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若い子の言葉はたまに意味が違うよね

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 金髪の彼の言葉で、周りの友達たちがざわついている。

「は?姫?このおっさんが姫とかやばくね?」
「お前ついに頭やられたか?」

 それもそうだろう。こんなおじさんが姫なんて似つかわしくない。

「っせーな、この人は姫なんだよ!俺の!姫なんだつっの!」

 うん。誤解しか招かないね。
 大声で叫ぶもんだから友達だけじゃなくて、他の通行人もざわざわしているし。

「いやいや、姫とかありえねーって!」
「あ、あー君たち」

 仕方ない。本当ならこんなことしたくはないが収拾を付けて彼がこれからも友好的な関係をお友達と続けていくにはこれしかない。
 スーツの胸ポケットから名刺を取り出して、お友達の一人に差し出す。

「僕の名前は姫川でね。名前と見た目が似合ってないとはよく言われるんだけど……それで、こっちは甥でね。ほら、いつも呼び捨てするなって言ってるじゃないか」

 苦し紛れの嘘だが、金髪の彼を無理矢理立たせて引っ張る。
 とりあえず話をしなければいけない。ははは、と笑いながら無言になってしまった金髪の彼を引っ張ってその場からじりじりと離れた――――。




「まじかよぉ~~~~ずっと探してた姫がおっさんとかよぉ~~~~」

 ファーストフードの隅っこの席に僕らは向かい合って座っている。
 金髪の…岸と呼ばれていた彼は机に突っ伏して大声で泣いているが店内が騒がしいのでそこまで目立ってはない。近隣の席からは妙な視線を送られているけど。

「まじないわーまじでないわーー…」

 言いたいことも気持ちはわかるが僕だって騎士に対して少なからず残念な気持ちなんだぞ。
 岸くんが僕をちらりと見上げる。目があって、前世のことが脳裏に過ってどきっとしてしまった。

「……抱けるわ」
「はい?」

 急にスンッと真顔になる岸くん。
 抱く?抱かれる?抱ける?最近の若い子の言葉はそのままの意味ではないことが多いから、きっと想像するようなことではないだろう。そう信じたい。

「よく見たらおっさん抱けるわ!やべー!」

 さっきまで泣いてたかと思ったらものすごくいい笑顔で叫んで、僕の手を握りしめる岸くん。色々ちょっと待ってほしい。

「やっぱ今度こそ幸せになるしかないっしょ!姫!」

 こうして…元姫の俺と、元騎士の岸くんによる攻防の日々が始まるのだった…。
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