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第三話

その男、異端につき……・その二

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「色々調べていて詳しいようであるが。実際のヴァンパイアから事実を説明しよう」

「それは楽しみです! 是非お願いします! あっ! しっかり覚えて置きたいので携帯に録音……は出来ないでしょうかね?」
(うわぁ、凄い貴重な夢だぁっ! しっかり覚えておかないと。本当に録音出来ればいいけど、夢だからなぁ……)

 薔子は嬉々としてテーブルに戻り、携帯を持って彼の前に立つ。

(……どうも調子が狂うなぁ)
 内心で彼は苦笑しつつ
「録音しても構わないが、ほんの少し人間の耳には不気味に聞こえるかもな。直接耳に響くような感じで録れると思うぞ」
「むしろ貴重なお声嬉しいです。ではでは、どうぞ!」

 薔子は携帯を操作して録音を始めた。

「あ、あぁ。では語るとしよう。……まず、ヴァンパイアは基本的に不死身だ。歳は取るが、人間の生き血を吸えば若返る。もし日光に当たって灰になっても、灰を集めて人間の血を注げば蘇る事が可能だ。この時、人間の生き血も方が望ましいが冷凍保存の血液でも問題はない。血液が不足していて弱っている時は、動物から、または仲間からの血でも生きる事が出来る」

「あ、それって人間で言えば冷凍食品とかレトルト食品みたいな感じになりますかね?」
「ん? あぁ、まぁそんな感じかな。後は種族によっては血液ではなく『運気』や『生命力』を吸う『エネルギーヴァンパイア』もいる。こっちは普通の人間にもその傾向のある者は少なく無い。あの人といると何故か疲れる、そんなタイプがエネルギーヴァンパイアな可能性もある。本物のエネルギーヴァンパイアも、一見普通の人間と変わらないから見つけるのは私達でも困難だ」

「うわっ……そっちの方が怖いかも……」

 薔子は自分の声が録音される事も気にせずに話に聞き入る。

「録音で思い出したが、ガラスや鏡には映らない。だが、三面鏡のメインの面以外のどこか、また場合によっては録画等に映り込む事は時たまある。それはその者が意図して映り込む場合がほとんどだ」

 薔子はなるほどなるほど、と頷きながらさり気なく部屋のガラスを見つめた。そして驚くと同時に少しだけ恐怖を覚える。

「どうした?」
「あ、いや……ガラスに映らない、て。普通に映っています。移ろうと意図されたのですか? えーと……」
「そうだな、肝心の名前を言って無かったな。失礼、私とした事が。ここでの名前は来栖志門《くるすしもん》だ。先程も申したが、私はヴァンパイアの一族でも異端者なのでな……」
「来栖志門、様……素敵」

 恍惚としてその名を反芻する薔子。

「あの、私の名前は名乗らない方が……? よく、自らの本名を人外の者に名乗ると魂が抜かれるとか、体を乗っ取られるとか聞きますけど……」
「その通りだ。それに私はそなたの名を知っているのでな。では、先を続けよう」
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