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六 彼の言い分と、真相
八
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「ばっかですねえ。私は最初から未来の奥様に、って言ったじゃないですか」
キエルが呆れ顔でそう言い、隣のティセルカがそんな彼女の頭を叩く。
「まあ仕方ないだろ。大公妃様のことをちゃんと吹っ切ったのかなんて本人じゃないとわからないんだし」
「あらあら、私はわかっていましたよ? 幼いロジェ様を知っていますからね。ルファ様を前にすると嬉しくて嬉しくて、だからそれを隠すために表情を貼り付けてたなんて、とっても子供染みてますけどね」
うふふ、と傍らで笑うグルテの言葉を、エリーチェが鼻で笑う。
「すっごい子供染みてるわよね! まあわかってたけど!」
女性四人の言葉を聞きながら、ルファは微笑んだ。
先日のような雨ではなく、今日は快晴だ。街道の両脇にずらりと並ぶのはルテリアの民で、ルファ達も列を作って、今かと待っている。
そして音楽が聞こえ始め、兵士の行進と共に来た──たくさんの花で編まれた大きな籠。その中には花嫁衣装を身に纏ったカロラティエがいて、民に手を振っている。
兵士の行進を先導しているのは護衛隊の副隊長であるサルークだ。本来ならティセルカが勤めるのだが、彼女の希望で、見送りに専念することになった。
ティセルカはじっとカロラティエを見つめる。カロラティエもティセルカを見つめ、二人の間に穏やかな空気が流れていた──と、兵士の一人がこちらに走って来て、ルファになにやら手紙を渡した。
ルファが受け取ると、兵士は再び行進に戻って行く。なんだろうと手紙を開き、そこに書かれた言葉に笑ってしまった。
可愛らしい文字で、先日の詫びと、それからティセルカとサルークをよろしく、と意味深な言葉が綴られている。
ルファは手紙を丁寧に折り畳んで、ティセルカを見つめるカロラティエを眺めた。
花びらが空へ舞い、カロラティエの白髪の髪も靡く。彼女は先日の暗い様子はなく、実に晴れやかで、綺麗だ。
花籠から花びらが飛んで来て、ルファはそれを指先で掴み、微笑んだ。
──どうか、彼女の行く末が、幸せでありますように。
2013.01.25 天嶺 優香
キエルが呆れ顔でそう言い、隣のティセルカがそんな彼女の頭を叩く。
「まあ仕方ないだろ。大公妃様のことをちゃんと吹っ切ったのかなんて本人じゃないとわからないんだし」
「あらあら、私はわかっていましたよ? 幼いロジェ様を知っていますからね。ルファ様を前にすると嬉しくて嬉しくて、だからそれを隠すために表情を貼り付けてたなんて、とっても子供染みてますけどね」
うふふ、と傍らで笑うグルテの言葉を、エリーチェが鼻で笑う。
「すっごい子供染みてるわよね! まあわかってたけど!」
女性四人の言葉を聞きながら、ルファは微笑んだ。
先日のような雨ではなく、今日は快晴だ。街道の両脇にずらりと並ぶのはルテリアの民で、ルファ達も列を作って、今かと待っている。
そして音楽が聞こえ始め、兵士の行進と共に来た──たくさんの花で編まれた大きな籠。その中には花嫁衣装を身に纏ったカロラティエがいて、民に手を振っている。
兵士の行進を先導しているのは護衛隊の副隊長であるサルークだ。本来ならティセルカが勤めるのだが、彼女の希望で、見送りに専念することになった。
ティセルカはじっとカロラティエを見つめる。カロラティエもティセルカを見つめ、二人の間に穏やかな空気が流れていた──と、兵士の一人がこちらに走って来て、ルファになにやら手紙を渡した。
ルファが受け取ると、兵士は再び行進に戻って行く。なんだろうと手紙を開き、そこに書かれた言葉に笑ってしまった。
可愛らしい文字で、先日の詫びと、それからティセルカとサルークをよろしく、と意味深な言葉が綴られている。
ルファは手紙を丁寧に折り畳んで、ティセルカを見つめるカロラティエを眺めた。
花びらが空へ舞い、カロラティエの白髪の髪も靡く。彼女は先日の暗い様子はなく、実に晴れやかで、綺麗だ。
花籠から花びらが飛んで来て、ルファはそれを指先で掴み、微笑んだ。
──どうか、彼女の行く末が、幸せでありますように。
2013.01.25 天嶺 優香
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