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第四話
これは夢か現実か? その二
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「あのスクールカウンセラー、超イケメンだよねー!」
「うんうん、私、なんか相談に行こうかなー」
「あー! あたしも思ったー!」
休み時間、あちこちで女子達の黄色いざわめきが響き渡る。
「つーか奥さん居そうじゃね?」
「ま、彼女は居そうだよな、しかも何人も」
「タラシっぽくね?」
ややご機嫌斜めな男性陣たちの囁き声もこだまする。
(あーあ、やっぱり見た目良しなリア充と思われる転校生や転勤者は異性からは必要以上に期待され、同性からは煙たがられる。これは群衆心理の一つだわね)
薔子は庭作りの基礎の本を読みふけると見せかけ、周りの話に耳を傾けていた。庭師の仕事に興味があるのだ。卒業後は、寺本に弟子入りするのも悪くない、と半ば本気で思っていた。
ピンポンパンポン
臨時で連絡事項を伝える校内放送を伝えるチャイムが鳴る。教室内は静かになった。
「美化委員は、昼休み花壇①に集まって下さい。繰り返します。美化委員は、昼休み花壇①に集まって下さい。以上です」
館内放送が終わると、教室内は再び来栖志門の話題に花を咲かせた。美化委員は、自分たちにむかんけだからだ。
(昼休み花壇①か。ま、退屈な昼休みの時間潰れるしラッキーかな)
美化委員である薔子は秘かに思う。ちなみにこの委員というものは、新学期に図書委員や保健委員など希望者を募り、多い場合はジャンケンで決められた。美化委員はゴミ拾い等のイメージが強いせいか、誰もなり手が居なかったのだ。何処にも希望を出さなかった薔子が自然に美化委員となった、そんな経緯だ。
ガーデンシクラメン、フユサンゴ、マンリョウ、黄水仙等がセンス良く配列された花壇①。広さは八畳程であろうか。集まった生徒たちは、比較的真面目で大人しそうなタイプだ。
薔子は昼休み開始のチャイムが鳴ると、直ぐにこの場所にやってきた。そこは通称『中庭』とも呼ばれ、保健室とカウンセリングルームに隣接している。四季折々の花が楽しめるよう、主に園芸部が花壇②と共々手入れを任されていた。言わば癒しの場所なのである。
因みに、花壇②は校門近くと校庭の周りに設けられており、梅、桜、金木犀、椿、山茶花、木瓜《ぼけ》等の花木が植えられている全体を指す。
「1年A組から順に並んで」
三年女子の委員長が声をかける。皆、静かに従った。薔子は二年B組であるので、真ん中より少し前に並ぶ。
「来月分の花代を渡します。渡した分は使用して良しとしますが、各自出来るだけ節約して使うように。領収書を忘れずに貰ってくる事。今月分の花代と領収書は、冬休み前に回収します。また連絡します。受け取った人から解散して下さい」
テキパキと説明する委員長。薔子は思う。
(背が高くてスリムなモデル体型。眼鏡がよく似合う眼鏡美人さんよね。同じ眼鏡っ娘でもこうも違うとは……)
その時、ふと志門の事が思い浮かんだ。無意識にカウンセリングルームを見やる。窓が全開にされており、桜色のカーテンが風に揺らめいていた。5.6人程の女生徒達が彼を囲んでいた。皆、お洒落に余念がない可愛い子たちばかりだ。
(せめて同じ眼鏡っ娘でも、委員長くらい洗練された美人さんだったら……あのキラキラ女子の輪に入っても違和感無いだろうに……)
少しばかり胸が痛んだ。
(……て何考えてんのよ、自分たら。あれは夢だっつーの。単に名前と顔と仕事だけが一致した部分予知夢、てだけでさ)
センチメンタルになりかけた自分を慌てて打ち消した。
教室に戻ると、例によって薔子の前の席のリア充イケメン優等生に、7.8名程のキラキラ男女が群がっていた。空気と同化したまま自分の席に着こうと思ったが、興奮して話している彼らの手や肘などが当たりそうだ。避け続けるのも面倒だ。昼休み終了まであと10分程ある。教師の机の上にある切り花でも整えよう、と思った。その付近には誰も居ないからだ。
今飾ってあるのは白い水仙が二本、黄水仙が一本の計三本だ。毎回、自らの通うラファエラ学園のちょうど裏側にある小さな花屋で買い物をしている。そこは古くからある個人の花屋で、白髪の上品な老女が店を切り盛りしているのだ。良い花が安く手に入るし、余計な会話をしなくて済むから楽だった。
他の美化委員は、学園の正門近くにあるお洒落な花屋で買っている人か殆どのようだ。そこは大手のチェーン店で、年若いイケメンスタッフや可愛らしい女性スタッフがいるらしい。薔子は苦手だった。キラキラと話しかけられると、地味な自分はアイスみたいに頭から溶けてしまうような気がして。
だから、本当は園芸部に興味があったのだが、そこの部員た地もなかなかのイケメンと美人さんの集まりで、しかも何組かカップルになっているらしく、眩しくて敬遠してしまったのだった。よって、どこの部活にも入らないでいる。
(そうそう、来栖志門先生もさ、夢だから平気で喋れたんだよね。普通なら、あんな超絶美形に話しかけられただけでまともに受け応え出来ないもん。それにしても、何で一部だけ予知夢……なんて見たのかしら)
昼休み終了五分前の予鈴がなる。皆バタバタと席に戻り始めた。薔子も席に戻る。
「うんうん、私、なんか相談に行こうかなー」
「あー! あたしも思ったー!」
休み時間、あちこちで女子達の黄色いざわめきが響き渡る。
「つーか奥さん居そうじゃね?」
「ま、彼女は居そうだよな、しかも何人も」
「タラシっぽくね?」
ややご機嫌斜めな男性陣たちの囁き声もこだまする。
(あーあ、やっぱり見た目良しなリア充と思われる転校生や転勤者は異性からは必要以上に期待され、同性からは煙たがられる。これは群衆心理の一つだわね)
薔子は庭作りの基礎の本を読みふけると見せかけ、周りの話に耳を傾けていた。庭師の仕事に興味があるのだ。卒業後は、寺本に弟子入りするのも悪くない、と半ば本気で思っていた。
ピンポンパンポン
臨時で連絡事項を伝える校内放送を伝えるチャイムが鳴る。教室内は静かになった。
「美化委員は、昼休み花壇①に集まって下さい。繰り返します。美化委員は、昼休み花壇①に集まって下さい。以上です」
館内放送が終わると、教室内は再び来栖志門の話題に花を咲かせた。美化委員は、自分たちにむかんけだからだ。
(昼休み花壇①か。ま、退屈な昼休みの時間潰れるしラッキーかな)
美化委員である薔子は秘かに思う。ちなみにこの委員というものは、新学期に図書委員や保健委員など希望者を募り、多い場合はジャンケンで決められた。美化委員はゴミ拾い等のイメージが強いせいか、誰もなり手が居なかったのだ。何処にも希望を出さなかった薔子が自然に美化委員となった、そんな経緯だ。
ガーデンシクラメン、フユサンゴ、マンリョウ、黄水仙等がセンス良く配列された花壇①。広さは八畳程であろうか。集まった生徒たちは、比較的真面目で大人しそうなタイプだ。
薔子は昼休み開始のチャイムが鳴ると、直ぐにこの場所にやってきた。そこは通称『中庭』とも呼ばれ、保健室とカウンセリングルームに隣接している。四季折々の花が楽しめるよう、主に園芸部が花壇②と共々手入れを任されていた。言わば癒しの場所なのである。
因みに、花壇②は校門近くと校庭の周りに設けられており、梅、桜、金木犀、椿、山茶花、木瓜《ぼけ》等の花木が植えられている全体を指す。
「1年A組から順に並んで」
三年女子の委員長が声をかける。皆、静かに従った。薔子は二年B組であるので、真ん中より少し前に並ぶ。
「来月分の花代を渡します。渡した分は使用して良しとしますが、各自出来るだけ節約して使うように。領収書を忘れずに貰ってくる事。今月分の花代と領収書は、冬休み前に回収します。また連絡します。受け取った人から解散して下さい」
テキパキと説明する委員長。薔子は思う。
(背が高くてスリムなモデル体型。眼鏡がよく似合う眼鏡美人さんよね。同じ眼鏡っ娘でもこうも違うとは……)
その時、ふと志門の事が思い浮かんだ。無意識にカウンセリングルームを見やる。窓が全開にされており、桜色のカーテンが風に揺らめいていた。5.6人程の女生徒達が彼を囲んでいた。皆、お洒落に余念がない可愛い子たちばかりだ。
(せめて同じ眼鏡っ娘でも、委員長くらい洗練された美人さんだったら……あのキラキラ女子の輪に入っても違和感無いだろうに……)
少しばかり胸が痛んだ。
(……て何考えてんのよ、自分たら。あれは夢だっつーの。単に名前と顔と仕事だけが一致した部分予知夢、てだけでさ)
センチメンタルになりかけた自分を慌てて打ち消した。
教室に戻ると、例によって薔子の前の席のリア充イケメン優等生に、7.8名程のキラキラ男女が群がっていた。空気と同化したまま自分の席に着こうと思ったが、興奮して話している彼らの手や肘などが当たりそうだ。避け続けるのも面倒だ。昼休み終了まであと10分程ある。教師の机の上にある切り花でも整えよう、と思った。その付近には誰も居ないからだ。
今飾ってあるのは白い水仙が二本、黄水仙が一本の計三本だ。毎回、自らの通うラファエラ学園のちょうど裏側にある小さな花屋で買い物をしている。そこは古くからある個人の花屋で、白髪の上品な老女が店を切り盛りしているのだ。良い花が安く手に入るし、余計な会話をしなくて済むから楽だった。
他の美化委員は、学園の正門近くにあるお洒落な花屋で買っている人か殆どのようだ。そこは大手のチェーン店で、年若いイケメンスタッフや可愛らしい女性スタッフがいるらしい。薔子は苦手だった。キラキラと話しかけられると、地味な自分はアイスみたいに頭から溶けてしまうような気がして。
だから、本当は園芸部に興味があったのだが、そこの部員た地もなかなかのイケメンと美人さんの集まりで、しかも何組かカップルになっているらしく、眩しくて敬遠してしまったのだった。よって、どこの部活にも入らないでいる。
(そうそう、来栖志門先生もさ、夢だから平気で喋れたんだよね。普通なら、あんな超絶美形に話しかけられただけでまともに受け応え出来ないもん。それにしても、何で一部だけ予知夢……なんて見たのかしら)
昼休み終了五分前の予鈴がなる。皆バタバタと席に戻り始めた。薔子も席に戻る。
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