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「目は痛くないか?ああ、こんなに赤くなって、ちょ、ちょっと待ってろ。今ハンカチを濡らし、」
「ジルは僕をぎゅ、ってして。涙はもう止まったから大丈夫。」
あれからしばらく泣き続け、僕の目の周りは赤くなってしまった。
ジルはまだ狼狽ていて、僕に言われた通りぎゅ、っと僕を抱きしめている。
ここぞとばかりに僕は我儘になった。
温かくて、気持ちがいい。
「・・・ジル、いきなりいなくなって、心配かけて、勝手に怒ってごめんなさい。」
僕は自分のポケットに手を突っ込み、あの耳飾りを取り出すとジルに差し出した。
「これを・・・ジルに贈りたくて、夢中で選んでたら・・・迷子になったんだ。ごめんなさい。もう勝手にいなくなったりしないから、また一緒に出掛けたり、買い物したりしよう?・・・ダメ?」
「・・・ダメ、じゃない。俺の方こそ・・・すまない。ラピの気持ちを疑うような言い方をした。耳飾りとても嬉しい。愛するラピの瞳の色だ。・・・つけてくれるか?」
「うん・・・!もちろん!」
僕はジルの左耳に耳飾りをつけた。
僕の左耳には榛色の耳飾りがついている。
「お揃いだね」とジルに言うと、ジルはやっと笑ってくれた。
今までで一番優しい笑顔だった。
「ねぇ、ジル。僕の耳飾りにつけたジルの匂いってどうすれば落とせるの?」
「・・・嫌か?」
「へっ?ちちち違うよ!で、でも、街に行くたび、獣人にジロジロみられるんだ・・・」
「威嚇する匂いをつけたからな。だが、逆にラピに注目が・・・それは困る。」
「そ、そうでしょ?耳飾りは嬉しくて、もちろん気に入ってるんだけど・・・」
「・・・匂いはそのうち消える。ラピに隠れて・・・毎回強い匂いをつけていたんだ。本当であればもう消えてる。・・・呆れたか?」
「へっ?そ、そうだったの・・・気付かなかった。あ、呆れてないよ!ぼ、僕のこと心配してくれてたんだよね!実は嫉妬されるのもちょっと、う、嬉しいし・・・」
「・・・はぁぁぁ・・・ラピの可愛さの底が見えん・・・抱きしめさせてくれ。」
悩ましげなため息をついた後、またぎゅっと僕を抱きしめたジル。
僕も控えめにだけど抱きしめ返した。
誤解が解けてよかった、と言う気持ちでまた体の力が少し抜けた。
僕がぽやぽやしていると、ジルが「はっ!」と何か思い出し、慌てて体を引き離した。
僕の目を食い入るように見つめる顔は真剣そのもの。
その勢いにびっくりして僕は何故か手をパーにしたまま固まっている。
「ど、うしたの?ジル。」
「・・・ラピ、今すぐにでも番になりたい、と言ったな。あれは本心か?」
「うへぇっ?!えっ、ええ?」
「答えてくれ。あれは本心か?」
「ゔ、あ、ええ?ほ、本心、だけ、ど・・・」
「・・・何故早く言わないんだ?!!言ってくれていれば、すぐにで」
「は、恥ずかしかったの!!!!」
「・・・んん?」
「~~、だ・か・ら!!恥ずかしくて言えなかったの!!」
「な、なぜ恥ずかしいんだ?獣人の多くは番に」
「だ、だって、・・・・・・・・・・・・・・・でしょ・・・」
「ん?ラピもっと大きな声で言」
「だって!!ぼ、僕とエッチしようって言ってるのと同じでしょ!!!~~~っ!もう!ジルの馬鹿ぁ!!い、言わせないで!!!」
僕は真っ赤な顔のまままたポカポカ、ジルの胸元叩いた。恥ずかしくって顔が上げられない。
ジルはそんな僕をぎゅぅぅう、と抱きしめたり、頸の匂いをくんくん嗅いだりしながら「可愛い」「可愛いすぎる」「愛してるよ」「顔を見せて」と甘い言葉を囁き続けた。
そしてなかなか顔を上げられない僕の顎を指でぐん、と上に向けさせたジルの瞳は壮絶な色気を纏っていた。
「ラピ、今日俺と番になろう。愛してる。もう我慢できない。」
「~~っ、ゔう・・・、お手柔らかに・・・よ、よろしくお願いしま、すぅ・・・」
「あとで一緒に風呂に入ろうな。」
「・・・・・・無理無理無理無理!!へっ、ぼ、僕自分で、」
「出来ないだろう?・・・まさかした事があるのか?準備を?・・・した相手を殺」
「あああああありません!ないです!初めてだから!ああっ、もう!わぁぁあー!」
「・・・はぁ、可愛すぎる。こっちにおいで。抱きしめさせてくれ。」
僕は「うう・・・」と唸り声を上げながら、嬉しくて堪らない!といった様子のジルの胸元に埋まるしか出来なかった。
「ジルは僕をぎゅ、ってして。涙はもう止まったから大丈夫。」
あれからしばらく泣き続け、僕の目の周りは赤くなってしまった。
ジルはまだ狼狽ていて、僕に言われた通りぎゅ、っと僕を抱きしめている。
ここぞとばかりに僕は我儘になった。
温かくて、気持ちがいい。
「・・・ジル、いきなりいなくなって、心配かけて、勝手に怒ってごめんなさい。」
僕は自分のポケットに手を突っ込み、あの耳飾りを取り出すとジルに差し出した。
「これを・・・ジルに贈りたくて、夢中で選んでたら・・・迷子になったんだ。ごめんなさい。もう勝手にいなくなったりしないから、また一緒に出掛けたり、買い物したりしよう?・・・ダメ?」
「・・・ダメ、じゃない。俺の方こそ・・・すまない。ラピの気持ちを疑うような言い方をした。耳飾りとても嬉しい。愛するラピの瞳の色だ。・・・つけてくれるか?」
「うん・・・!もちろん!」
僕はジルの左耳に耳飾りをつけた。
僕の左耳には榛色の耳飾りがついている。
「お揃いだね」とジルに言うと、ジルはやっと笑ってくれた。
今までで一番優しい笑顔だった。
「ねぇ、ジル。僕の耳飾りにつけたジルの匂いってどうすれば落とせるの?」
「・・・嫌か?」
「へっ?ちちち違うよ!で、でも、街に行くたび、獣人にジロジロみられるんだ・・・」
「威嚇する匂いをつけたからな。だが、逆にラピに注目が・・・それは困る。」
「そ、そうでしょ?耳飾りは嬉しくて、もちろん気に入ってるんだけど・・・」
「・・・匂いはそのうち消える。ラピに隠れて・・・毎回強い匂いをつけていたんだ。本当であればもう消えてる。・・・呆れたか?」
「へっ?そ、そうだったの・・・気付かなかった。あ、呆れてないよ!ぼ、僕のこと心配してくれてたんだよね!実は嫉妬されるのもちょっと、う、嬉しいし・・・」
「・・・はぁぁぁ・・・ラピの可愛さの底が見えん・・・抱きしめさせてくれ。」
悩ましげなため息をついた後、またぎゅっと僕を抱きしめたジル。
僕も控えめにだけど抱きしめ返した。
誤解が解けてよかった、と言う気持ちでまた体の力が少し抜けた。
僕がぽやぽやしていると、ジルが「はっ!」と何か思い出し、慌てて体を引き離した。
僕の目を食い入るように見つめる顔は真剣そのもの。
その勢いにびっくりして僕は何故か手をパーにしたまま固まっている。
「ど、うしたの?ジル。」
「・・・ラピ、今すぐにでも番になりたい、と言ったな。あれは本心か?」
「うへぇっ?!えっ、ええ?」
「答えてくれ。あれは本心か?」
「ゔ、あ、ええ?ほ、本心、だけ、ど・・・」
「・・・何故早く言わないんだ?!!言ってくれていれば、すぐにで」
「は、恥ずかしかったの!!!!」
「・・・んん?」
「~~、だ・か・ら!!恥ずかしくて言えなかったの!!」
「な、なぜ恥ずかしいんだ?獣人の多くは番に」
「だ、だって、・・・・・・・・・・・・・・・でしょ・・・」
「ん?ラピもっと大きな声で言」
「だって!!ぼ、僕とエッチしようって言ってるのと同じでしょ!!!~~~っ!もう!ジルの馬鹿ぁ!!い、言わせないで!!!」
僕は真っ赤な顔のまままたポカポカ、ジルの胸元叩いた。恥ずかしくって顔が上げられない。
ジルはそんな僕をぎゅぅぅう、と抱きしめたり、頸の匂いをくんくん嗅いだりしながら「可愛い」「可愛いすぎる」「愛してるよ」「顔を見せて」と甘い言葉を囁き続けた。
そしてなかなか顔を上げられない僕の顎を指でぐん、と上に向けさせたジルの瞳は壮絶な色気を纏っていた。
「ラピ、今日俺と番になろう。愛してる。もう我慢できない。」
「~~っ、ゔう・・・、お手柔らかに・・・よ、よろしくお願いしま、すぅ・・・」
「あとで一緒に風呂に入ろうな。」
「・・・・・・無理無理無理無理!!へっ、ぼ、僕自分で、」
「出来ないだろう?・・・まさかした事があるのか?準備を?・・・した相手を殺」
「あああああありません!ないです!初めてだから!ああっ、もう!わぁぁあー!」
「・・・はぁ、可愛すぎる。こっちにおいで。抱きしめさせてくれ。」
僕は「うう・・・」と唸り声を上げながら、嬉しくて堪らない!といった様子のジルの胸元に埋まるしか出来なかった。
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