黒王子の溺愛は続く

如月 そら

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柾樹のお買い物

柾樹のお買い物①

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「お帰りなさいませ」
「ただいま」

仕事を終えて帰ってきた柾樹を、美桜が玄関までお迎えに行く。

その美桜を見てカバンを玄関に置いた柾樹が、美桜を抱き寄せて、そっと唇にキスをした。
その甘い吐息と甘い表情に美桜は、ここ最近うっとりさせられっぱなしなのだ。

「今日、荷物来ていなかったか?」
「あ、来てました。リビングに置いてあります」

いつになく、はしゃいだ柾樹の様子に、美桜は笑顔になってしまう。

けれど、柾樹が普段よりはしゃいでいるということは、多分、柾樹を知っている人にしか分からないだろう。

それくらい柾樹は感情を表面に出さない。
けれど、それが分かることが美桜には嬉しい。

荷物は今日の日中、通販サイトから来たものである。

──何を買ったのかしら…?
帰ってきて、真っ先に確認したくなるようなものである。

着替えもしないで、柾樹は真っ直ぐにリビングに向かう。
気になって、美桜も後をついていった。

かさかさっと箱をあけて、柾樹は「うん」と満足そうな顔をしている。

その手にあるのは、
「水筒……ですか?」
「そう。保温機能付きのね」

なぜ、水筒でそんなにご機嫌なんだろう…?

「これで、美桜のコーヒーが一日中飲めるだろう?」

美桜はその瞬間、頬が熱くなったのが分かった。
「柾樹さん、そのために?」

「それはそうだろう。俺は美桜のコーヒーを、家を出る時だけじゃなくて、最近は会社でも飲みたいんだ。それに朝、美桜がくれるベーグル。美味しいし腹持ちもいいから気に入っているんだが、飲み物が欲しくなるからな」

まるで当然のことかのように、淡々と柾樹は美桜に向かって話す。

そんなにベーグルを気に入ってくれているとは知らず、美桜は嬉しくなった。
けれど、確かに飲み物が欲しくなる食べ物だ。

「そうですよね! ごめんなさい気付かなくて。別のものにすれば……」
「別の……?」

柾樹の眼鏡の奥の瞳がきらっと光った。

「そうですね、おにぎりとか」
「それ、味噌汁もつけられる?」

「保温のランチジャーとかなら、おつゆも一緒に付けられるかもしれません」
「来て」

美桜の手を繋いで、柾樹は自分の部屋に引っ張っていく。
そして、部屋のパソコンを起動させた。

その間に脱いだジャケットをクローゼットに掛け、パソコンが立ち上がったのを見計らって、柾樹はデスクの前のチェアに座った。

そして、保温のランチジャーを検索している。
「外出先でもあったかご飯……」

柾樹は通販サイトの画面を開き、検索した商品説明を詳しく見ていた。
それを音読している。

「ああ、そう! そういうのです。」
それを聞いて美桜はひょいっと画面を覗き込んだ。
「結構たくさんあるな」
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