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第六十二話
攻撃は最大の防御となり得るか?!
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シルエットの為、瞳はどんな感じなのか不明ではあるが黒龍と光りの天使が、王子と睨み合っているのは間違いないと思う。水を打ったように静まり返った中、両者の睨み合いが続く。固唾をのんで見守りながらも、俺も気もちだけでもしっかりせねばと黒龍と光の天使を見据えた。
「『攻撃は最大の防御なり』という言葉があるな?」
沈黙を切り裂く鋭い声。フルートの音色を彷彿とさせる。いささか威圧的とも取れる王子。
「主ガ窮地二陥ッタ際二、先手ヲ打ッテ攻撃ヲ仕掛ケロトイウ事カ?」
黒龍はすげなくそう答える。王子は不敵な笑みを浮かべた。
「あぁ、話が早くて助かる」
「更二言エバ、攻撃ヲ仕掛ケテイル間二主ヲ安全ナ場所迄誘導シロ、ト?」
光の天使が冷たく遮るようにして口を開く。王子は不敵な笑みを浮かべたまま光の天使を見据える。
「あぁ、その通りだ。それだけ数が揃っているのだ。攻撃に向く者、防御に向く者と効率よく手分けも出来るだろうしな」
いつも穏やかで微笑みを絶やさない王子しか見ていないから驚かされる。攻撃的な王子は一度王太子殿下の時で一度見ていたが。高圧的な態度で相手を制するように振る舞うのは初めてだ。瞳の色はコバルトブルーに移り変わり、冷たい光を湛えている。そんな王子も素敵だ……なんて見惚れてる場合じゃねーぞ俺。王子は俺の為に交渉しようとして下さってるのに!
「ソレハ『ソウセヨ』トイウ意味カ? ソレガ、モノヲ頼ム時ノ態度カ?」
黒龍は不機嫌そうに言う。
「同感ダ。オ願イスルナラソレナリノ態度ヲ取ルベキデアロウ」
すぐさま光の天使が同意を示す。俺、このまま傍観していていいのか? そもそも、俺の問題なのに……
「いや、お願いじゃなくて単なる『提案』だ」
王子は相変わらず不敵な笑みを浮かべたまま応じる。
「何?!」
「仮にお願いしてみたところで、態度を軟化させるつもりもないだろう?」
王子は気色ばむ黒龍を冷酷に遮った。再び、重苦しい沈黙が走る。俺、力を貸してください! て前に出た方が良いんじゃないだろうか? もう、息切れも治まったし。
……そのまま静かにそうしていて下さい。王子に任せて……
そのとき、リアンの声が脳に響いた。以心伝心だ。
……分かった……
心の中で答える。リアンの一言で、理解した。余計な事はせず、今は王子に任せるべき時なのだ。
「口ヲ慎メ! 貴様、我ラノ召喚主デモナイノ二無礼デアロウ!」
黒龍は声を荒げ、王子に向かって頭を伸ばそうとする。その瞬間、光の天使が右手で軽く制した。
「確カニ、ソナタノ言ウ通リダ。シカシ攻撃ト防御ヲ同時二トナルト、召喚主二多大ナ負担ガ掛カル。状況二ヨッテハ命ノ危険モ考エラレル。故二、我々ハ慎重二ナラザルヲ得ナイノダ」
光の天使は説得するように告げた。すべては俺の体力次第、て事か……。ピンチに陥って助かる為に精霊たちを召還しても命の危機って……。それって、『絶体絶命』てやつじゃねーか!
「分かった。では、後日本人に直接交渉させよう。手間を取らせた、有難う」
王子は表情を和らげ、穏やかに答えた。
……そのままの姿勢で良いので威厳を保ったまま、精霊たちにお礼と、後日再び呼び出す事を伝えてください……
リアンからの以心伝心が脳に響く。
「皆、初めてにも関わらず集まってくれて有難う。これから宜しくな! 後日、また呼び出す事になると思うけどその時は宜しく頼む」
と声を張った。
『承知!』『御意!』『仰せのままに』など、精霊たちは口々に答えると風に溶けるようにして消えた。冷たい風が、俺たちの髪を揺らす。
「さて、惟光。念の為護身の技を身に着けようか。それと、今後について話し合おう」
と王子は微笑んだ。
「『攻撃は最大の防御なり』という言葉があるな?」
沈黙を切り裂く鋭い声。フルートの音色を彷彿とさせる。いささか威圧的とも取れる王子。
「主ガ窮地二陥ッタ際二、先手ヲ打ッテ攻撃ヲ仕掛ケロトイウ事カ?」
黒龍はすげなくそう答える。王子は不敵な笑みを浮かべた。
「あぁ、話が早くて助かる」
「更二言エバ、攻撃ヲ仕掛ケテイル間二主ヲ安全ナ場所迄誘導シロ、ト?」
光の天使が冷たく遮るようにして口を開く。王子は不敵な笑みを浮かべたまま光の天使を見据える。
「あぁ、その通りだ。それだけ数が揃っているのだ。攻撃に向く者、防御に向く者と効率よく手分けも出来るだろうしな」
いつも穏やかで微笑みを絶やさない王子しか見ていないから驚かされる。攻撃的な王子は一度王太子殿下の時で一度見ていたが。高圧的な態度で相手を制するように振る舞うのは初めてだ。瞳の色はコバルトブルーに移り変わり、冷たい光を湛えている。そんな王子も素敵だ……なんて見惚れてる場合じゃねーぞ俺。王子は俺の為に交渉しようとして下さってるのに!
「ソレハ『ソウセヨ』トイウ意味カ? ソレガ、モノヲ頼ム時ノ態度カ?」
黒龍は不機嫌そうに言う。
「同感ダ。オ願イスルナラソレナリノ態度ヲ取ルベキデアロウ」
すぐさま光の天使が同意を示す。俺、このまま傍観していていいのか? そもそも、俺の問題なのに……
「いや、お願いじゃなくて単なる『提案』だ」
王子は相変わらず不敵な笑みを浮かべたまま応じる。
「何?!」
「仮にお願いしてみたところで、態度を軟化させるつもりもないだろう?」
王子は気色ばむ黒龍を冷酷に遮った。再び、重苦しい沈黙が走る。俺、力を貸してください! て前に出た方が良いんじゃないだろうか? もう、息切れも治まったし。
……そのまま静かにそうしていて下さい。王子に任せて……
そのとき、リアンの声が脳に響いた。以心伝心だ。
……分かった……
心の中で答える。リアンの一言で、理解した。余計な事はせず、今は王子に任せるべき時なのだ。
「口ヲ慎メ! 貴様、我ラノ召喚主デモナイノ二無礼デアロウ!」
黒龍は声を荒げ、王子に向かって頭を伸ばそうとする。その瞬間、光の天使が右手で軽く制した。
「確カニ、ソナタノ言ウ通リダ。シカシ攻撃ト防御ヲ同時二トナルト、召喚主二多大ナ負担ガ掛カル。状況二ヨッテハ命ノ危険モ考エラレル。故二、我々ハ慎重二ナラザルヲ得ナイノダ」
光の天使は説得するように告げた。すべては俺の体力次第、て事か……。ピンチに陥って助かる為に精霊たちを召還しても命の危機って……。それって、『絶体絶命』てやつじゃねーか!
「分かった。では、後日本人に直接交渉させよう。手間を取らせた、有難う」
王子は表情を和らげ、穏やかに答えた。
……そのままの姿勢で良いので威厳を保ったまま、精霊たちにお礼と、後日再び呼び出す事を伝えてください……
リアンからの以心伝心が脳に響く。
「皆、初めてにも関わらず集まってくれて有難う。これから宜しくな! 後日、また呼び出す事になると思うけどその時は宜しく頼む」
と声を張った。
『承知!』『御意!』『仰せのままに』など、精霊たちは口々に答えると風に溶けるようにして消えた。冷たい風が、俺たちの髪を揺らす。
「さて、惟光。念の為護身の技を身に着けようか。それと、今後について話し合おう」
と王子は微笑んだ。
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