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1.あなたのそういうところが嫌いです
あなたのそういうところが嫌いです②
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支払い額も大きかったので、当然、調査会社に確認を依頼はしていた。
上司が気にしたのは、契約から短い期間での事故。
契約からわずか3ヶ月の間の事故である。
翠咲としては、そんなこともあるのかなあ……不幸なことだな、くらいにしか思っていなかったそれ。
その上司の知る、火災鑑定専門の調査会社に確認を依頼したところ、なんと契約者自身の放火だったことが発覚したのだ。
自分の上申が通っていたら、危うく会社に損害を与えてしまうところだった。その上に、放火という犯罪を見逃すところでもあった。
本当に温和で、仏とも呼ばれていた上司だったが、お陰で翠咲は救われたどころか、仏と翠咲は社長表彰の対象になったのである。
翠咲は固辞したが、一担当者が固辞したからといって、何とかなるものでもなく、なんだか立派な会で、立派な表彰状と盾をもらい副主任の肩書きを貰って、今の部署に転勤になったのだ。
仏も昇進したと聞いている。
ちなみに名前は仏ではない。
それでも火新の仏っぽい人というと、あー!あの人!と分かってもらえるということは、あながち外れてはいないはずだ。
そして傷害という全く違う分野への異動は、気持ちの切り替えをするにしても有難い異動だった。
畑違いの分野で仕事をすること数年、先日主任に昇進し現在に至るわけなのだ。
今問題になっている案件は、過剰な契約によって、支払いが高額になりそうな案件なのである。
疑義案件であり、できれば支払いはしたくないのが翠咲の本音なのだが、謝絶しても問題ないのか弁護士に相談するように、と上席からの指示があった。
『保険金を払いません』と言うと、どんなことが起こるか……。
まず、了承してくれる人はいない。
ましてや、今回のケースは最初から高額で契約しており、ほとんど貰うつもりで契約していると思われる若干悪質なケースだからなおさらだ。
こういう場合はADRという紛争解決機関への申し出や、場合によっては『訴える!』と言われることもあるので、弁護士への相談は必須である。
もちろん紛争や交渉に関しては、法的な解釈が必要なこともあるので、早いうちから弁護士に介入してもらうことになる。
保険会社にはそのための顧問弁護士もいる。
幸いなことに、翠咲は、今まで弁護士に相談するような案件はなかった。
その前に交渉で解決出来てしまうことが多かったからなのだが、そうも言ってはいられない。
だから、翠咲は知らなかったのだ。
その顧問弁護士がどんな人物か。
隣のチームの川崎主任は
「よく出来る人。感じいいよ。よく話を聞いてくれて、しっかりアドバイスしてくれるし」
安心して相談していいと言われたのだ。
だから翠咲は安心して相談したのである。
まさか、一刀両断されるとも思わずに。
翠咲は自席に戻って、分厚くなってしまった書類をデスクに置く。
深いため息をついた。
もう顧問弁護士である、倉橋陽平とのやり取りは二回目で一回目は鼻で笑われんばかりの対応だった。
二回目の今日も、結局のところ証拠が足りない、である。
上司が気にしたのは、契約から短い期間での事故。
契約からわずか3ヶ月の間の事故である。
翠咲としては、そんなこともあるのかなあ……不幸なことだな、くらいにしか思っていなかったそれ。
その上司の知る、火災鑑定専門の調査会社に確認を依頼したところ、なんと契約者自身の放火だったことが発覚したのだ。
自分の上申が通っていたら、危うく会社に損害を与えてしまうところだった。その上に、放火という犯罪を見逃すところでもあった。
本当に温和で、仏とも呼ばれていた上司だったが、お陰で翠咲は救われたどころか、仏と翠咲は社長表彰の対象になったのである。
翠咲は固辞したが、一担当者が固辞したからといって、何とかなるものでもなく、なんだか立派な会で、立派な表彰状と盾をもらい副主任の肩書きを貰って、今の部署に転勤になったのだ。
仏も昇進したと聞いている。
ちなみに名前は仏ではない。
それでも火新の仏っぽい人というと、あー!あの人!と分かってもらえるということは、あながち外れてはいないはずだ。
そして傷害という全く違う分野への異動は、気持ちの切り替えをするにしても有難い異動だった。
畑違いの分野で仕事をすること数年、先日主任に昇進し現在に至るわけなのだ。
今問題になっている案件は、過剰な契約によって、支払いが高額になりそうな案件なのである。
疑義案件であり、できれば支払いはしたくないのが翠咲の本音なのだが、謝絶しても問題ないのか弁護士に相談するように、と上席からの指示があった。
『保険金を払いません』と言うと、どんなことが起こるか……。
まず、了承してくれる人はいない。
ましてや、今回のケースは最初から高額で契約しており、ほとんど貰うつもりで契約していると思われる若干悪質なケースだからなおさらだ。
こういう場合はADRという紛争解決機関への申し出や、場合によっては『訴える!』と言われることもあるので、弁護士への相談は必須である。
もちろん紛争や交渉に関しては、法的な解釈が必要なこともあるので、早いうちから弁護士に介入してもらうことになる。
保険会社にはそのための顧問弁護士もいる。
幸いなことに、翠咲は、今まで弁護士に相談するような案件はなかった。
その前に交渉で解決出来てしまうことが多かったからなのだが、そうも言ってはいられない。
だから、翠咲は知らなかったのだ。
その顧問弁護士がどんな人物か。
隣のチームの川崎主任は
「よく出来る人。感じいいよ。よく話を聞いてくれて、しっかりアドバイスしてくれるし」
安心して相談していいと言われたのだ。
だから翠咲は安心して相談したのである。
まさか、一刀両断されるとも思わずに。
翠咲は自席に戻って、分厚くなってしまった書類をデスクに置く。
深いため息をついた。
もう顧問弁護士である、倉橋陽平とのやり取りは二回目で一回目は鼻で笑われんばかりの対応だった。
二回目の今日も、結局のところ証拠が足りない、である。
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