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第四十二話
ついに「魔術アイテム」ゲットなるか?! 前編
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どんなに怒号が飛び交っても、メフィストフェレスは口元を綻ばせたままだ。そう言えばセディは大人しいけど……と、すやすや眠っていた。道理で少し重くなったと思ったら。無条件で愛されると信じて、疑う必要がないほど沢山愛されて育ってるんだな。何となく、弟を姿が重なった。
「俺も賛成だな」
それまで仁王立ちとなってあれから黙ったままだったバフォメットが声を張り上げた。皆シーンと静まり返る。歴史は浅いとは言え、仲間内では一目置かれている存在なんだろうな。
「あのアイテムは、『偶然を味方につける』という代物だ。どの道人間どもに扱えるアイテムじゃねーよ。ただ、これを手に入れた人間は偶然を必然に持って行こうと悪事を働こうとする事が予測される。或いは、偶然なんて神だって操作出来る筈ないから、たまたまラッキーな事が起こる事により欲にまみれて荒んでいったりな。そうやって、自滅していく事を誘う事が狙いのアイテムだ。つまり、本当に純粋で無欲の願い事しか偶然という幸運は発動しないアイテムなんだ。そこへ来るとコイツは驚くべきほど無欲だ。だったらコイツにくれてやって、その代わりにこの度の件は他言無用、ただ異界に一時期身を置いたと伝える程度にして貰う。至って合理的じゃねーかよ。まさに、物質界の人間どもの言うwinーwinの関係ってやつさ」
とバフォメットは続けた。
「賛同して頂けて光栄に存じます。そうなのですよ。あなたが説明してくださった理由そのままでございます」
メフィストフェレスはバフォメットの方と向いて片足を引き、丁寧に頭を下げた。
「フン、別に貴様に賛同した訳じゃねーよ」
「ええ、勿論存じ上げております」
「フン」
「クスッ」
うーん? 仲良いんだか悪いんだかわかんない二体だなぁ。でも、突破口は見えて来たか? アイテム、貰えるんだろうか……何だか難しそうなアイテムだけど。
「……でも、アイテムの事は何て伝えさせるのさ? あっちは物質界より魂のランクが上の世界じゃん。それに、ここの事を言わなかったとしても、心の中を視ようと思えば視える術は持ってるんじゃないの? この子とつるんでる一族は特にさぁ」
リリスが座ったまま不服そうに声をあげる。メフィストフェレスはリリスに体を向けた。
「それについては、心配いりません。アイテムはこちらの世界に来た際、偶然我らの子供が迷っていたのを助けてそのお礼に貰った、という事にでもして頂きましょう。そしてアイテムとこちらの世界に関する全ての事は、悟られないように魔術をかけさせて頂けば良いのですよ」
え? 魔術をかける?
「そんな回りくどい事しないで、ここに関する記憶を封じちゃえば簡単じゃない」
「それだといつか何かの拍子に思い出す可能性があります。そうなると、いくら秘密にしていても心を読まれる可能性がある。だからここに関する全ては記憶に残しおいた方が良いのですよ」
リリスとメフィストフェレスがやり取りをしている中、山羊男は未だ燃え盛る炎へと向かった。そして炎に翳すように両手を上に上げる。すると炎がサーッと消え、ブロンズ色の祭壇らしきものが姿を現した。何だか俺、大変な取引に応じようとしてるんじゃ……。これ、明らかにこのアイテムやるからお前秘密厳守しろよ、アイテムを通して監視するからな、て意味……だよなぁ。今更のように恐怖を実感した。だけど、もう後には引けない。
山羊男は祭壇の前に立つと、丁寧に頭を下げた。そして祭壇の中央部分に両手を伸ばし、そこに祀られている灰色っぽい何かを取った。誰も彼もが山羊男に注目している。山羊男は踵を返すとスタスタと俺の方に向かって来た。うわ、何だか緊張してきた。喉はカラカラで鼓動の激しさでセディが起きちゃうんじゃないかと焦る。脇や背中を、嫌な汗が伝う。魔物たちの視線が痛い。けれども、近づく山羊男から目を反らす訳には行かない。ついに、山羊男が目の前に立った。
改めて見ると、背は二メートルは超えていそうだ。体毛も山羊そのまんまだ。ガラス玉みたいな濃い灰色の目は生気がまるで感じられない。本物の山羊を使った着ぐるみみたいな印象だ。中に人が入ってるんじゃないだろうか……。そんな錯覚を覚えさせるほどだ。
「俺も賛成だな」
それまで仁王立ちとなってあれから黙ったままだったバフォメットが声を張り上げた。皆シーンと静まり返る。歴史は浅いとは言え、仲間内では一目置かれている存在なんだろうな。
「あのアイテムは、『偶然を味方につける』という代物だ。どの道人間どもに扱えるアイテムじゃねーよ。ただ、これを手に入れた人間は偶然を必然に持って行こうと悪事を働こうとする事が予測される。或いは、偶然なんて神だって操作出来る筈ないから、たまたまラッキーな事が起こる事により欲にまみれて荒んでいったりな。そうやって、自滅していく事を誘う事が狙いのアイテムだ。つまり、本当に純粋で無欲の願い事しか偶然という幸運は発動しないアイテムなんだ。そこへ来るとコイツは驚くべきほど無欲だ。だったらコイツにくれてやって、その代わりにこの度の件は他言無用、ただ異界に一時期身を置いたと伝える程度にして貰う。至って合理的じゃねーかよ。まさに、物質界の人間どもの言うwinーwinの関係ってやつさ」
とバフォメットは続けた。
「賛同して頂けて光栄に存じます。そうなのですよ。あなたが説明してくださった理由そのままでございます」
メフィストフェレスはバフォメットの方と向いて片足を引き、丁寧に頭を下げた。
「フン、別に貴様に賛同した訳じゃねーよ」
「ええ、勿論存じ上げております」
「フン」
「クスッ」
うーん? 仲良いんだか悪いんだかわかんない二体だなぁ。でも、突破口は見えて来たか? アイテム、貰えるんだろうか……何だか難しそうなアイテムだけど。
「……でも、アイテムの事は何て伝えさせるのさ? あっちは物質界より魂のランクが上の世界じゃん。それに、ここの事を言わなかったとしても、心の中を視ようと思えば視える術は持ってるんじゃないの? この子とつるんでる一族は特にさぁ」
リリスが座ったまま不服そうに声をあげる。メフィストフェレスはリリスに体を向けた。
「それについては、心配いりません。アイテムはこちらの世界に来た際、偶然我らの子供が迷っていたのを助けてそのお礼に貰った、という事にでもして頂きましょう。そしてアイテムとこちらの世界に関する全ての事は、悟られないように魔術をかけさせて頂けば良いのですよ」
え? 魔術をかける?
「そんな回りくどい事しないで、ここに関する記憶を封じちゃえば簡単じゃない」
「それだといつか何かの拍子に思い出す可能性があります。そうなると、いくら秘密にしていても心を読まれる可能性がある。だからここに関する全ては記憶に残しおいた方が良いのですよ」
リリスとメフィストフェレスがやり取りをしている中、山羊男は未だ燃え盛る炎へと向かった。そして炎に翳すように両手を上に上げる。すると炎がサーッと消え、ブロンズ色の祭壇らしきものが姿を現した。何だか俺、大変な取引に応じようとしてるんじゃ……。これ、明らかにこのアイテムやるからお前秘密厳守しろよ、アイテムを通して監視するからな、て意味……だよなぁ。今更のように恐怖を実感した。だけど、もう後には引けない。
山羊男は祭壇の前に立つと、丁寧に頭を下げた。そして祭壇の中央部分に両手を伸ばし、そこに祀られている灰色っぽい何かを取った。誰も彼もが山羊男に注目している。山羊男は踵を返すとスタスタと俺の方に向かって来た。うわ、何だか緊張してきた。喉はカラカラで鼓動の激しさでセディが起きちゃうんじゃないかと焦る。脇や背中を、嫌な汗が伝う。魔物たちの視線が痛い。けれども、近づく山羊男から目を反らす訳には行かない。ついに、山羊男が目の前に立った。
改めて見ると、背は二メートルは超えていそうだ。体毛も山羊そのまんまだ。ガラス玉みたいな濃い灰色の目は生気がまるで感じられない。本物の山羊を使った着ぐるみみたいな印象だ。中に人が入ってるんじゃないだろうか……。そんな錯覚を覚えさせるほどだ。
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