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第五十六話 夢枕
しおりを挟むあるバス会社添乗員の女は、その頃やたらと祖母の夢を見たという。
祖母は夢の中で、女の寝ている枕元に正座し何かを呟いているのだ。
しばらく帰郷していない為にそんな夢を見るのだろうと申し訳無く思いつつも、多忙で帰れぬ女。有名観光地へのツアーガイドなので疲れも溜まっていた。
そんなある日、枕元の祖母は女の顔を覗き込み頬を優しく包んでこう告げた。
「頼むから明日は実家に帰れ。大変なことになっから……約束だかんな?」
目が覚めた女はその目から涙を流していた……。
頬を触れられた感覚があまりにリアルだった為、急病を装い欠勤。故郷に戻り祖母の墓参りをした。
その日の夕刻……実家で何気無くニュースを見ていると、高速道路で大事故が発生したと報道されていた。
何でも、逆走した車とタンクローリーの正面衝突。バスがそこに突入して犠牲者が出たらしい。
女は現場の映像を見て愕然とした……それは自分の勤める会社のバスだったのだ……。
自分の代わりに添乗したガイドは死亡。結局、女は申し訳無さから会社を退職した。
その後、地元に帰郷した女の枕元にもう一度だけ祖母が現れた。
「お前が無事で良かった……でも代わりに亡くなった方にゃ悪いことしたな」
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以来、帰郷した女は地元に就職し祖母の墓参りを欠かすことは無かったという……。
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