その男、有能につき……

大和撫子

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第五十六話

俺とフォルスと魔術習得???・中編

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 リアンは言った。

「たまたま近くに寄ったもので。丁度、夕方まで時間が空きましたし、ふと気になりましてね。何かご入用な物などございませんか?」

 おっ! これはフォルス、やっぱりお前の力なのか? まぁ、早計は良くない、事の真実を見失う。ゆっくり行けば良いさ。

「いや、何の不便も感じていないです。ただ、聞いてみようかな……と思った事が今丁度出てきまして」

 取りあえず、正直に答えておこう。本当に魔物系と縁が切れているか確かめられるかもしれないしな。

「どうかなさいましたか? 何やら魔術関連の本をご覧になってらっしゃるようですが……」

 だはは、別に意図した訳じゃないけどテーブルに置いてあったらすぐ分かるよぁ。

「はい、たまにはゆっくりと読書でも……と本棚を拝見していたところ、魔術関連の本が沢山あったので。どんな仕組みになっているのか興味が出て来まして」

 魔術辞典の三巻を借りたのはブレスレットに関するからで……と続けようとしたけど、程よいところで話を切った。心に疚しい事がある者は、やたら饒舌になり聞かれても居ない事までペラペラとしゃべる、て言う言葉を思い出したからだ。ま、別に疚しい事ではないんだけどさ。

「ふむ、なるほど。まさに今朝方、殿下とお話しをしていた際『だいぶ体調も落ち着いてきたみたいだし、そろそろ魔術の基礎を教えても良いかもだね』とおっしゃっていたのですよ。ちょうど良い機会かもしれませんね」

 マジか! いいタイミングじゃないか! もしかして本当にフォルスの力だったりして。このチャンスを逃す手はねーぜ。

「それは願ったり叶ったりです。スケジュールはお任せしますので是非、教えてくださいませんか?」
「承知しました。早急に考えてみましょう。明日、殿下が御公務兼静養で水命界に訪問されるので、あなたもどうだろうか? と話していたところだったのですよ。水命界は浄化やインスピレーション、再生や新しい誕生、生み出す力などを司る国ですから、魔術を習い始めるのに丁度良いですしね。決まり次第、お知らせしますね」

 うわぁ、凄いタイミングだ!

「宜しくお願いします」
「まぁ、魔術のコツはイメージ力ですから、小説を書かれていらっしゃった惟光様でしたら、案外すぐにマスター出来るかもしれませんよ?」

 魔術のコツはイメージ力、央雅も言ってたなぁ。でもなぁ……物書きはアマチュアで趣味、その程度だったからなぁ。

「いやいや、その辺りは何とも……確か、この世界では基本的な魔術は使えるのが一般的で。仮に使えなかったとしても戦闘向きとかヒーリング向きとか、何かしら特化しているものがある、とされているのでしたね?」
「ええ、この世界の特徴で。そういう点では、あなたの居た世界よりも分かり易い仕組みとなっていますね」
「……転移した自分の場合はどれも向いてない場合もありそうで、ちょっと不安ではありますねぇ」

 リアンは右手人差し指をエッジに当てながら言った。

「何をおっしゃいますか! 殿下と私があなたの得意分野を活かした最高の仕事を考え出したというのに。ご自分がまだまだ無限の可能性を秘めてるのをお忘れなく」

 そうだ! 俺、せっかく殿下とリアンが考えて下さっているのに……。知らず知らずの内に、欲張りになって傲慢になりつつあったかもしれん。気をつけないと、だな。

「すみません、せっかく色々考えて下さっているのに……」
「いいえ、気になさらないでください。ご自分のお気持ちを素直に話して頂けるようになってう嬉しいですよ。良い傾向です。さて、魔術関連の本をご覧頂いて、何か疑問点とkございましたか? 簡単な基礎に関する事でしたらせっかくですからおこたえしますよ」

 せっかくだから、聞いてみようかな……

「有り難うこざいます。では早速……素朴な疑問なのですが、魔術を行う際の呪文……詠唱と魔術名を言うのは、言わない場合に比べると威力に違いがあるのでしょうか?」

「例えばそれが、殆ど誰もが出来るごく簡単な魔術でしたら、詠唱も魔術名も省略して構いません。唱えているよりやってしまった方が早いですしね。中等度以上の魔術となると、詠唱と魔術名を唱えた方が威力が強くなります。余程の使い手ですけどね、詠唱も魔術名も唱える必要はないのは。滅多にいませんね。因みに、無言よりも魔術名だけでも唱えた方が威力は増します。詠唱をすれば更に威力は増します」

「なるほど。では、まっさらな魔術アイテムがあったとしたら、呪文や魔術名は自分で考える事は可能なのですか?」
「ええ、それはご自分だけの秘術となりますから、可能ですね」
「呪文は簡単なものでも大丈夫なのでしょうか?」

「問題ありませんよ。ただ、高度になるにつれ複雑に長い詠唱なるのは、唱えている間の精神統一や、他者にすぐ模倣されたり呪文でどんな魔術をかけようとしているのかを察知させない目的もあるのですよ」

「へぇー!?!」

 目から鱗だ! 同時に物凄く俯に落ちた。たまたま膝の上に乗せていた魔術辞典に右手が当たって数ページがめくれる。

「有難うございます。ちょうど、読んでいて疑問に感じたので」

 開かれたページは、偶然にも『ますは魔術名を考えてみよう!』という見出しだった。フォルス、お前が力を貸してくれたのか? そうであっても無くても、ありがとな。

「なるほど、そのブレスレットとについて調べようと。……何があったのかは詮索しませんが、今はそのブレス……邪悪な感じは受けませんし、魔術取得にちょうど良いかもしれませんね。あなただけの秘術と、秘術アイテムを創るのも」

 リアンは再び右手人差し指を眼鏡のエッジに当てた。眼鏡の右縁がキラリと光る。もしや、ついに……『チートスキル』が手に入るのか?!
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