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第十話

恵茉、見習い悪魔として初仕事をする! 後編

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 着いた先は、恵茉もたまに利用するスーパーだった。それも、天井に近い位置に。ここは、母親の行きつけのスーパーの一つでもある。つまり、空中に浮いている状態である。瞬間移動は始めて体験したが、瞬きしたら着いた。文字通りそんな感じだった。

 ベリアルはそっと恵茉を降ろそうとする。つまり空中に。

「えっ? えっ? えーーーー?」
 
 恵茉は降ろされまいと、ベリアルの首にしがみつき抵抗する。彼は呆れたように溜息をつくと

「13階から飛び降りた奴が、今更何を怖がる?」

 と尋ねた。

「だ、だってあの時はしっかりと下に人が居ないか、ちゃんと確認したもの! 今このまま降りちゃったら、人の上に落ちちゃいそうじゃないの!」

 と食ってかかる。

……なるほど。人には迷惑かけないように気を配っている訳か……

 と思いながら

「落ち着け! お前が履いている靴があるだろ」

 と諭す。

「……空中に着地出来るなんて一言も言わなかったじゃない!」

 と反論する恵茉。あっ、と気付くベリアル。

「そうか、そう言えばそうだな。すまない。説明不足だ」

 と素直に謝罪した。

……いいか? もし自分に非があったら、まずは素直に謝罪するんだ。そうしないと人間という奴らはすぐにふて腐れるし、心を閉ざすからな……

 これも、仲間であるメフィストフェレスから教えられた事である。

「まぁ、いいわ。人間に1から教えるの、初めてなんでしょ」

 と笑うと、恵茉は降りようとする仕草をした。ベリアルはゆっくりと降ろす。恵茉は彼の肩につかまりながら、おそるおそる右足を降ろし、空中に足が着く事を注意深く確認する。軽く右の足先で、コツコツ、と足先を確認すると、左足を降ろし、パッ、とベリアルから両手を離した。

「スゴーイ!! 空中に立ってるーーー!」

 と、嬉しそうにスキップした。

「火山の上とか、海、川、切り立つ氷の上、とかも大丈夫?」

 と目を輝かせて質問する。

「あぁ、大丈夫だ。熱さも冷たさも振動も感じない。但し、鍛えて上達しなけりゃ、100m四方のみ有効だがな」

 と肩をすくめながら彼は答えた。そして恵茉が落ち着いたのを見計らい

「さて、仕事を始める前に……」

 と軽く前置きをし、恵茉に注目させる。

「目を閉じて、心を無にしてみろ。人間どもの心の奥底の声が感じ取れる筈だ」

 と指示した。恵茉は言われるままに目を閉じてみる。

『いらっしゃいませ、いらっしゃいませ。本日タイムセールは……』

ザワザワ…ザワザワ…

 ベリアルは囁くように恵茉に指示する。

「耳で聞こうとするな。自らの呼吸に意識を向けろ。自然に耳に入ってくるのを感じろ」

ザワザワ…ザワザワ…色んな声、色んな音…

イライラ、ムカムカ

……ムカつくんだよ、クソ婆!なんで俺が部活帰りに夕飯買って行かなきゃいけんねぇんだよ!てめぇ主婦で暇ぶっこんてんじゃねぇかよ、楽してんじゃねぇよ!……

(学生の声??)

 恵茉はびっくりして目を開ける。べリアルは頷くと、無言で真下を指さす。そこには高校1,2年と思われる男子が、買い物かごを片手に弁当、総菜コーナーにいた。いかにも不機嫌そうに、イライラした表情を露わにして。

ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…

……めんどくせぇなぁ、帰ってくんのかよ、いいいよ金だけ入れてくれれば。浮気女のところから帰ってくんなよ……

 中年女性の声に、恵茉は見下ろす。

……帰ってくんなよ……

(あの人だ!)

 と確信する。その女性は内心では悪態をつきつつも、表面上は大人しく従順そうに振る舞っている。

ザワザワ…ザワザワ…

……クソ爺、早く死ねよ!糖尿病の食事、お前の分だけ三食作るの大変なんだよ。味が薄いだ、死んだ婆さんは料理上手だった、とかうぜぇんだよ。塩分と糖分沢山入れて、早死にさせてやる!! くたばれ!!……

 次に響いて来た声の主はニコニコ明るく愛想の良い感じの女性だった。けれどもその笑顔は精巧に出来たアンドロイドのようだ。笑顔という仮面を被っている。

ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…

……死ね!ムカつくんだよ……

ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…

……アイツ、不幸になれば良いのに……

 改めて人間を観察すると、一人一人が仮面を被っている事に気付く。

 あるものは「良き母親」の仮面。あるものは「末っ子」として可愛いがられる自分の仮面。あるものは「生真面目」な仮面。

「その仮面は、所謂『世間体』や『そう周りから見られたい自分』。その想いが仮面としてお前の目に映るんだ」

 恵茉は急に怖くなった。自分はどんな仮面を被って、ベリアルに接しているのだろう?

「安心しろ。俺たち悪魔にとっちゃ、人間の考えてる事なんざ手に取るように伝わってくるもんさ。仮面もへったくれもねーよ。第一、人間というめんどくせぇ世界を上手く生き抜くには、どんな人間にも仮面は必要だろうがよ」

 と淡々と答えた。

「あははっ、そっかー。全部バレバレか。そうだねぇ。だって本音なんか言ったら大変だよね。相手が嬉しくなる本音なら良いんだろうけど、大抵はさ、人間関係を円滑に保つ為に本心隠すんだもんね」

 と諦めたかのように笑う。

「そんなケースだけじゃねぇよ。嫉妬から、敢えてけなしたりするケースもあるだろうよ」

 にべもなくベリアルは続ける。

「あー。内心では舌を巻いているのに、自分の方が優れてると思っていたくてわざと相手を悪く言ったり、顔が見えないネットで誹謗中傷しまくる奴らとか、そうだわね」

 恵茉は考え込みながら答える。

「人間は、時に悪魔も度肝を抜くほど冷酷非道、残忍になるからな。それを、俺たちのせいにしている奴らは沢山いるからな」

 ため息をつきながら彼は続ける。

「どういう事?」

 恵茉は興味を持ったようだ。

「俺たちは、契約がものを言う、と少し話したな」

 大きく頷く恵茉。

「例えば、お前がそのローブの力を生かして洗脳し残忍な犯行へと導いたとしても。これをお前たち人間は『魔が差す』とか言っているがまさにその状態だ。しかし!最終的に契約を交わさなければ、俺たちが奴らを先導して実行させる力は無い。契約を交わしていないのに、冷酷非道、残忍な犯行を犯す奴らは少なくないのさ。つまりは、自らの意思で犯してる、て訳さ。にもかかわらず、俺たちのせいにする奴らが多すぎる」

 吐き捨てるようにして、ベリアルは続けた。

「そっか。もしかしたらさ。小さい時から思っていて、でも誰にも言えなかったんだけどさ。私たちの言う『悪魔』こそ人間の姿であり、『正義』こそ、人間の願望を総称したもの。それが『光』とか『天使』とかだったりして」

 恵茉は、パクリ絵描きの人気ぶりと、優秀なる兄の死を思い浮かべながら冗談とも本気ともつかない様子で答える。

……なるほどな。そんな風に感じるなら、人間界じゃさぞ生きにくかっただろうよ……

 ベリアルはそう感じると、なんだか彼女の頭を撫でてやりたくなった。

「その内、神がいかにして世界を創ったか。何故神は人間を創ったのか?そもそも天使って何だ? 堕天使って? て話はしてやるよ。但し、人間達が好むようなファンタジーは、あまり期待しない方が良いかもな」

 と答えると恵茉の傍に瞬間移動する。そしてそっと右手をあげ恵茉の頭を静かに撫で始めた。不思議そうな顔をしてベリアルを見上げる恵茉。だが、まんざらでも無いらしくそのまま大人しされるがままにしていた。

「初仕事、してみるか?」

 やがてベリアルは問いかける。恵茉は大きく頷いた。

「簡単だ。そのローブと靴があれば、思い浮かべた通りに空を舞える。慣れない内はやりにくいかもしれんが。ただし、人間に触れると感触だけは伝わるので、ビックリされるから触れないように気をつけろ。まぁ、敢えてパニックに誘って極限状態へと導き、誰もが持つ狂気を剥き出しにさせるのも楽しいが、初めてでそれは難しいだろうからな。それで、ここにいる奴らのやる気を削いで欲しいのだが、具体的なやり方は、奴らに背後から耳元に囁くだけだ。例えば、こんな風に。『面倒くさいの、やらなくていいよ!もっと楽しようよ』とかな。囁き続けるうちに、奴らは無気力になっていくから、そしたら次の人間に。俺がもう良い、と言うまでやり続けろ。俺は、お前がやる気を削いだ人間により早く、より簡単に、より安く、より美味しく、の四拍子揃った食品添加物たっぷりのレトルト食品を買うよう、誘導する」

 と説明した。

「えっ? レトルト食品なの?」

 恵茉は驚きの声をあげる。

「神が光と闇に分けた理由など、根本の説明が必要だから、これも詳細は後から話して行くが、その添加物を開発し、世に送り出しているのは我々魔族なのさ。今はこれだけ説明しておこう。これは、人間が予め設定してきた個人の寿命や性質等を狂わせる為に行っている仕事だ」

 とベリアルは答え、

「さ、サッサとやってしまおう!」

 と恵茉莉に指示を出す。

「わかった! やってみる!」

 恵茉はハッキリと答えると、自分が幽霊のように人間達の間をふわふわと浮いている姿を想像した。やがて恵茉は空間に浮かび上がり、人間達の頭上をふわり、ふわり、と舞始めた。

「いてっ!」

 背が低く、でっぷりと太ったバーコード頭の中年男の額に、どうやら恵茉の左足が当たったようだ。

 その男は顔を顰めつつ辺りを見回す。だが、何も思い当たるものが無いらしく、首をかしげつつも再び惣菜を選び始めた。

(揚げ物かぁ。おじさん、だからメタボになるんだよ、と。ごめんね、頭蹴っちゃったみたいで)

 恵茉は心の中で謝罪すると

(これも何かのご縁よね!初仕事で額にヒットなんて。初ターゲットは、おじさんに決ーめた!)

 と恵茉は心の中で舌を出す。所謂、テヘペロ、というやつである。その様子を黙って見守っていたベリアルは

……ほう?足が当たった罪悪感から、他の人間にいくと思ったら迷わずそういくか……

 と満足そうに笑みを浮かべる。恵茉はその男の背後にふわり、と舞うと

『おーじさん、そんな揚げ物ばっかり飽きたでしょ? もっと美味しくて、簡単で、安くて、早い。そっちのが良くなーい?』

 と囁く。するとその男は不意に何かに気づき、そちらの方に体を向けると、吸い込まれるようにして歩き出した。男に行く先は、ベリアルが待機しているレトルト食品売り場だ。

 すかさずベリアルは、その男の後ろに瞬間移動すると、何やら囁き始めた。男はすぐに、ベリアルが誘導したレトルト食品を6個カゴに入れると、すぐにレジを目指した。 ベリアルは恵茉に右手でVサインを送る。

(やった! 大成功! 次は、あのおばさんにしーようっと!)

 ターゲットの元へふわりと舞う。幼稚園生の男の子の手を引いている、どこにでも居そうなママだ。

(子育て、大変でしょ? 今からつくるの面倒臭いよ? それよりももっと自分の自分の時間を楽しようよ!)

 と囁きかける。



 こうして恵茉は予想以上に早く、初仕事を終えたのであった。
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