とある奇談蒐集家の手稿

赤村雨享

文字の大きさ
上 下
80 / 100

第八十話 窓

しおりを挟む


 転勤で越した家の近所に、窓から外を覗いている女がいる。


 身体を半身に隠しカーテンを少しだけ開いて外を窺う姿は、何かを監視している様だった。


 記憶の限り女は必ずそこに居て、昼夜を問わず何かを監視している。そんな姿は少なからず不気味に見えた。


 ある日、近所の者と会話する機会があったので少し事情を確認することに……。


「スミマセン……あの家の女性なんですけど、いつもあんな風なんですか?」
「あ~……ん~……アレね。あんまり見ない方が良いよ?」
「精神が危険な方なんですか?」
「いや~………あれね……」

 何やら口が重い近所の住人。気になり問い詰めると……。

「あれはね~……人じゃないんだわ……」
「え?じゃあ、人形ですか?」
「違うよ……あれは簡単に言えば幽霊だ」
「そんな……あんなハッキリと見えるのに……皆さんも見えてるんでしょ?」
「だからヤバイんだよ……あれはね……」

 住人の話では、不倫して駆け落ちした旦那を待ち続けた妻が最後に首を吊ったのがあの部屋なのだという。

 当時は大騒ぎになって警察も動いたので間違いないとのこと。


「土地の管理者もあの家を売りたくて御払いしたらしいんだけど、全く駄目でね……ああして覗いてるのは旦那の帰りを待ってるのかも知れないよ」 


 それ以来近所では、あの家の方角の窓は閉めたままだという。何か良からぬ妬みを受けそうで怖い為、皆そうしているのだそうだ。


 後に再びの転勤で他の地に越してしまったが、時折連絡する程度に仲良くなった住人に確認する機会がある。


 彼女は……今も窓に立っているそうだ……。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結済】僕の部屋

野花マリオ
ホラー
僕の部屋で起きるギャグホラー小説。 1話から8話まで移植作品ですが9話以降からはオリジナルリメイクホラー作話として展開されます。

サクッと読める♪短めの意味がわかると怖い話

レオン
ホラー
サクッとお手軽に読めちゃう意味がわかると怖い話集です! 前作オリジナル!(な、はず!) 思い付いたらどんどん更新します!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

無名の電話

愛原有子
ホラー
このお話は意味がわかると怖い話です。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
よくよく考えると ん? となるようなお話を書いてゆくつもりです 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

ドアを叩く音

庄七
ホラー
ホラーテラーというサイト(残念ながら閉鎖された)に投稿したもの。

処理中です...