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誘惑、そして禁忌を犯す
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その日は朝から今にも降り出しそうな暗雲が垂れ込み、どんよりとした重い空気が漂っていた。
ユアは前日から、頭が重い、割れるように痛いと訴えて三人での夜の行為を控えていた。
看護についてはトッドが全責任を請け負っている。「ネイスがいるとドキドキして熱が出ちゃいそうだから」という理由で、つまりはトッドにもネイスと二人で過ごす時間は一切なかった。
朝一番にも関わらず、きっちりと燕尾服を着込んだネイスがユアの部屋の扉を叩く。
少し眠そうなトッドが出迎えた。
「トッド。ユア様は……」
「夜中うなされていらっしゃいましたが、今しがた穏やかにお眠りになられました」
「そうですか。よかった……」
心から安堵の笑みを浮かべ、ネイスはユアの前髪をかき上げる。そして実にスマートに、その行動が当たり前であるかのように、ユアの額に口づけた。
「ユア様……」
「ふふ。起こしたらダメですよ」
傍らで微笑むトッドは、看病の疲れなど微塵も見せない。立派になったものだ。
それに、ネイスが知らないところでずいぶんユアと仲良くなった。
ネイスはトッドの慈愛に満ちた表情に見惚れていた。
ユアほどの美貌はない。だが、ネイスほどの大の大人が甘えたくなるような包容力が、トッドにはあった。
鼻付近に散らばったそばかすが庶民的で誰もが親近感を覚える。そのくせ、ユアに負けずとも劣らない長い睫毛は、時々ネイスをハッとさせる妖艶さを放っている……。
反射的に手を掴む。トッドは一瞬息を呑むが、そっと控えめに、振り払った。
「トッド、少しだけ」
「ネイスさん……もう」
ほら。
口の端をいやらしく歪める微笑みはすでに少年のそれではない。
手練れの娼婦のように、全身全霊でネイスを誘惑している。
「じゃあ、この後、僕の部屋にきて……?」
一度手指を絡めて、すぐに解く。その仕草にネイスは今すぐ後ろからかき抱きたい衝動に駆られた。
だがそれはできない。ユアの静謐な寝息が、ネイスを狂わせてはくれない。
トッドは先に部屋を出て行く。
いきり立ち、追いかけてくるネイスを人差し指一本で押し留める。
「準備しますから、そうだな……十五分後に来てほしいです」
「十五分後……」
「はい。それまではご自分のお部屋で、いい子で待っててくださいね?」
まるで呪文のような響きだった。
魔性。今のトッドを表すのにこれほど相応しい言葉はないだろう。
でくのようにこくりこくりと頷くだけのネイスを見て、トッドは上機嫌でその場を離れる。
十五分後。約束した時間きっかりにネイスはトッドの部屋を訪れた。
ノックに応える返事も熱暴走した頭では遠くでしか聴き取れず、ネイスはすぐさま部屋に飛び込む。
「あ……」
そこには燕尾服の下だけを脱いだ少年。一切振り向かず、窓枠にもたれたままその場で腰をゆらゆらと動かしている……これならいきなり襲い掛かっても文句は言えないはずだろう。
ネイスは鼻息荒くその腰を掴み、猛る己の逸物を擦り寄せた。
「トッド……挿れますよ」
ぶるりと震え上がった後、少年は小さく頷いた。
ぬぷ、ぬぷ、ぬぷ……
いたいけな蕾が拡がって大人の男の怒張を受け入れていく。小さな唇が苦しそうに息を詰めるのでネイスはいつもより慎重に、だが確実に奥まで差し込んだ。
「フウッ……いつもより狭いですね? トッド……」
「あ……あぁ……♡」
「……トッド?」
わずかに声色が違う。全身の毛がぞわりと逆立つ。
ネイスは衝動的にトッドであるはずの少年の腕を掴み、振り向かせて────驚愕した。
「ユア様……!?!?!?」
聖女を犯すなど国を滅ぼすのと同義。大罪。即刻、死刑だ。
慌てて抜き去ろうとするが、引き留めるように手首を握られる。
なんという強い力。非力な坊ちゃんのそれとは思えない。
後にも先にもいけず怯んでいると、やがて自分を拘束するその手が一つではないことに気付いた。
いつの間にか隣にいたもうひとりの少年は、執事見習いでありながら、ユアの高級な衣服を身に纏っている。
「トッド……!? あなた達どうして服を交換して」
「ネイス……」
挿入されているユアが甘やかに最愛の名前を呼ぶ。
今確実に自分のものになった、なってしまった高貴な少年の艶やかな呼び声に、ネイスは一瞬で囚われる。
「ネイスが、好き……♡」
「ハアッ……」
「もう、繋がっちゃったんだもん……どうせなら……楽しも……?♡」
「ウ、しかしっ……」
「ネイスさん。ユア様、一生懸命後ろを慣らされたんですよ? 大好きなネイスさんにはじめてを捧げるために♡」
トッドの指がユアのむき出しの腰をなぞる。ユアがあられもない声をあげて全身で跳ねた。
その刺激によって中が締まるのすらもどかしく……ネイスはついユアの腰をしっかりと抱え直してしまう。
ユア様が後ろを慣らしただって? まさかトッドも共謀して?
だがしかし……このまま進んでしまっては聖女の力が……この国の未来が……!
「ネイス♡」
「ネイスさん♡」
ユアに強く腕を引かれ、トッドに後ろから腰を押し出されて、ネイスは不本意ながら忠誠を誓う主君に、はじめてのひと突きをしてしまった。
けっして穢してはいけない領域、禁断の果実……甘美すぎて、一口、もう一口と啄みながら……いつの間にか無我夢中で貪り食うように。
ズッチュ、ズッチュ、ズッチュ♡
「ああんっ……ああっ……ああっ……♡」
「はアッ……なんてことを……私、ウウッ…………」
許されない罪を犯していると自覚しながらも、どうしても腰が止められない。
大切な主人が処女であるから緩慢な動きしかできないが、その一打一打を味わうかのように、ねっとりと腰を回転させながら穿ち続ける。
「ネイス、何も心配しないで、大丈夫……僕がなんとかするから……ちゃんと愛して欲しい……♡」
「し、しかしッ」
「ネイスさん、ユア様を信じてあげてください」
ユアの細腰を掴む手が震えている。
トッドはそっとそこに手を添えてさすった。不安げに見やるネイスに、微笑みかけてやった。
「もし、何もかも破滅したら三人で逃げましょう。ユア様も僕も、あなたについていくから……」
「グッ……」
「あぁん♡ きたぁ♡」
健気な少年二人の心が自分を求めてやまないと知り、ネイスは絶望の中でもいきり立った。
積極的にユアを犯す腰つきへと変化していく。タン、タンとリズミカルになり、仕込んだローションが卑猥な水音を立てるまでに勢いを増していく。
グチュ、グチュ、グチュ、グチュ!
「ああ!♡ ああ!♡ うれひいっ♡ ずっとこれサレたかったのおっ♡♡」
「ユア様~~っ……こんなっ……ああもうっ……♡」
「ナカあっ♡ ナカがいい♡ ナカに出してっ♡」
「ネイスさん♡ ユア様が生中出しをご所望です♡ 執事たるもの♡ ねっ♡ 主の期待に応えないと♡」
「ハアハアハアハアっ……!」
もう何が大義なのかもよくわからないままにネイスの全身が荒ぶる。そして清らかな聖女の胎内に思いきり熱い精をぶちまけた。
ユアの身体は歓喜に震え、垂れ流しながらその場にへたり込む。
放心するネイスの代わりにトッドがやさしく抱き起こして、自分の部屋の粗末なベッドに導いてやった。
「ネイスさん、次は正常位で……ほら、愛しい人がお待ちですよ」
「ネイスぅ♡ ユアもうネイスのおちんぽがないと生きていけない♡ はやくもう一回ちょうだいぃ~~♡」
清廉な花は、穢れてしまった。
むわりと熟れてなお少年の体を保ついやらしいがに股を押し開いて、ひと思いに貫いた。
ズンっ
「ああうううううう♡♡♡」
「ああ、すごい……ネイスさん、素敵です……♡」
肩をさするトッドの視線に甘く射抜かれながら、ネイスはユアに覆いかぶさった。
今までにない獣の猛りを見せつけるがごとく唇に噛みつく。熱望される逸物を膨れ上がらせて高速で打ち付ける。
「あひ♡ はひ♡ ふ♡ ひもち♡ いいよおおおおおお♡♡」
「ユア様……ユア様、お美しいっ……もっと汚す……堕とす……!!」
「あうゥウウウ♡♡♡」
ネイスはしてはいけないことこそ快楽だと知った。
ユアの首を指で圧迫して呼吸を阻止する。窒息寸前で目玉がひっくり返ったユアの顔を凝視しながら、その美しい肌に涎を垂らしてなおも執拗に突き続ける。
「堕とす……堕とす堕とす堕とすッ!!」
「プぎっ♡♡」
豚のような声をあげてユアが達した。
生死の境を彷徨うセックスに応えるかのように、盛大に黄金のシャワーを打ち上げてシーツに沈む。
「ユア!!!!!!」
美しい主人の堕落の瞬間を目の当たりにした従者は、事もあろうにその名を吐き捨てるように叫び、もう一度乱暴に挿入する。肩に噛みつき、牙を食い込ませながら強姦犯のように自分勝手なピストンを展開する。
「お前は卑しいッ!!!卑しいメス豚だッ……!!!」
あまりの豹変っぷりにトッドは止めようかとネイスの肩に手をかけるが、その胸元に、見てしまった。
淫靡な笑みを浮かべ恍惚に浸る、世にも幸せそうな主人の表情を。
耳を澄ませばネイスにしか聞こえないほどの声で「もっと……♡」「もっとひどいの♡」「ユアしあわせ♡」という呟きも聴こえる。
しばらくトッドはその度を超えた行為を見守った。やがて勢いは衰え、危うさは息を潜めていく。
ひたすらに主人の上で腰を振る最愛の人を背にして、トッドは部屋を出る。
……ところが、
「トッド!!」
ネイスの声に呼び戻される。
どうして。
トッドはツンとした鼻を啜って、泣きそうな顔で振り向く。
「トッド……こちらに」
「え、でも」
ネイスは濡れたシーツの上にユアを放置して、今度はトッドの衣服を剥いだ。
すぐさま裸になった少年はもうユアの見た目ではなく、いつも愛し合っているもう一人の恋人だ。
「昼間からあなたのことを抱きたかった……いいでしょう?」
「で、ではせめてユア様のシーツを替えて差し上げてから……」
「いいから」
ユアの元へ向かおうとするトッドを拘束して抱き上げる。
強引に向かい合わせで抱き合う状態にして、なんとそのまま……挿入、した。
何度も繋がったトッドのそこはすぐに馴染む。火傷するほどに熱い肉棒に抗えるはずもなく、そのまますべてを納められてしまった。
「ああ……♡♡」
「おおっ……トッド……!」
その痩躯のどこにそんな力を隠し持っていたのか、ネイスはトッドの爪先が浮くほどに持ち上げて、空中で熱烈に打ち付ける。犯される心の準備ができていなかったトッドは、それでもすぐに身を委ねてネイスの動きに集中した。
「ああ♡ ああ♡ ああ♡ ネイス♡ さんっ♡ だめ……♡」
「そんなこと言わないでトッド……ハアッ……いい匂い……可愛らしいですよ……♡」
身動きできない状態で首筋をこれでもかと嗅ぎたくられて、どうしようもない執着が伝わってくる。
まさかネイスさんが大切なユア様を放って僕にこんなことを……?♡
トッドの罪悪感と優越感が混ざり合っていく。
「あなたの中にも出したい♡ マーキングしたいです♡ 私の愛しい人♡」
「ああっ耳♡ やめぇ♡ そんなの言われたらぼくぅうう♡♡」
ガクガクと人形のように揺さぶられて、熱のこもった吐息にまみれながらトッドは中出しされた。
全身を擦り寄せられ、深いキスを受けて、幸福感が芯まで染み渡る。
愛されている。
今、自分はまぎれもなく、この人に愛されている……!
「好きです……一生守ります……だからもう私から離れないで……♡」
「んぷ♡ んぷ♡ はぁう……♡」
もしや先ほど離席しようとしたことを根に持っているのだろうか。
確かにトッドは身を引く気でいた。自分の愛する二人が幸せになってくれれば、それでいいと思った。
だがその腕に抱かれてしまえばたちまち決意は砕かれる。相思相愛の口づけを交わして、うっとりと見つめ合う。
もう離れないと心で誓って、きつくその首筋に腕を巻き付けた。
「すき♡ ネイスさん……♡」
「私もです♡ トッド……♡」
ネイスは丁寧にトッドを愛した。壊れ物を扱うかのように両手を頬で包んで大事にキスを繰り返したし、ユアが汚していない部分に寝かせて何度も優しく揺さぶった。
トッドがバテると、ネイスはふたたびユアに覆いかぶさる。
「あ♡ ネイス……♡」
気を失っていたらしい、ユアは唐突に目覚めてなおネイスを求めた。
強引に挿入されて自分勝手に穿たれても、涎を垂らし目を剥いて悦んだ。
「ああ卑しい卑しい……堕ちた聖女……国が続く限り毎晩犯してやるからなっ……!」
「うれひいっ♡ ネイス♡ もっとぼく♡ こわひて♡ こわひてぇっ♡」
ひどくされるのがそうとう嬉しいようだ。エスカレートしたらすぐに制止できるよう、トッドは隣でその様子を見守っている。
唐突にネイスがトッドを向き「おいで」と微笑む。丁重に扱われることに優越を感じつつ、トッドは起き上がって寄り添った。
「可愛いトッド……私たち結婚しましょう。二人で暮らすんです」
「あ、そんな……僕たちこの屋敷には恩が……」
「仕事は続けます。いいですよね? ユアっ!♡」
「あぐぅう♡」
ユアの全身が突き上げられる。幸せそうに肩を寄せ合うネイスとトッドを見て、ユアもまた、幸せそうに微笑んだ。
「もちろんれす♡ ふたりはけっこんして♡ れもぼくもおかしてぇ♡」
「いいですよ♡ ユア、あなたは浮気相手だ♡ いい? トッド?」
「はい……末永く僕たちのこと、愛してくださいね……?♡」
「ええ、もちろん。誓います♡」
ユアへのピストンを緩慢にして、ネイスはトッドに愛情深い口づけを落とした。
甘く粘っこい動きに、ユアも触発されて淫らに喘ぐ。
三人は揺らがない、幸せへの道を歩き出した。
ユアは前日から、頭が重い、割れるように痛いと訴えて三人での夜の行為を控えていた。
看護についてはトッドが全責任を請け負っている。「ネイスがいるとドキドキして熱が出ちゃいそうだから」という理由で、つまりはトッドにもネイスと二人で過ごす時間は一切なかった。
朝一番にも関わらず、きっちりと燕尾服を着込んだネイスがユアの部屋の扉を叩く。
少し眠そうなトッドが出迎えた。
「トッド。ユア様は……」
「夜中うなされていらっしゃいましたが、今しがた穏やかにお眠りになられました」
「そうですか。よかった……」
心から安堵の笑みを浮かべ、ネイスはユアの前髪をかき上げる。そして実にスマートに、その行動が当たり前であるかのように、ユアの額に口づけた。
「ユア様……」
「ふふ。起こしたらダメですよ」
傍らで微笑むトッドは、看病の疲れなど微塵も見せない。立派になったものだ。
それに、ネイスが知らないところでずいぶんユアと仲良くなった。
ネイスはトッドの慈愛に満ちた表情に見惚れていた。
ユアほどの美貌はない。だが、ネイスほどの大の大人が甘えたくなるような包容力が、トッドにはあった。
鼻付近に散らばったそばかすが庶民的で誰もが親近感を覚える。そのくせ、ユアに負けずとも劣らない長い睫毛は、時々ネイスをハッとさせる妖艶さを放っている……。
反射的に手を掴む。トッドは一瞬息を呑むが、そっと控えめに、振り払った。
「トッド、少しだけ」
「ネイスさん……もう」
ほら。
口の端をいやらしく歪める微笑みはすでに少年のそれではない。
手練れの娼婦のように、全身全霊でネイスを誘惑している。
「じゃあ、この後、僕の部屋にきて……?」
一度手指を絡めて、すぐに解く。その仕草にネイスは今すぐ後ろからかき抱きたい衝動に駆られた。
だがそれはできない。ユアの静謐な寝息が、ネイスを狂わせてはくれない。
トッドは先に部屋を出て行く。
いきり立ち、追いかけてくるネイスを人差し指一本で押し留める。
「準備しますから、そうだな……十五分後に来てほしいです」
「十五分後……」
「はい。それまではご自分のお部屋で、いい子で待っててくださいね?」
まるで呪文のような響きだった。
魔性。今のトッドを表すのにこれほど相応しい言葉はないだろう。
でくのようにこくりこくりと頷くだけのネイスを見て、トッドは上機嫌でその場を離れる。
十五分後。約束した時間きっかりにネイスはトッドの部屋を訪れた。
ノックに応える返事も熱暴走した頭では遠くでしか聴き取れず、ネイスはすぐさま部屋に飛び込む。
「あ……」
そこには燕尾服の下だけを脱いだ少年。一切振り向かず、窓枠にもたれたままその場で腰をゆらゆらと動かしている……これならいきなり襲い掛かっても文句は言えないはずだろう。
ネイスは鼻息荒くその腰を掴み、猛る己の逸物を擦り寄せた。
「トッド……挿れますよ」
ぶるりと震え上がった後、少年は小さく頷いた。
ぬぷ、ぬぷ、ぬぷ……
いたいけな蕾が拡がって大人の男の怒張を受け入れていく。小さな唇が苦しそうに息を詰めるのでネイスはいつもより慎重に、だが確実に奥まで差し込んだ。
「フウッ……いつもより狭いですね? トッド……」
「あ……あぁ……♡」
「……トッド?」
わずかに声色が違う。全身の毛がぞわりと逆立つ。
ネイスは衝動的にトッドであるはずの少年の腕を掴み、振り向かせて────驚愕した。
「ユア様……!?!?!?」
聖女を犯すなど国を滅ぼすのと同義。大罪。即刻、死刑だ。
慌てて抜き去ろうとするが、引き留めるように手首を握られる。
なんという強い力。非力な坊ちゃんのそれとは思えない。
後にも先にもいけず怯んでいると、やがて自分を拘束するその手が一つではないことに気付いた。
いつの間にか隣にいたもうひとりの少年は、執事見習いでありながら、ユアの高級な衣服を身に纏っている。
「トッド……!? あなた達どうして服を交換して」
「ネイス……」
挿入されているユアが甘やかに最愛の名前を呼ぶ。
今確実に自分のものになった、なってしまった高貴な少年の艶やかな呼び声に、ネイスは一瞬で囚われる。
「ネイスが、好き……♡」
「ハアッ……」
「もう、繋がっちゃったんだもん……どうせなら……楽しも……?♡」
「ウ、しかしっ……」
「ネイスさん。ユア様、一生懸命後ろを慣らされたんですよ? 大好きなネイスさんにはじめてを捧げるために♡」
トッドの指がユアのむき出しの腰をなぞる。ユアがあられもない声をあげて全身で跳ねた。
その刺激によって中が締まるのすらもどかしく……ネイスはついユアの腰をしっかりと抱え直してしまう。
ユア様が後ろを慣らしただって? まさかトッドも共謀して?
だがしかし……このまま進んでしまっては聖女の力が……この国の未来が……!
「ネイス♡」
「ネイスさん♡」
ユアに強く腕を引かれ、トッドに後ろから腰を押し出されて、ネイスは不本意ながら忠誠を誓う主君に、はじめてのひと突きをしてしまった。
けっして穢してはいけない領域、禁断の果実……甘美すぎて、一口、もう一口と啄みながら……いつの間にか無我夢中で貪り食うように。
ズッチュ、ズッチュ、ズッチュ♡
「ああんっ……ああっ……ああっ……♡」
「はアッ……なんてことを……私、ウウッ…………」
許されない罪を犯していると自覚しながらも、どうしても腰が止められない。
大切な主人が処女であるから緩慢な動きしかできないが、その一打一打を味わうかのように、ねっとりと腰を回転させながら穿ち続ける。
「ネイス、何も心配しないで、大丈夫……僕がなんとかするから……ちゃんと愛して欲しい……♡」
「し、しかしッ」
「ネイスさん、ユア様を信じてあげてください」
ユアの細腰を掴む手が震えている。
トッドはそっとそこに手を添えてさすった。不安げに見やるネイスに、微笑みかけてやった。
「もし、何もかも破滅したら三人で逃げましょう。ユア様も僕も、あなたについていくから……」
「グッ……」
「あぁん♡ きたぁ♡」
健気な少年二人の心が自分を求めてやまないと知り、ネイスは絶望の中でもいきり立った。
積極的にユアを犯す腰つきへと変化していく。タン、タンとリズミカルになり、仕込んだローションが卑猥な水音を立てるまでに勢いを増していく。
グチュ、グチュ、グチュ、グチュ!
「ああ!♡ ああ!♡ うれひいっ♡ ずっとこれサレたかったのおっ♡♡」
「ユア様~~っ……こんなっ……ああもうっ……♡」
「ナカあっ♡ ナカがいい♡ ナカに出してっ♡」
「ネイスさん♡ ユア様が生中出しをご所望です♡ 執事たるもの♡ ねっ♡ 主の期待に応えないと♡」
「ハアハアハアハアっ……!」
もう何が大義なのかもよくわからないままにネイスの全身が荒ぶる。そして清らかな聖女の胎内に思いきり熱い精をぶちまけた。
ユアの身体は歓喜に震え、垂れ流しながらその場にへたり込む。
放心するネイスの代わりにトッドがやさしく抱き起こして、自分の部屋の粗末なベッドに導いてやった。
「ネイスさん、次は正常位で……ほら、愛しい人がお待ちですよ」
「ネイスぅ♡ ユアもうネイスのおちんぽがないと生きていけない♡ はやくもう一回ちょうだいぃ~~♡」
清廉な花は、穢れてしまった。
むわりと熟れてなお少年の体を保ついやらしいがに股を押し開いて、ひと思いに貫いた。
ズンっ
「ああうううううう♡♡♡」
「ああ、すごい……ネイスさん、素敵です……♡」
肩をさするトッドの視線に甘く射抜かれながら、ネイスはユアに覆いかぶさった。
今までにない獣の猛りを見せつけるがごとく唇に噛みつく。熱望される逸物を膨れ上がらせて高速で打ち付ける。
「あひ♡ はひ♡ ふ♡ ひもち♡ いいよおおおおおお♡♡」
「ユア様……ユア様、お美しいっ……もっと汚す……堕とす……!!」
「あうゥウウウ♡♡♡」
ネイスはしてはいけないことこそ快楽だと知った。
ユアの首を指で圧迫して呼吸を阻止する。窒息寸前で目玉がひっくり返ったユアの顔を凝視しながら、その美しい肌に涎を垂らしてなおも執拗に突き続ける。
「堕とす……堕とす堕とす堕とすッ!!」
「プぎっ♡♡」
豚のような声をあげてユアが達した。
生死の境を彷徨うセックスに応えるかのように、盛大に黄金のシャワーを打ち上げてシーツに沈む。
「ユア!!!!!!」
美しい主人の堕落の瞬間を目の当たりにした従者は、事もあろうにその名を吐き捨てるように叫び、もう一度乱暴に挿入する。肩に噛みつき、牙を食い込ませながら強姦犯のように自分勝手なピストンを展開する。
「お前は卑しいッ!!!卑しいメス豚だッ……!!!」
あまりの豹変っぷりにトッドは止めようかとネイスの肩に手をかけるが、その胸元に、見てしまった。
淫靡な笑みを浮かべ恍惚に浸る、世にも幸せそうな主人の表情を。
耳を澄ませばネイスにしか聞こえないほどの声で「もっと……♡」「もっとひどいの♡」「ユアしあわせ♡」という呟きも聴こえる。
しばらくトッドはその度を超えた行為を見守った。やがて勢いは衰え、危うさは息を潜めていく。
ひたすらに主人の上で腰を振る最愛の人を背にして、トッドは部屋を出る。
……ところが、
「トッド!!」
ネイスの声に呼び戻される。
どうして。
トッドはツンとした鼻を啜って、泣きそうな顔で振り向く。
「トッド……こちらに」
「え、でも」
ネイスは濡れたシーツの上にユアを放置して、今度はトッドの衣服を剥いだ。
すぐさま裸になった少年はもうユアの見た目ではなく、いつも愛し合っているもう一人の恋人だ。
「昼間からあなたのことを抱きたかった……いいでしょう?」
「で、ではせめてユア様のシーツを替えて差し上げてから……」
「いいから」
ユアの元へ向かおうとするトッドを拘束して抱き上げる。
強引に向かい合わせで抱き合う状態にして、なんとそのまま……挿入、した。
何度も繋がったトッドのそこはすぐに馴染む。火傷するほどに熱い肉棒に抗えるはずもなく、そのまますべてを納められてしまった。
「ああ……♡♡」
「おおっ……トッド……!」
その痩躯のどこにそんな力を隠し持っていたのか、ネイスはトッドの爪先が浮くほどに持ち上げて、空中で熱烈に打ち付ける。犯される心の準備ができていなかったトッドは、それでもすぐに身を委ねてネイスの動きに集中した。
「ああ♡ ああ♡ ああ♡ ネイス♡ さんっ♡ だめ……♡」
「そんなこと言わないでトッド……ハアッ……いい匂い……可愛らしいですよ……♡」
身動きできない状態で首筋をこれでもかと嗅ぎたくられて、どうしようもない執着が伝わってくる。
まさかネイスさんが大切なユア様を放って僕にこんなことを……?♡
トッドの罪悪感と優越感が混ざり合っていく。
「あなたの中にも出したい♡ マーキングしたいです♡ 私の愛しい人♡」
「ああっ耳♡ やめぇ♡ そんなの言われたらぼくぅうう♡♡」
ガクガクと人形のように揺さぶられて、熱のこもった吐息にまみれながらトッドは中出しされた。
全身を擦り寄せられ、深いキスを受けて、幸福感が芯まで染み渡る。
愛されている。
今、自分はまぎれもなく、この人に愛されている……!
「好きです……一生守ります……だからもう私から離れないで……♡」
「んぷ♡ んぷ♡ はぁう……♡」
もしや先ほど離席しようとしたことを根に持っているのだろうか。
確かにトッドは身を引く気でいた。自分の愛する二人が幸せになってくれれば、それでいいと思った。
だがその腕に抱かれてしまえばたちまち決意は砕かれる。相思相愛の口づけを交わして、うっとりと見つめ合う。
もう離れないと心で誓って、きつくその首筋に腕を巻き付けた。
「すき♡ ネイスさん……♡」
「私もです♡ トッド……♡」
ネイスは丁寧にトッドを愛した。壊れ物を扱うかのように両手を頬で包んで大事にキスを繰り返したし、ユアが汚していない部分に寝かせて何度も優しく揺さぶった。
トッドがバテると、ネイスはふたたびユアに覆いかぶさる。
「あ♡ ネイス……♡」
気を失っていたらしい、ユアは唐突に目覚めてなおネイスを求めた。
強引に挿入されて自分勝手に穿たれても、涎を垂らし目を剥いて悦んだ。
「ああ卑しい卑しい……堕ちた聖女……国が続く限り毎晩犯してやるからなっ……!」
「うれひいっ♡ ネイス♡ もっとぼく♡ こわひて♡ こわひてぇっ♡」
ひどくされるのがそうとう嬉しいようだ。エスカレートしたらすぐに制止できるよう、トッドは隣でその様子を見守っている。
唐突にネイスがトッドを向き「おいで」と微笑む。丁重に扱われることに優越を感じつつ、トッドは起き上がって寄り添った。
「可愛いトッド……私たち結婚しましょう。二人で暮らすんです」
「あ、そんな……僕たちこの屋敷には恩が……」
「仕事は続けます。いいですよね? ユアっ!♡」
「あぐぅう♡」
ユアの全身が突き上げられる。幸せそうに肩を寄せ合うネイスとトッドを見て、ユアもまた、幸せそうに微笑んだ。
「もちろんれす♡ ふたりはけっこんして♡ れもぼくもおかしてぇ♡」
「いいですよ♡ ユア、あなたは浮気相手だ♡ いい? トッド?」
「はい……末永く僕たちのこと、愛してくださいね……?♡」
「ええ、もちろん。誓います♡」
ユアへのピストンを緩慢にして、ネイスはトッドに愛情深い口づけを落とした。
甘く粘っこい動きに、ユアも触発されて淫らに喘ぐ。
三人は揺らがない、幸せへの道を歩き出した。
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