しい!」と食事をする婚約者はとても可愛いし、こんな風に片倉に笑顔を向けてくれることを本当に望んでいたのだから。

 食事を済ませた2人は、今度は本屋へと向かった。
 浅緋について回っては気を使うだろうと、片倉は店に入ったら、お互い見たいものを見て、あとで合流しましょうと提案したのだ。

 「それでいいんですか?」と浅緋は気にしていたけれど「その方がゆっくりできるでしょう?」と聞くと安心したように、笑顔になる。

 浅緋が足取り軽く文庫のコーナーに向かっていったのを見て、片倉も経済誌関連の棚に向かった。

 それでも、目では浅緋を見守っていたけれど。
 浅緋は平積みの本をじっくりと見て回りながら、棚をチェックしている。

 時折、本を手に取って、中をじっくり見ているその横顔が本当に綺麗だ。
 ふ……と嬉しそうな顔になったり、あ!と驚いた顔をしたりしていた。

 それは本当によく見ていないと分からないけれど、片倉としては浅緋のそんないろんな表情が見れることが嬉しいのだ。

 時折盗み見ながら、片倉は自分も見たい本を確認していった。

「シンボリック・エクス……難しそうな本です」

 つい夢中になってしまっていたところを浅緋に声をかけられる。

「浅緋! ごめん、あ、ゆっくり見られた?」
「はい。慎也さんは?」
「うん。ご覧の通り。普段書籍は電子にしてしまうことが多いんだけれど、紙もいいものだね」

「持てる分だけ、と思うと買うのにもとても慎重になってしまうんです」
「確かにね。電子ならタップひとつでどんどん購入できてしまうからな。良し悪しだね」

 片倉は浅緋が手に持っていた文庫を受け取り、自分も今読んでいた1冊を手にして、レジに向かった。

「え? 私自分で買います」
「一緒にいるときくらいは買わせて」
 本当にこういうところが好きだ。

 当然のように財布も出さない女性も多い中、浅緋は片倉に出させるなど考えてはいなかっただろうと思う。

「あと……は雑貨だっけ?」
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