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05:結局何もできてないです
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男が二人、女が一人。それも女の方は一番下で、ワガママに育つだろうと誰もが言っていた。
――周囲の期待通り、ワガママには育っているが斜め上のワガママばかりだと使用人たちは苦労しているらしい。
「ねえドーラ!パン屋になるにはどうしたらいいのかしら!」
「姫様、パン屋にはパン屋の血を受け継いでないとなれません」
「そうなの!?じゃあわたしは平民にしかなれないのね!?なんの平民かしら!」
前世を思い出してから三年。メイド長が辞めるまで、手に職を付けられるようにわたしは色々なことにチャレンジしてきた。
わたしも六歳!そろそろ母を支えながら生きていける年齢になったんじゃないかしら。主人公と入れ替わるにしても、ちょうど良い年齢である。……だけど未だに天職は見つかってない。どれもこれも試してみようとしているが、ドーラを初めとしたメイド達やお母様に妨害されてしまっているからだ。
因みにメイド長はまだバリバリ健在だ。あと四年は働くと言っていた。つまりまだ四年の猶予はギリギリあるので、早く何かしら身に付けないとお城の外ではやっていけない。
「フィアーナ、今度はパン屋になるのかい?」
腹黒サイコの上兄様…クロハーラお兄様がドーラとの会話を立ち聞きしていたらしい。
平民になりたい宣言から兄様たちの態度が以前と変わって、わたしに関わるようになってきた。以前は挨拶だってしてくれなかったのに、今は挨拶は返してくれるようにはなったけど…可愛い妹!ではなくて、なんかこう…動物園の猿を見にきた人の目であるので複雑だ。
「はい、お兄様。わたくし、城を出たあとも強く生きられるようにしておかなければならないのです!」
「なんでそんなに城から出たいんだい?」
上兄様の優しく柔和な顔は天使のようだと言われているが腹黒なことは前世の記憶から知っているので笑顔には騙されない。
この三年のうちにマスターしておいた悪役令嬢もとい、悪役王女笑いを上兄様にして見せる。
「ふふふ…お兄様達は気付いていらっしゃないでしょうが…わたくしの正体は、実は平民なのです!ほーっほっほ!」
「へえ、それで?」
「えっそれでって…あの……」
それで……つまり平民に戻るわけで……そのあと本当のお母さんと支え合いながら生き抜くためで…。
上兄様の予想外の言葉になんて言ったらいいのかわからなくて悩んでしまう。
「パン屋になりたいならパンを作れるようにならないとね。ちょっと作ってみると良いよ。ほらおいで」
「あっそうですわね!パンを作れないパン屋なんて飛べない豚はただの豚のようですわ!」
「何を言ってるのかはわからないけど」
上兄様に連れられて、厨房へと向かう。そこにはいつも居るはずの料理人たちは誰も居なくて…わたしと上兄様、ついてきたドーラの三人だけだ。
「さあ、パンを作ってみると良いよ。パン屋に向いているか僕が見てあげよう」
……腹黒サイコな人だと思っていたけれど、まさかわたしの為に時間を割いてくれるなんて!実はお兄様いい人だったのね!
「はい!お兄様、わたくし立派なパンを作りますわ!」
といっても前世でだってパンなんて作ったことのないわたしはイメージだけで作ってみた結果、厨房を地獄のようにしてしまうだけなのであった。
――周囲の期待通り、ワガママには育っているが斜め上のワガママばかりだと使用人たちは苦労しているらしい。
「ねえドーラ!パン屋になるにはどうしたらいいのかしら!」
「姫様、パン屋にはパン屋の血を受け継いでないとなれません」
「そうなの!?じゃあわたしは平民にしかなれないのね!?なんの平民かしら!」
前世を思い出してから三年。メイド長が辞めるまで、手に職を付けられるようにわたしは色々なことにチャレンジしてきた。
わたしも六歳!そろそろ母を支えながら生きていける年齢になったんじゃないかしら。主人公と入れ替わるにしても、ちょうど良い年齢である。……だけど未だに天職は見つかってない。どれもこれも試してみようとしているが、ドーラを初めとしたメイド達やお母様に妨害されてしまっているからだ。
因みにメイド長はまだバリバリ健在だ。あと四年は働くと言っていた。つまりまだ四年の猶予はギリギリあるので、早く何かしら身に付けないとお城の外ではやっていけない。
「フィアーナ、今度はパン屋になるのかい?」
腹黒サイコの上兄様…クロハーラお兄様がドーラとの会話を立ち聞きしていたらしい。
平民になりたい宣言から兄様たちの態度が以前と変わって、わたしに関わるようになってきた。以前は挨拶だってしてくれなかったのに、今は挨拶は返してくれるようにはなったけど…可愛い妹!ではなくて、なんかこう…動物園の猿を見にきた人の目であるので複雑だ。
「はい、お兄様。わたくし、城を出たあとも強く生きられるようにしておかなければならないのです!」
「なんでそんなに城から出たいんだい?」
上兄様の優しく柔和な顔は天使のようだと言われているが腹黒なことは前世の記憶から知っているので笑顔には騙されない。
この三年のうちにマスターしておいた悪役令嬢もとい、悪役王女笑いを上兄様にして見せる。
「ふふふ…お兄様達は気付いていらっしゃないでしょうが…わたくしの正体は、実は平民なのです!ほーっほっほ!」
「へえ、それで?」
「えっそれでって…あの……」
それで……つまり平民に戻るわけで……そのあと本当のお母さんと支え合いながら生き抜くためで…。
上兄様の予想外の言葉になんて言ったらいいのかわからなくて悩んでしまう。
「パン屋になりたいならパンを作れるようにならないとね。ちょっと作ってみると良いよ。ほらおいで」
「あっそうですわね!パンを作れないパン屋なんて飛べない豚はただの豚のようですわ!」
「何を言ってるのかはわからないけど」
上兄様に連れられて、厨房へと向かう。そこにはいつも居るはずの料理人たちは誰も居なくて…わたしと上兄様、ついてきたドーラの三人だけだ。
「さあ、パンを作ってみると良いよ。パン屋に向いているか僕が見てあげよう」
……腹黒サイコな人だと思っていたけれど、まさかわたしの為に時間を割いてくれるなんて!実はお兄様いい人だったのね!
「はい!お兄様、わたくし立派なパンを作りますわ!」
といっても前世でだってパンなんて作ったことのないわたしはイメージだけで作ってみた結果、厨房を地獄のようにしてしまうだけなのであった。
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