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第九十四話
花回廊・前編
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「それでは、どうぞごゆっくり。お部屋のものは全て自由にお使い頂いて大丈夫ですので。洗濯や入浴、食事などはこれまで通り四天王が日替わりでやらせて頂きますのでご安心を」
「ダニエルさん……」
「ダニエルで結構です」
「ではダニエル、有難うございます」
「いいえ、単に仕事の一環ですのでお気になさらず」
……あぁ、そういや蛍光縦ロール頭の青い頭の方の名前も、何とかエルって名前だったな。同名だったかな……
ぼんやりとそんな事を思いながら、ダニエルが部屋を出て行くのを見送った。ん……あぁ、確か蛍光ブルー頭はナサニエル、だったかな。まぁ、どうでもいいか。
早速移動した俺専用の部屋とやらは、すぐその場で瞬間移動、それで終わった。元々俺自身の持ち物は、ペンダントとサークレット、アンクレット、そしてフォルスしか無かったし。それらは全て身につけていたから。だから光に包まれたと感じて瞬き三回ほどで到着。すぐにダニエルは素っ気なく去って行った、という流れだ。
ぼんやりと辺りを見渡す。ここの場所がどこなのかはよく分からないけれど、部屋は……広い。三十畳くらいありそうだ。部屋というか、全体が魔力で作られた森の中の花薗……とでも表現出来ようか? 樹木も花々も、土壌や気候、季節無関係のようだから。
部屋の周りは壁のようにトネリコやバオバブ、樫の木で隙間なく覆い尽くされ、天井はそれらの木々の枝や葉で埋め尽くされている。樹木にはノウセンカズラがお洒落に絡みつき、窓は、木々の枝の隙間を利用して、恐らく東と西に一つずつ作られていた。床はというと、フローリングだ。壁に沿うように、紫色のアヤメや白い水仙、青い紫陽花や向日葵などが咲き誇っている。入り口右側に……天井に届きそう赤のタチアオイで囲まれた小部屋がある。そこがトイレと洗面所、風呂場らしい。どれも樹木で出来ているようだ。
ベッドは部屋の奥に、やはり大人四人はゴロゴロ出来そうなデカいのがあった。ベッドの周りを、同じく天井に届きそうな程背丈のある青いタチアオイが囲み、天井には藤棚が設けられ、見事な藤が垂れ下がっている。そうえば電気は? と天井を再度見上げると、純白の藤の花房がシャンデリアのように下がっていた。これに明かりが灯れば、幻想的な雰囲気になりそうだ。
左の窓辺に、丸太で作られた椅子と机があり、机にはノート型パソコンが置かれている。べッドの左隣には丸太で出来たテーブルに、蓬で出来たソファーがあった。奥の壁にはテレビがあって、ちょっとした応接間になっているようだ。
部屋の香りは、藤の花の甘さと蓬の清々しさが程よく混じり合って、穏やかに室内を漂っている。だから決して眠気を催したり思考力が鈍る訳ではない筈はなのに、ボーッとしてしまうのは何故だろう? 滞在期間が無期限延長とか、熟考すべき事があるのに全てが億劫に感じてしまう。何よりも、つい先ほどの王子との再会が遠い昔のように感じる。おかしい、何かが。
そうだ! フォルスとアグラの盾のペンダントの守護神たちに相談すれば……駄目だ、眠い。少し仮眠を取ってからにしよう……。
フラフラとベッドを目指した。タチアオイを分け入って、練乳ミルク色のフカフカのベッドに身を投げ出す。周りを囲むタチアオイは三重程あって、こうして寝転んで見ると……何だか花の回廊……みたいだ……
「ダニエルさん……」
「ダニエルで結構です」
「ではダニエル、有難うございます」
「いいえ、単に仕事の一環ですのでお気になさらず」
……あぁ、そういや蛍光縦ロール頭の青い頭の方の名前も、何とかエルって名前だったな。同名だったかな……
ぼんやりとそんな事を思いながら、ダニエルが部屋を出て行くのを見送った。ん……あぁ、確か蛍光ブルー頭はナサニエル、だったかな。まぁ、どうでもいいか。
早速移動した俺専用の部屋とやらは、すぐその場で瞬間移動、それで終わった。元々俺自身の持ち物は、ペンダントとサークレット、アンクレット、そしてフォルスしか無かったし。それらは全て身につけていたから。だから光に包まれたと感じて瞬き三回ほどで到着。すぐにダニエルは素っ気なく去って行った、という流れだ。
ぼんやりと辺りを見渡す。ここの場所がどこなのかはよく分からないけれど、部屋は……広い。三十畳くらいありそうだ。部屋というか、全体が魔力で作られた森の中の花薗……とでも表現出来ようか? 樹木も花々も、土壌や気候、季節無関係のようだから。
部屋の周りは壁のようにトネリコやバオバブ、樫の木で隙間なく覆い尽くされ、天井はそれらの木々の枝や葉で埋め尽くされている。樹木にはノウセンカズラがお洒落に絡みつき、窓は、木々の枝の隙間を利用して、恐らく東と西に一つずつ作られていた。床はというと、フローリングだ。壁に沿うように、紫色のアヤメや白い水仙、青い紫陽花や向日葵などが咲き誇っている。入り口右側に……天井に届きそう赤のタチアオイで囲まれた小部屋がある。そこがトイレと洗面所、風呂場らしい。どれも樹木で出来ているようだ。
ベッドは部屋の奥に、やはり大人四人はゴロゴロ出来そうなデカいのがあった。ベッドの周りを、同じく天井に届きそうな程背丈のある青いタチアオイが囲み、天井には藤棚が設けられ、見事な藤が垂れ下がっている。そうえば電気は? と天井を再度見上げると、純白の藤の花房がシャンデリアのように下がっていた。これに明かりが灯れば、幻想的な雰囲気になりそうだ。
左の窓辺に、丸太で作られた椅子と机があり、机にはノート型パソコンが置かれている。べッドの左隣には丸太で出来たテーブルに、蓬で出来たソファーがあった。奥の壁にはテレビがあって、ちょっとした応接間になっているようだ。
部屋の香りは、藤の花の甘さと蓬の清々しさが程よく混じり合って、穏やかに室内を漂っている。だから決して眠気を催したり思考力が鈍る訳ではない筈はなのに、ボーッとしてしまうのは何故だろう? 滞在期間が無期限延長とか、熟考すべき事があるのに全てが億劫に感じてしまう。何よりも、つい先ほどの王子との再会が遠い昔のように感じる。おかしい、何かが。
そうだ! フォルスとアグラの盾のペンダントの守護神たちに相談すれば……駄目だ、眠い。少し仮眠を取ってからにしよう……。
フラフラとベッドを目指した。タチアオイを分け入って、練乳ミルク色のフカフカのベッドに身を投げ出す。周りを囲むタチアオイは三重程あって、こうして寝転んで見ると……何だか花の回廊……みたいだ……
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