60 / 60
初めての夏体験
あなたはだぁれ?
しおりを挟む
病院ではすぐに治療室に通されて処置を受けました。
腕は包帯でぐるぐる巻きです。
ついでに点滴も受けることになりましたので、病室に向かいます。ええ、いつもの部屋です。
部屋でお着替えをしました。いつもの寝間着です。あら?何時持ってきたのでしょう。
着替えを終えて、ベッドに横になりますと、看護婦さんが点滴の用意をしてくださってます。見ていますと…… あら、知らない方ですわ。
「宜しくお願いしますね」
そう、その方に声をかけましたが……
いきなり、ドアが開き見知った方が入って来られました。
「ここにいたのか……」
はい?私は…… いえ、今の言葉はこの看護婦さんに言った言葉でしょう。
「見に来ただけです」
「見に来たって…… ただの子供だよ?」
「だって、ここに戻る理由なのでしょう?」
「それはそうだけど、最初から言ったよね?俺は後継ぎだから何時かはこっちに帰るって」
「今じゃなくてもいいはずよ」
「早い方が良いだろう?」
あの、何故ここで喧嘩をなさっているのでしょうか?
「若先生?」
「キミに若先生と言われると子供に戻った気がするな」
頬に触れないで下さいっ。いきなりだとビックリします。
若先生はこちらの院長先生の息子さんです。たしか関東の病院に勤めていらっしゃるとうかがっております……
会話からすると、こちらに戻って来られるのでしょうか?
で、こちらの看護婦さんは?
「蓉子ちゃん、彼女は僕のお嫁さんになる人だよ」
ああ、そうなのですね。
「蓉子と申します。宜しくお願いします。いつご結婚なされますの?」
「冬?かな?」
「この?時間は大丈夫ですの?お忙しいのでは?」
「その辺は家がやるだろう?」
で、そちらの名前をまだ伺っておりませんが。
「雫石です」
えっと……
若先生を見上げます……
大丈夫ですの?
「ごめんね。彼女はこの辺りの事をまだ良く知らないんだ」
「早目にご説明なされた方が…… 遅くなりましたらそれだけ大変になりますのよ?」
私は忠告しましたからね。はぁ、疲れました。ちぃ兄さまはどこに行ったのでしょう。
「蓉子ちゃん、相変わらず変だよね」
何を仰ってるのでしょう。これぐらいの社交は子供でも叩き込まれますでしょう?まあ、病室でする必要はないはずですよね?
ぐったりです。せっかく海で楽しかったのに。気分が落ち込みます。私も社交は苦手なのです。苦手だからこそ、早目の対応が必要なのです。
「ちぃ兄さまはどこかしら?」
知らない方は苦手です。病室で気を張っているのはすごく疲れるのです。できれば、若先生とそのご相手には部屋から出てもらいたいのです。
「ああ、あちらで今日の説明を受けていたと思うよ」
そうですか。点滴の用意を途中でやめられたので、いつもの婦長を呼びましょう。これ以上疲れたく有りません。ナースコールを押し、待ちます。すぐに来られるでしょう。
「はいはい、何でしょう」
いつもの婦長が声をかけながら入ってきました。ちょっとほっとします。
「てんてき」
そう話そうとしました。
「点滴の用意ですね。あら、腕は無理かしら」
「みたいなの。やはり足?」
「ですね」
「痛いのに…… もぉ」
「まぁまぁ。今日はすぐに終わる量ですよ」
笑いながらいう言葉ではないと思う…… 入院にならなくて良かった……
そんな話をしていると言うのに二人は病室から出て行かない……
「院長先生は?」
「すぐに来られますよ」
「そう。若先生?そろそろ、出ていって貰えますか。疲れましたので」
「あ、ごめんね。院長の診察を見たいんだ」
「では、そちらの方を」
「分かった」
「あの子、何あなたに命令しているの?」
「当たり前だろう。君こそいつまでここに居るんだ」
「私もお義父さまに……」
「それはここで無くても良いだろう」
「邪魔にしなくてもいいじゃないっ」
少しずつ声が大きくなってきました。何を考えているんでしょうか? ここは病室ですよ?
「雫石さんですか?あの、ここは病室で、私は病人です。関係ない方は出ていってもらえますか? 落ち着きません」
「ごめんね。すぐ出すから」
「若先生も出ていって。今は私の主治医ではありません」
「あ、うん。分かった。じゃあまた……」
二人は何か言いながら出ていきましたが……
婦長さんが言ってもいいと思う……
「すみません。もう、何度も同じ事を繰り返しているもので」
あら、そうなの?ここ以外でもやってるの?
そう。病院の人も大変ね……
足首のいつものところに点滴の針を刺され、わたしはベッドに横になりました。
はあ、疲れました。あの方たちが帰って来られるなら、しばらく通院は無しにして、往診に切り替えていただきましょう。疲れますもの。それくらいの我儘はしてもいいでしょう?
「ちぃ兄さま。点滴が終わったら帰れるのかしら?」
「大丈夫だそうだよ。何?大変だったって?」
「ええ。疲れたのです」
「ふうん。蓉子は若先生が苦手かな?」
「そうですね…… あまり得意ではないかと」
「主治医が変わるって」
「えっ。いやっ」
「うん、伝えとく」
「兄さま、今日は点滴が終わったら帰れるのでしょう?」
「そうだよ」
「せ、先生は?」
「あ、先に帰らせた。何か用があった?」
「ううん。ただ海にせっかく行ったのに少しだったから」
「彼女はちゃんと分かってる。大丈夫だよ」
「そう? 明日も来ていただけるかしら?」
「いや、次は月曜日かな? 今日は疲れただろうし」
「はい…… 」
「ん? どうした?」
「ううん、何でもない」
「次は何ができるのかしら……」
「ゆっくり楽しめばいいよ。無理しないでゆっくり」
「はぁい」
「少し眠ったほうがいいよ。時間がきたら起こすから」
「うん。おやすみなさい」
点滴の中に薬が入っていたのでしょうか。しばらくすると、眠気がやってきました。
おやすみなさい。
腕は包帯でぐるぐる巻きです。
ついでに点滴も受けることになりましたので、病室に向かいます。ええ、いつもの部屋です。
部屋でお着替えをしました。いつもの寝間着です。あら?何時持ってきたのでしょう。
着替えを終えて、ベッドに横になりますと、看護婦さんが点滴の用意をしてくださってます。見ていますと…… あら、知らない方ですわ。
「宜しくお願いしますね」
そう、その方に声をかけましたが……
いきなり、ドアが開き見知った方が入って来られました。
「ここにいたのか……」
はい?私は…… いえ、今の言葉はこの看護婦さんに言った言葉でしょう。
「見に来ただけです」
「見に来たって…… ただの子供だよ?」
「だって、ここに戻る理由なのでしょう?」
「それはそうだけど、最初から言ったよね?俺は後継ぎだから何時かはこっちに帰るって」
「今じゃなくてもいいはずよ」
「早い方が良いだろう?」
あの、何故ここで喧嘩をなさっているのでしょうか?
「若先生?」
「キミに若先生と言われると子供に戻った気がするな」
頬に触れないで下さいっ。いきなりだとビックリします。
若先生はこちらの院長先生の息子さんです。たしか関東の病院に勤めていらっしゃるとうかがっております……
会話からすると、こちらに戻って来られるのでしょうか?
で、こちらの看護婦さんは?
「蓉子ちゃん、彼女は僕のお嫁さんになる人だよ」
ああ、そうなのですね。
「蓉子と申します。宜しくお願いします。いつご結婚なされますの?」
「冬?かな?」
「この?時間は大丈夫ですの?お忙しいのでは?」
「その辺は家がやるだろう?」
で、そちらの名前をまだ伺っておりませんが。
「雫石です」
えっと……
若先生を見上げます……
大丈夫ですの?
「ごめんね。彼女はこの辺りの事をまだ良く知らないんだ」
「早目にご説明なされた方が…… 遅くなりましたらそれだけ大変になりますのよ?」
私は忠告しましたからね。はぁ、疲れました。ちぃ兄さまはどこに行ったのでしょう。
「蓉子ちゃん、相変わらず変だよね」
何を仰ってるのでしょう。これぐらいの社交は子供でも叩き込まれますでしょう?まあ、病室でする必要はないはずですよね?
ぐったりです。せっかく海で楽しかったのに。気分が落ち込みます。私も社交は苦手なのです。苦手だからこそ、早目の対応が必要なのです。
「ちぃ兄さまはどこかしら?」
知らない方は苦手です。病室で気を張っているのはすごく疲れるのです。できれば、若先生とそのご相手には部屋から出てもらいたいのです。
「ああ、あちらで今日の説明を受けていたと思うよ」
そうですか。点滴の用意を途中でやめられたので、いつもの婦長を呼びましょう。これ以上疲れたく有りません。ナースコールを押し、待ちます。すぐに来られるでしょう。
「はいはい、何でしょう」
いつもの婦長が声をかけながら入ってきました。ちょっとほっとします。
「てんてき」
そう話そうとしました。
「点滴の用意ですね。あら、腕は無理かしら」
「みたいなの。やはり足?」
「ですね」
「痛いのに…… もぉ」
「まぁまぁ。今日はすぐに終わる量ですよ」
笑いながらいう言葉ではないと思う…… 入院にならなくて良かった……
そんな話をしていると言うのに二人は病室から出て行かない……
「院長先生は?」
「すぐに来られますよ」
「そう。若先生?そろそろ、出ていって貰えますか。疲れましたので」
「あ、ごめんね。院長の診察を見たいんだ」
「では、そちらの方を」
「分かった」
「あの子、何あなたに命令しているの?」
「当たり前だろう。君こそいつまでここに居るんだ」
「私もお義父さまに……」
「それはここで無くても良いだろう」
「邪魔にしなくてもいいじゃないっ」
少しずつ声が大きくなってきました。何を考えているんでしょうか? ここは病室ですよ?
「雫石さんですか?あの、ここは病室で、私は病人です。関係ない方は出ていってもらえますか? 落ち着きません」
「ごめんね。すぐ出すから」
「若先生も出ていって。今は私の主治医ではありません」
「あ、うん。分かった。じゃあまた……」
二人は何か言いながら出ていきましたが……
婦長さんが言ってもいいと思う……
「すみません。もう、何度も同じ事を繰り返しているもので」
あら、そうなの?ここ以外でもやってるの?
そう。病院の人も大変ね……
足首のいつものところに点滴の針を刺され、わたしはベッドに横になりました。
はあ、疲れました。あの方たちが帰って来られるなら、しばらく通院は無しにして、往診に切り替えていただきましょう。疲れますもの。それくらいの我儘はしてもいいでしょう?
「ちぃ兄さま。点滴が終わったら帰れるのかしら?」
「大丈夫だそうだよ。何?大変だったって?」
「ええ。疲れたのです」
「ふうん。蓉子は若先生が苦手かな?」
「そうですね…… あまり得意ではないかと」
「主治医が変わるって」
「えっ。いやっ」
「うん、伝えとく」
「兄さま、今日は点滴が終わったら帰れるのでしょう?」
「そうだよ」
「せ、先生は?」
「あ、先に帰らせた。何か用があった?」
「ううん。ただ海にせっかく行ったのに少しだったから」
「彼女はちゃんと分かってる。大丈夫だよ」
「そう? 明日も来ていただけるかしら?」
「いや、次は月曜日かな? 今日は疲れただろうし」
「はい…… 」
「ん? どうした?」
「ううん、何でもない」
「次は何ができるのかしら……」
「ゆっくり楽しめばいいよ。無理しないでゆっくり」
「はぁい」
「少し眠ったほうがいいよ。時間がきたら起こすから」
「うん。おやすみなさい」
点滴の中に薬が入っていたのでしょうか。しばらくすると、眠気がやってきました。
おやすみなさい。
0
お気に入りに追加
18
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです