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 浴室でスーツを脱がされた瞳は、頭のてっぺんから足のつま先まで余すところなく円によって綺麗に洗われた。
 丁寧で優しい円の指先が、瞳の震えを解いていく。
 浴槽で後ろから抱きしめられるように温まり、それでも顔色は悪く、震えは完全には止まらない。


「手首。痕になってる」
「あ……っ」


 瞳の両手首に残った指の痕。痣に、なるかもしれない。それほどまでに強く押さえつけられたのだ。
 そんな瞳の手首を円の手が持ち上げると、優しくキスをする。


「ん……っ」


 ぴくん、と瞳が震えた。


「あ……、まどか……」
「ん。ベッド、行こうか」


 円は手早く自分の腰にタオルを巻くと、バスタオルを広げて愛おしそうに瞳を包み込み、そのまま抱き上げる。寝室のベッドへ直行して、まだ少し濡れた身体のまま、優しくおろされる。
 円が乗り上げてきて、ベッドが小さく軋んだ。


「瞳……。どこ、触られた?」
「あ……」
「大丈夫。言って? 『上書き』してあげる」
「でも……」
「さすがに、痛いのはしてあげられないけど」


 とさり、と瞳を押し倒して覆いかぶさり、両手首をベッドに縫い止める。その優しさに、瞳は泣きたくなる。ふるり、と首を振ると涙がひとすじ零れた。


「……酷く、して」
「だめだよ。優しくしたい」
「オレは、オレを許せなくなる……」
「そんなこと言わないで」
「だってオレは……! きっとこれからも円を利用する……!」
「瞳」
「こんなこと……今までなら自分でやり過ごせてた……! でも円に会ってから、お前じゃなきゃ嫌で……気持ち悪くて仕方ない……っ!」


 ぽろぽろとこぼれ落ちる涙と悲鳴みたいな声に、円は思わず瞳の両手を解放して抱きすくめる。濡れた身体がぴたりと密着して、瞳はピクリと身体を揺らした。解放された腕で顔を隠す素振りで涙を拭いた。


「瞳。ねえ瞳、どうしよう」
「……なに」
「俺には今のが瞳が俺のこと大好きって言ってるようにしか聞こえなかったんだけど」
「…………っ! ちが……っ」


 言いかけた言葉を、ぐっと飲み込んだ。
 違わない。瞳は円のことが好きだという自覚がある。だからこそ、今まで以上に他者からの性的な接触を嫌う。


「瞳?」


 円は瞳の耳元で囁き、それから首筋に舌を這わせてキスをした。キツく吸い上げるから小さく痛む。
 その場所は、まさにアスモデウスに触れられた場所で、瞳はぼう然と呟いた。


「なんで、ここ……」
「あ、やっぱりそうか。俺も男だからね、他のやつの心理くらい分かるよ。首筋へのキスは執着だって言わなかった?」
「いや、……え? わからな……」
「いいよ、分からなくて」
「ん……っ!」


 思考力は、円のキスに翻弄されることで奪われた。


「んぅ、ぁ……、はぁ……んっ、やぁ……、まっ……」


 性急に追い上げられて、呼吸もままならない。
 待ってくれ、と訴えれば、円はキスの先を唇から全身へと変えてゆく。


「あ……っ!? まど、か……っ! んぁ!」


 首筋に、鎖骨に、胸に、腹に、わき腹にキスとキスマークを。内ももにガリ、と噛みつかれて瞳はのけぞった。


「あぅ……っ!」


 瞳は噛みあとすら甘やかな刺激にしかならない事実に驚愕した。
 それよりも、酷くして欲しいと願ったのに、円はどこまでも優しくキスをしてきて、肝心な場所には触れてくれない。ある意味では酷いけれど、甘くて焦れったくておかしくなりそうだった。
 いつの間にか、身体の震えは止まっていた。今は別の意味でビクビクと震えているけれど。
 瞳の前は触れてもいないのに勃ち上がってふるふると震え、先走りの蜜をこぼしていた。


「う……んっ、ぁ……はぁ、ん! あぁ……っ」


 円の唇が身体に触れるたび、なまめかしい声がもれる。そんな瞳の痴態に、円の雄も反応している。


「前、つらそうだね。一回イっておく?」


 瞳のペニスに伸ばそうとした円の手を、瞳が制する。


「あ、やぁ……っ!」
「瞳? でも……」
「や……っ! いっしょに、イきたいぃ……っ」
「…………っ!」


 円は言葉も発さずにいきなり自分の昂りと瞳のモノを一緒に掴んで扱き上げる。


「あ、あ……っ!? あつ……っ! ぁん、くぅ、んっ!」
「コレも、気持ちいいね……?」
「あぅ、んっ! きもち……い……っ!」


 熱くなった昂り同士を擦り合い扱きあげられれば、いつもと違う快感が湧き上がってぞくぞくと震える。


「あっ! あ、や……っ! も、イく……っ」
「ん、俺も……っ」


 ぬちり、と先走りの蜜のぬめりを借りていっそう扱いてやれば、瞳が先に達し、その声につられるように円が吐精する。


「ひ、あ、ああぁぁんっ!」
「う、く……っ」


 ビュクビュクと吐き出された精は二人の腹の間をどろりと汚した。瞳の乱れた呼吸が整う前に、円がそれをタオルで丁寧に拭き取る。


「ん、あ……っ」


 そんな些細なことでさえ、今の瞳には快感に繋がってしまう。ふるりと震え、瞳はぼんやりと円を見上げた。
 色香をまとう潤んだ目で見られては、円の方もたまらない。カタリとローションを手に取り、中身をたっぷりとたらすと、瞳の後孔をぬめらせた。


「っん、……ぅ」


 つぷりと挿入される指の感触に、瞳は震える。瞳の内襞は、円の指を締め付け絡みついた。


「ナカ、すごい熱い……溶けそう」
「ん、や……」
「可愛いね、瞳。俺が欲しくてうねってる」
「いう、な……っ」


 指を増やされ、解すように動かされるたびに瞳の腰が揺れる。今日は焦らされすぎて、身体の方が先にねだってしまう。


「腰が揺れてるよ。早く挿入れてほしいの?」
「ぁ……、もぅ……っ! ゆび、ぬいて……っ! いれて……おく、……まどか……っ!」
「おねだり、できたね……」


 熱に浮かされたように瞳がねだれば、切羽詰まったような円がこたえる。
 ずるりと指を抜けば瞳が喘ぎ声を上げ、円が素早くゴムを着けたその雄をずぷんと奥まで一気に突き上げる。


「あああぁぁぁっ!」


 急な挿入に、瞳の視界がチカチカと明滅した。同時に瞳は達していて、快感が過ぎて呼吸が止まる。


「…………ぁ……っ」
「瞳、ごめん。動くよ」
「……っ、……あ……、っあ……」


 円の律動が始まるとローションのぬめりを借りた水音に、瞳の嬌声が重なる。


「ふ、……ぅあ……ん、……っん! ……あ、あ……あっ」


 瞳のイイところを擦りながら抜いて奥まで突き上げてくるのを繰り返すから、瞳はもう声がおさえられない。なにもかも分からなくなる。


「やぁ、も……イく……っ!」
「ん、イって……」
「あ、あ……っ、あああぁぁぁっ!」
「……っ」


 最奥まで突き上げられて瞳は達するけれど、円はすぐに律動を再開する。


「あ、やぁ……っ! イってる……っ、イってるからぁ……っ!」
「うん、ごめんね。俺はまだだから、、、、、、、……」
「あ、ひぁ、んっ、やぁ……っ、ぁん、んく」


 そうして瞳はアスモデウスの事など忘れてしまうほどに喘がされ、嬌声を上げ続けた。
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