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ラズワルドからラファドに出された条件は3つ。
一、リーシュが専属魔法士を拒んだ場合、それに応じること
一、リーシュを悲しませるようなことは絶対にしないこと
一、身につけるものは事前にラズワルドと相談して決めること
リーシュが王宮に来てから毎日身につけているローブのデザインはラファドとラズワルドの合作だ。
王族の瞳の色である紺色という点は変えられないが、刺繍柄に関しては自由に決めて良いことになっている。
ラファドの髪色である銀色の刺繍糸を使い、身の安全を願う伝統的な紋様、リーシュの好きな古代魔法学(情報提供者はラズワルド)に使われていた文字をアレンジした図案が使われた。
これにも相当な時間をかけたが、耳飾りは更に厄介だった。
何度ラファドが試作品を作ってもなかなかラズワルドのOKが出なかったのである。
『リーシュの魅力が全然わかっていません』
『ここの部分はもっと曲線を出して、リーシュの儚さを表現していただかなくては』
『新しいデザインを考えてください』
何度目かわからない文のやりとり。
ラファドはため息をついて自分のセンスの無さとラズワルドの執念に肩を落とす日々だった。
「あの時おっしゃっていた"面倒なこと"は兄上が絡んでいたのですね。本当に申し訳ないです・・・」
ちぎろうとした朝食のパンを皿に置き、リーシュはラファドに頭を下げた。
ギデオン領から王宮に戻って、もう2週間が過ぎた。
リーシュはずっと気になっていた"面倒なこと"の内容をようやく知ることができたのである。
お互いの気持ちを確認したあの日。
帰り際に「また王宮でな」とリーシュの額に堂々と口付けたラファド。
唖然とするガーディナー。
立ったまま気絶するラズワルド。
あははと笑って見ているジョシュア。
ため息をつくハンナ。
見送りはかなり騒々しいものになったが、王族一行は用事を済ませ、すぐに帰っていった。
ガーディナーとラズワルドからはラファドとのことを根掘り葉掘り聞かれたが清々しい表情で、「僕は王宮に戻って一生ラファド様のお側にいます。婚約の手続きはまた後ほど。」なんて言い切るリーシュに、2人はまたまた唖然としたのはまた別の話。
リーシュは元々自分の決めた道をずんずん進んでいくかなり前向きな人間だ。
本来のリーシュの姿に戻り、喜ばしい反面、「こ、こ、こ、こ、婚約ぅ?!」と動揺を隠しきれない父と兄。
あの時の2人の顔を思い出し、ふふっ、と笑いを溢したリーシュをラファドは優しい眼差しで見ていた。
残りの朝食を食べすすめながら、今日の予定を確認する。
「今日の午前中はアルベルト様の補佐でしょうか?私もご一緒してよろしいですか?」
「ああ、もちろん。一緒に行こう。その前に渡したいものがあるから、朝食を食べ終わった後、俺の部屋に寄ってくれ。」
「・・・?わかりました。」
珍しくラファドは先に朝食の席を立った。
リーシュもあと少し残っていたパンとソーセージを口に入れ、朝食を済ませると自分部屋に戻る。
準備を整え、紺色のローブを羽織ってラファドの部屋へ向かった。
一、リーシュが専属魔法士を拒んだ場合、それに応じること
一、リーシュを悲しませるようなことは絶対にしないこと
一、身につけるものは事前にラズワルドと相談して決めること
リーシュが王宮に来てから毎日身につけているローブのデザインはラファドとラズワルドの合作だ。
王族の瞳の色である紺色という点は変えられないが、刺繍柄に関しては自由に決めて良いことになっている。
ラファドの髪色である銀色の刺繍糸を使い、身の安全を願う伝統的な紋様、リーシュの好きな古代魔法学(情報提供者はラズワルド)に使われていた文字をアレンジした図案が使われた。
これにも相当な時間をかけたが、耳飾りは更に厄介だった。
何度ラファドが試作品を作ってもなかなかラズワルドのOKが出なかったのである。
『リーシュの魅力が全然わかっていません』
『ここの部分はもっと曲線を出して、リーシュの儚さを表現していただかなくては』
『新しいデザインを考えてください』
何度目かわからない文のやりとり。
ラファドはため息をついて自分のセンスの無さとラズワルドの執念に肩を落とす日々だった。
「あの時おっしゃっていた"面倒なこと"は兄上が絡んでいたのですね。本当に申し訳ないです・・・」
ちぎろうとした朝食のパンを皿に置き、リーシュはラファドに頭を下げた。
ギデオン領から王宮に戻って、もう2週間が過ぎた。
リーシュはずっと気になっていた"面倒なこと"の内容をようやく知ることができたのである。
お互いの気持ちを確認したあの日。
帰り際に「また王宮でな」とリーシュの額に堂々と口付けたラファド。
唖然とするガーディナー。
立ったまま気絶するラズワルド。
あははと笑って見ているジョシュア。
ため息をつくハンナ。
見送りはかなり騒々しいものになったが、王族一行は用事を済ませ、すぐに帰っていった。
ガーディナーとラズワルドからはラファドとのことを根掘り葉掘り聞かれたが清々しい表情で、「僕は王宮に戻って一生ラファド様のお側にいます。婚約の手続きはまた後ほど。」なんて言い切るリーシュに、2人はまたまた唖然としたのはまた別の話。
リーシュは元々自分の決めた道をずんずん進んでいくかなり前向きな人間だ。
本来のリーシュの姿に戻り、喜ばしい反面、「こ、こ、こ、こ、婚約ぅ?!」と動揺を隠しきれない父と兄。
あの時の2人の顔を思い出し、ふふっ、と笑いを溢したリーシュをラファドは優しい眼差しで見ていた。
残りの朝食を食べすすめながら、今日の予定を確認する。
「今日の午前中はアルベルト様の補佐でしょうか?私もご一緒してよろしいですか?」
「ああ、もちろん。一緒に行こう。その前に渡したいものがあるから、朝食を食べ終わった後、俺の部屋に寄ってくれ。」
「・・・?わかりました。」
珍しくラファドは先に朝食の席を立った。
リーシュもあと少し残っていたパンとソーセージを口に入れ、朝食を済ませると自分部屋に戻る。
準備を整え、紺色のローブを羽織ってラファドの部屋へ向かった。
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