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13.ふたりの休日

ふたりの休日①

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「桜華会?」
「はい。毎年準備は今の時期にするんです」

 それは園村家のあの広い庭を解放して行う、大規模な『お花見』のようなものなのだと言う。
 桜の時期に園村が気のおけない友人を招いて、飲食をする会だった。
 浅緋はそのように片倉に説明したのだ。

 園村家の庭には、あの一番大きな桜の木の他にも小振りな桜がたくさん植えてある。
 もちろん桜だけではない庭は、季節ごとに目を楽しませてくれると聞いたことはあるけれど。

「今まで父が主催していたので、今年はやめようかと話していたんです」
「どんな方がみえるの?」

「そうですね、主に父の友人です。今年はやらないのか? とお問合せいただいて、どうしましょうかって母と言っているのですけれど」

「やるなら手伝うよ」
「そうですねぇ……」

 悩まし気に首を傾げる浅緋の頬を、片倉が指で撫でる。

 その浅緋がいるのは片倉の膝の上なのだ。

 先日、改めてお互いの想いを伝えあった2人は改めて婚約することを2人で決めた。
 表向きには何も変わらないけれど、2人の中ではそれは大きな進歩だ。

 そして、先日からは夜も一緒のベッドで寝ている。

 すやすやと自分の横で眠る浅緋を見ているのは、幸せでありながらも片倉は自分の大きな何かを犠牲にしているような気がする。

 もちろん、いつかは大人の夜を過ごすつもりではあるが、浅緋を守ると宣言した以上、自分が浅緋を怖がらせるわけにはいかないと、いまだ片倉は様子を見ているのだ。

 けれど少しずつ、自分にも接触にも慣れてほしいというのは本心だ。

 浅緋は先日のプロポーズがとても嬉しかった。
 今度は父のこととは関係なく、2人で決めた2人の意志だと確認できたから。

 もう政略結婚と他人に言われても気にならないし、気にしないと決めている。
 本当のことを2人だけは分かっているから。

 けれど……今朝一緒に休日を過ごすことになり、食事を終え片づけをした後、相談をしたいと言った浅緋を片倉がさっさと膝の上に浅緋を乗せてしまったのは一体どういうことなのだろうか?

『あの……この状態でお話するんでしょうか?』
 そう尋ねた浅緋に
『夫婦になるんですから当然ですね』
と片倉に真っ直ぐな目で返されたのだが、そんなことあるのだろうか。

 少なくとも浅緋の家ではそんな光景を見たことはないと思うのだが。

 けれど片倉の真っ直ぐな目に嘘はないと思うし、浅緋も嫌という訳ではないので、素直に膝の上で相談を始めたのだ。

「何を迷っているのかな?」
『桜華会』の件だった。

「父を亡くしたばかりでいいのかなって」
「偲ぶ会的なものにするというのもありだと思うよ」

 父は経営に関することは正式に遺言で残してくれているが、このような個人的な会については触れていなかったのだ。

「もちろん思い切って止めるという選択肢もある」
「でも、皆さん楽しみにしていらっしゃって……」

「迷うね」
 片倉はふん……といって顎に手を当てて、思案するような表情だ。そんな顔も素敵だわ、と浅緋はつい見とれてしまう。

 そうして、浅緋がこそっと動こうとすると、片倉にきゅっと抱きなおされてしまうのだ。

「どこに行くの?」
「あ……いえ、重いかなって」

「重くはないし、この距離感が幸せなんだよ。普段は夜は堪能できないんだ。今日は浅緋を堪能させてほしい」
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