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第十五話
Aurora tearsの誓い
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なんだかとても満ち足りた気もちで目を覚ました。至福の夢を見たからだ。今でも残っている。王子の馥郁たる香り、甘い囁き、そして優しい感触。何よりもその言葉が非常にリアルに耳に残っていた。
……初めて見た時もそう思ったけど、君は本当に思いやり深くて優しいんだね。自分の事よりもまず他人を思いやれる。それも見返りを期待したり自分の損得で動いたりしない、本当に純粋な思いだ。滅多にできる事じゃないよ。物質界でも、ここの世界でも……
この性格……そんな風に褒めて貰えたの、生まれて初めてだ。俺のそういうところ、男女を問わず家族にも友達にも、
『惟光って男の癖に優柔不断だよね』
『事無かれ主義って結局は八方美人で信用出来ない』
『惟光って自分てものが無いし流され易いよね、男の癖にさ』
『そうまでして人に嫌われたくないんか。情けねー奴だな』
何か揉め事があるとそんな風に直接言われたり、陰口叩かれたりしたもんだったな。大体において、陰口って意外と本人の耳に入り易かったりするんだよな。たまたま聞いちまったり、送信先間違えて俺のところに送っちまった、とかな。まぁ、わざとなのも居るんだろうけど。あとはさ、わざわざ『あいつこんな事言ってたぜ』なんて親切ぶって教えて来る奴居たりさ。そういう事平気で耳に入れて来る奴こそ信用出来ないけどな。実は他人に濡れ衣着せてソイツ本人が言ってる事だったりな。
欠点は長所にもなり得るというけど、それってごく稀だよな。例えばでしゃばりがある場面では積極的で果敢にチャレンジするように見えたりとか。引っ込み思案が、ある場面では控えめで奥ゆかしく見えたりとか。大体が物は言い様、就活とか婚活とかでよく使われるテクニックの一つというか。
だからこそ、例え夢の中でもそんな風に言って貰えて本当に嬉しかったんだ。だって、弟が生まれてから褒められた記憶なんて殆どなかったから……やべっ、また涙が。あぁ、王子……。
……本当の事だよ。そんな純粋な優しさと思いやりの深さに、僕は惹かれたんだ。そういう美点は、踏みにじられたり利用されたりし易い。それでも損なわれなかった君の美点、僕が全てをかけて守りたいと思ったんだ……
だってさ。それってさ、それってさ、愛してるの意思表示?!?!?! へへっ、夢見てもいーよな。夢に夢見るか、なんかややこしいな。あとさ、あとさ!
……そうそう、宝土界でね、君にぴったりの宝石を見つけたんだ。ペンダント、つけてあげるね……
なんて言いながら、ゆっくりと俺を支えるようにして寝かすと、首の周りに確かペンダントをかけてくれたんだよな。この辺り……ん? 紐? 何だ??? 慌てて起き上がってそれを確認してみた。首に……黒い革紐? え??? まさかっ! そっと首にかけられていた紐を両手でなぞっていく……胸の辺りに……まさか! マジで??? 夢じゃなかったのか?!
「あっ! これ!?」
キラリと光るteardropの輝き。それはおよそ三cmほどの大きさの宝石だった。本当にあったんだ……確か、寝落ちする寸前に王子はこう言った。
……『Aurora tears』、オーロラの涙、ていう意味を持つ宝石だよ。一見、シャボン玉みたな色合いに見えるけど背景の色によって様々な色に変化して見える珍しい宝石なんだ。君の美点を守って最大に輝かせてくれる力があるんだよ。君に、あげる……
て。綺麗だ、本当に。素肌の上だと、本当にシャボン玉を雫型に固めたみたいな色合いだ。紺色の浴衣の上だと……うわっ! オパールみたいだ。じゃぁ、布団の白いところに翳してみようと首からペンダントを外す。
「へぇ? ブラックオパールみたいじゃん」
思わず声をあげた。窓から差す陽の光に当ててみる。今度はシトリンとゴールデンルチルクォーツを増せたような色合いに変化した。
ベッドからおりて洗面所に向かう。体が軽い。怠さが全く無くなっている。夢じゃなかったのかな!? 本当の出来事? 鏡を見る。何だか一段と痩せて……しかも蝋燭みたいな肌じゃんこれ。これじゃやっぱり病弱キャラだよなぁ。本来なら御守りする立ち場なのに、王子に守られるなんて情けない。早くこの世界に慣れないと。剣術やら武術やらも取得したいし。しかしまぁ、細い首にまっちまったなおい……て、
「あっ!」
思わず叫んだ。右の首筋に王子の痕跡を見つけたからだ。まるで、薄紅の薔薇の花びらのような跡を。
「やっぱり、夢じゃなかったんだ……」
じわじわと喜びが胸に込み上げていく。同時に、こんな希少な宝石、いくらしたんだろうかとゾーッとした。まさか国税? 畏れ多い。でも、お返しするのはもっと失礼だしな。今度お会いしたらしっかりとお礼を言おう! そして誓うんだ! 王子に忠誠を。もし王子に何かあったら、この身にかえても必ず守り抜いてみせる! 強くならなきゃ! 強くそう誓った。この、Aurora tearsに。
……初めて見た時もそう思ったけど、君は本当に思いやり深くて優しいんだね。自分の事よりもまず他人を思いやれる。それも見返りを期待したり自分の損得で動いたりしない、本当に純粋な思いだ。滅多にできる事じゃないよ。物質界でも、ここの世界でも……
この性格……そんな風に褒めて貰えたの、生まれて初めてだ。俺のそういうところ、男女を問わず家族にも友達にも、
『惟光って男の癖に優柔不断だよね』
『事無かれ主義って結局は八方美人で信用出来ない』
『惟光って自分てものが無いし流され易いよね、男の癖にさ』
『そうまでして人に嫌われたくないんか。情けねー奴だな』
何か揉め事があるとそんな風に直接言われたり、陰口叩かれたりしたもんだったな。大体において、陰口って意外と本人の耳に入り易かったりするんだよな。たまたま聞いちまったり、送信先間違えて俺のところに送っちまった、とかな。まぁ、わざとなのも居るんだろうけど。あとはさ、わざわざ『あいつこんな事言ってたぜ』なんて親切ぶって教えて来る奴居たりさ。そういう事平気で耳に入れて来る奴こそ信用出来ないけどな。実は他人に濡れ衣着せてソイツ本人が言ってる事だったりな。
欠点は長所にもなり得るというけど、それってごく稀だよな。例えばでしゃばりがある場面では積極的で果敢にチャレンジするように見えたりとか。引っ込み思案が、ある場面では控えめで奥ゆかしく見えたりとか。大体が物は言い様、就活とか婚活とかでよく使われるテクニックの一つというか。
だからこそ、例え夢の中でもそんな風に言って貰えて本当に嬉しかったんだ。だって、弟が生まれてから褒められた記憶なんて殆どなかったから……やべっ、また涙が。あぁ、王子……。
……本当の事だよ。そんな純粋な優しさと思いやりの深さに、僕は惹かれたんだ。そういう美点は、踏みにじられたり利用されたりし易い。それでも損なわれなかった君の美点、僕が全てをかけて守りたいと思ったんだ……
だってさ。それってさ、それってさ、愛してるの意思表示?!?!?! へへっ、夢見てもいーよな。夢に夢見るか、なんかややこしいな。あとさ、あとさ!
……そうそう、宝土界でね、君にぴったりの宝石を見つけたんだ。ペンダント、つけてあげるね……
なんて言いながら、ゆっくりと俺を支えるようにして寝かすと、首の周りに確かペンダントをかけてくれたんだよな。この辺り……ん? 紐? 何だ??? 慌てて起き上がってそれを確認してみた。首に……黒い革紐? え??? まさかっ! そっと首にかけられていた紐を両手でなぞっていく……胸の辺りに……まさか! マジで??? 夢じゃなかったのか?!
「あっ! これ!?」
キラリと光るteardropの輝き。それはおよそ三cmほどの大きさの宝石だった。本当にあったんだ……確か、寝落ちする寸前に王子はこう言った。
……『Aurora tears』、オーロラの涙、ていう意味を持つ宝石だよ。一見、シャボン玉みたな色合いに見えるけど背景の色によって様々な色に変化して見える珍しい宝石なんだ。君の美点を守って最大に輝かせてくれる力があるんだよ。君に、あげる……
て。綺麗だ、本当に。素肌の上だと、本当にシャボン玉を雫型に固めたみたいな色合いだ。紺色の浴衣の上だと……うわっ! オパールみたいだ。じゃぁ、布団の白いところに翳してみようと首からペンダントを外す。
「へぇ? ブラックオパールみたいじゃん」
思わず声をあげた。窓から差す陽の光に当ててみる。今度はシトリンとゴールデンルチルクォーツを増せたような色合いに変化した。
ベッドからおりて洗面所に向かう。体が軽い。怠さが全く無くなっている。夢じゃなかったのかな!? 本当の出来事? 鏡を見る。何だか一段と痩せて……しかも蝋燭みたいな肌じゃんこれ。これじゃやっぱり病弱キャラだよなぁ。本来なら御守りする立ち場なのに、王子に守られるなんて情けない。早くこの世界に慣れないと。剣術やら武術やらも取得したいし。しかしまぁ、細い首にまっちまったなおい……て、
「あっ!」
思わず叫んだ。右の首筋に王子の痕跡を見つけたからだ。まるで、薄紅の薔薇の花びらのような跡を。
「やっぱり、夢じゃなかったんだ……」
じわじわと喜びが胸に込み上げていく。同時に、こんな希少な宝石、いくらしたんだろうかとゾーッとした。まさか国税? 畏れ多い。でも、お返しするのはもっと失礼だしな。今度お会いしたらしっかりとお礼を言おう! そして誓うんだ! 王子に忠誠を。もし王子に何かあったら、この身にかえても必ず守り抜いてみせる! 強くならなきゃ! 強くそう誓った。この、Aurora tearsに。
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