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11.桜の木の下で
桜の木の下で⑤
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本当に初めての事なので、考えた事を浅緋は一生懸命に片倉に伝えた。
「一体、いつから……?」
「いつからって……」
浅緋は思い返してみる。
きっと最初からだ。
父のお葬式の日に玄関に立っているのを見た時から、きっと気持ちを持っていかれていた。
「最初からです。雪の中であなたが玄関に立っているのを見たときからです……」
「浅緋さん!」
「きゃ……」
片倉は浅緋をふわりと抱き上げる。
「確かにおっしゃる通りです。すみません。僕はあなたにお詫びしなくてはいけない」
急に抱き上げられたので視界が高くて、浅緋は片倉の首元に慌ててつかまる。
片倉の整った顔が近くて、浅緋はドキドキしてしまう。しかも、その表情は見たことないくらいに嬉しそうなのだ。
お詫びしなくてはいけないと言っているけれど、とても嬉しそうだし、降ろしてくれる気配がないのはどういうことなのだろうか?
抱き上げられたその腕の中で浅緋はとても困っていた。
困る……困るのに嬉しい。
浅緋を抱き上げる片倉の腕はとても力強くて、そんな片倉に鼓動が大きくなってしまうから。
「あなたの言う通りです。僕が姑息なことをしたから、自分の首を絞めることになったんですね。僕もあなたを好ましく思っていました。あなたが僕の事を知るよりもずっと前からです」
「それ……どこがお詫びなんですか?」
本当にどこがお詫びなのか分からない。
それよりもむしろ、熱烈な告白のように感じるのだが、どうしたらいいのだろうか。
それに、浅緋は片倉の浅緋に対する気持ちは父の遺書のせいで、義理なのだろうと思っていたのだ。
政略結婚と周りに何度も言われたこともある。
──好ましく? 好ましくって、好きってこと?
しかも、浅緋が片倉のことを知る前からなど、意味が分からない。
今分かっているのは、端正な片倉の顔が近くて、嬉しそうで、そして抱き上げている浅緋を下ろしてくれる気配がない、ということだ。
「あなたに告白の先手を取られてしまうなんて、情けないんですよ。もう、あなたの前では僕は失敗ばかりだ」
綺麗な顔で、眉が下がって少しだけ苦笑している。
そんな姿すら素敵なのに。
情けない?失敗?片倉にそんなところがあるなんて、浅緋には考えられなかった。
「失敗? どの辺が? 慎也さんにそんなところはありませんよ」
「全く、あなたはどこまで僕を夢中にさせたら気が済むんですか?」
やっと、片倉は浅緋を地面にとん、と降ろす。
「お詫びします。とても卑怯でした」
そうして、片倉は浅緋の両手を自分の手で包む。
きゅっと大きな片倉の手で自分の手を包み込まれて、覗き込まれるその表情もとても真剣で、浅緋はドキンとしてしまった。
「園村さんに浅緋さんのお話を聞いて、写真を見せていただいていました。あなたはこの桜の木の下で笑っていた」
そうして片倉は桜の木に目線を向ける。
「その時、園村さんはあなたを大事だから信頼できるものに託したい、と言ったんです」
写真を見ていたから、浅緋と出会う前から好ましく思っていた、ということだったんだ、と初めて知った。
確かに父は、浅緋のことをいろいろと話しているなあとは思ったけれど。
「一体、いつから……?」
「いつからって……」
浅緋は思い返してみる。
きっと最初からだ。
父のお葬式の日に玄関に立っているのを見た時から、きっと気持ちを持っていかれていた。
「最初からです。雪の中であなたが玄関に立っているのを見たときからです……」
「浅緋さん!」
「きゃ……」
片倉は浅緋をふわりと抱き上げる。
「確かにおっしゃる通りです。すみません。僕はあなたにお詫びしなくてはいけない」
急に抱き上げられたので視界が高くて、浅緋は片倉の首元に慌ててつかまる。
片倉の整った顔が近くて、浅緋はドキドキしてしまう。しかも、その表情は見たことないくらいに嬉しそうなのだ。
お詫びしなくてはいけないと言っているけれど、とても嬉しそうだし、降ろしてくれる気配がないのはどういうことなのだろうか?
抱き上げられたその腕の中で浅緋はとても困っていた。
困る……困るのに嬉しい。
浅緋を抱き上げる片倉の腕はとても力強くて、そんな片倉に鼓動が大きくなってしまうから。
「あなたの言う通りです。僕が姑息なことをしたから、自分の首を絞めることになったんですね。僕もあなたを好ましく思っていました。あなたが僕の事を知るよりもずっと前からです」
「それ……どこがお詫びなんですか?」
本当にどこがお詫びなのか分からない。
それよりもむしろ、熱烈な告白のように感じるのだが、どうしたらいいのだろうか。
それに、浅緋は片倉の浅緋に対する気持ちは父の遺書のせいで、義理なのだろうと思っていたのだ。
政略結婚と周りに何度も言われたこともある。
──好ましく? 好ましくって、好きってこと?
しかも、浅緋が片倉のことを知る前からなど、意味が分からない。
今分かっているのは、端正な片倉の顔が近くて、嬉しそうで、そして抱き上げている浅緋を下ろしてくれる気配がない、ということだ。
「あなたに告白の先手を取られてしまうなんて、情けないんですよ。もう、あなたの前では僕は失敗ばかりだ」
綺麗な顔で、眉が下がって少しだけ苦笑している。
そんな姿すら素敵なのに。
情けない?失敗?片倉にそんなところがあるなんて、浅緋には考えられなかった。
「失敗? どの辺が? 慎也さんにそんなところはありませんよ」
「全く、あなたはどこまで僕を夢中にさせたら気が済むんですか?」
やっと、片倉は浅緋を地面にとん、と降ろす。
「お詫びします。とても卑怯でした」
そうして、片倉は浅緋の両手を自分の手で包む。
きゅっと大きな片倉の手で自分の手を包み込まれて、覗き込まれるその表情もとても真剣で、浅緋はドキンとしてしまった。
「園村さんに浅緋さんのお話を聞いて、写真を見せていただいていました。あなたはこの桜の木の下で笑っていた」
そうして片倉は桜の木に目線を向ける。
「その時、園村さんはあなたを大事だから信頼できるものに託したい、と言ったんです」
写真を見ていたから、浅緋と出会う前から好ましく思っていた、ということだったんだ、と初めて知った。
確かに父は、浅緋のことをいろいろと話しているなあとは思ったけれど。
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