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第六十九話
ついに、憧れの『チート能力』は手に入れたけれど……
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意味が分かると、感激したように頬を紅潮させ瞳を潤ませるレオとノア。そんなに嬉しがってくれるなんて……俺の方が有り難いよ。
「レオナード、ノア。万が一の時は、任せたぞ」
一人一人名前を呼んでその瞳をしっかりと見つめながら語りかける。二人は顔を見合わせ頷き合うと、
「「は、はい! お任せ下さい!」」
と勢い込んでほぼ同時にこたえた。さぁ、偉そうに言ったからには全力でぶつからないと、だな。
「さて、戦闘中はタイムオーバー寸前まで踏ん張るとしよう。……という事で宜しくな、リアン。そして火の精霊と風の精霊、宜しく頼む」
と、いつでも準備OKな琴を意思表示してみせる。
「承知しました。では、こちらも相応の力で参りましょう」
リアンはそう言って模造刀を構えた。レオとノアはサッと離れて後方に控える。火の精霊は首を下げると纏っていた炎の一欠片を、風の精霊は右の翼を広げて一枚の羽を俺にめがけて送りこむ。先程と同じように炎は胸に、羽は額に吸い込まれていった。
冷たく感じるくらい、頭が冴え渡る。全身に力が漲り、瞬時に剣を抜きリアンに切り掛かった。何度か切り結び合うが、たちまちリアンが押され気味となる。勝手に体が動くままにさせているだけだが、酷く体が軽い。
ガキーン、という音と共にリアンの剣が後方へと飛んだ。同時に剣先をリアンの喉元に突き付けている俺。確実にさっきよりも体が動きについていけているようだ。鍛錬次第ではもっと強くそして素早く戦えるようになれるかもしれない。
「一瞬で勝負ありましたね」
と言うリアンの声を聞きながら、突如として息が詰まった。剣を取り落とすとガクリと膝をついて胸を掻きむしる。肺が悲鳴をあげるかのようにヒューヒューゼ―ゼ―鳴り始めた。息を吸う事も吐く事も叶わず、それでも僅かでも空気を取り込もうともがく。想像を絶する苦しさに意識が飛びそうだ。倒れ込む前に、リアンが俺の肩を支えた。
『スマヌ、時間切レニツキコレ以上留マル事ハ不可能ダ』
精霊達はそう言い残して空気に溶け込むようにして消えた。
「「惟光様っ!」」
レオとノアがすぐさま瞬間移動して左右に控えた。ノアは俺の後方に移動し、背中に手を添える。レオは右手をあげ、俺の胸に手の平を翳した。レオの手の平から、パステルグリーンの光が溢れ出す。その光ごと手の平を胸にあてると、少しずつ空気が取り込めるようになってきた。ノアが魔術を施してくれているであろう背中は、じんわりとあたたかくなって行く。
次第に息を吐き出す事が出来るようになっていき、呼吸はゆっくりと確実に回復していった。
「有難う、助かったよ。ノア、レオナード、凄いな、二人の回復魔法は」
程なくして落ち着きを取り戻し、礼を述べながら二人に微笑みかける。すぐに頬を染め、どきまぎしたようにしどろもどろになる二人が本当に可愛らしい。
「い、いえ。お役に立てまして光栄に存じます」
「そ、その通りにございます」
レオ、ノア。有難うな。続いて、ずっと肩を支えてくれているリアンに顔を向けて礼を述べる。
「リアン、有難うな」
「いいえ、当然の事をしたまでです」
右人差し指を眼鏡のエッジに当てながら、冷静に受けごたえするリアン。
「あなたが耐えられる時間は40秒切っていました。やはり精霊たちの示した通り35秒、というところでしょう」
「そうか。その35秒でケリをつけ、身の安全の確保まで持っていかないと……か」
「ええ、そういう事になりますね」
あーぁ、せっかく憧れだった『チート能力』を手に入れたのに、時間切れと同時に精霊たちも消えちまうとはなぁ。……この力、役に立つのか?
「レオナード、ノア。万が一の時は、任せたぞ」
一人一人名前を呼んでその瞳をしっかりと見つめながら語りかける。二人は顔を見合わせ頷き合うと、
「「は、はい! お任せ下さい!」」
と勢い込んでほぼ同時にこたえた。さぁ、偉そうに言ったからには全力でぶつからないと、だな。
「さて、戦闘中はタイムオーバー寸前まで踏ん張るとしよう。……という事で宜しくな、リアン。そして火の精霊と風の精霊、宜しく頼む」
と、いつでも準備OKな琴を意思表示してみせる。
「承知しました。では、こちらも相応の力で参りましょう」
リアンはそう言って模造刀を構えた。レオとノアはサッと離れて後方に控える。火の精霊は首を下げると纏っていた炎の一欠片を、風の精霊は右の翼を広げて一枚の羽を俺にめがけて送りこむ。先程と同じように炎は胸に、羽は額に吸い込まれていった。
冷たく感じるくらい、頭が冴え渡る。全身に力が漲り、瞬時に剣を抜きリアンに切り掛かった。何度か切り結び合うが、たちまちリアンが押され気味となる。勝手に体が動くままにさせているだけだが、酷く体が軽い。
ガキーン、という音と共にリアンの剣が後方へと飛んだ。同時に剣先をリアンの喉元に突き付けている俺。確実にさっきよりも体が動きについていけているようだ。鍛錬次第ではもっと強くそして素早く戦えるようになれるかもしれない。
「一瞬で勝負ありましたね」
と言うリアンの声を聞きながら、突如として息が詰まった。剣を取り落とすとガクリと膝をついて胸を掻きむしる。肺が悲鳴をあげるかのようにヒューヒューゼ―ゼ―鳴り始めた。息を吸う事も吐く事も叶わず、それでも僅かでも空気を取り込もうともがく。想像を絶する苦しさに意識が飛びそうだ。倒れ込む前に、リアンが俺の肩を支えた。
『スマヌ、時間切レニツキコレ以上留マル事ハ不可能ダ』
精霊達はそう言い残して空気に溶け込むようにして消えた。
「「惟光様っ!」」
レオとノアがすぐさま瞬間移動して左右に控えた。ノアは俺の後方に移動し、背中に手を添える。レオは右手をあげ、俺の胸に手の平を翳した。レオの手の平から、パステルグリーンの光が溢れ出す。その光ごと手の平を胸にあてると、少しずつ空気が取り込めるようになってきた。ノアが魔術を施してくれているであろう背中は、じんわりとあたたかくなって行く。
次第に息を吐き出す事が出来るようになっていき、呼吸はゆっくりと確実に回復していった。
「有難う、助かったよ。ノア、レオナード、凄いな、二人の回復魔法は」
程なくして落ち着きを取り戻し、礼を述べながら二人に微笑みかける。すぐに頬を染め、どきまぎしたようにしどろもどろになる二人が本当に可愛らしい。
「い、いえ。お役に立てまして光栄に存じます」
「そ、その通りにございます」
レオ、ノア。有難うな。続いて、ずっと肩を支えてくれているリアンに顔を向けて礼を述べる。
「リアン、有難うな」
「いいえ、当然の事をしたまでです」
右人差し指を眼鏡のエッジに当てながら、冷静に受けごたえするリアン。
「あなたが耐えられる時間は40秒切っていました。やはり精霊たちの示した通り35秒、というところでしょう」
「そうか。その35秒でケリをつけ、身の安全の確保まで持っていかないと……か」
「ええ、そういう事になりますね」
あーぁ、せっかく憧れだった『チート能力』を手に入れたのに、時間切れと同時に精霊たちも消えちまうとはなぁ。……この力、役に立つのか?
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