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「アル、迎えに来たよ。今日はまずダシュリー先生のところへパートナーの登録届を出しに行こう。」
【天下の二年ステラ組】が、かつてこんなにざわついた事があっただろうか。
放課の鐘と同時に俺の教室に現れたフィンリー・エバンズ。
・・・まさかの転移魔法かよ。
それはそんな気安く使える魔法じゃない。魔力お化けじゃねぇか。
現れたフィンリー・エバンズを見て「本当にパートナーになったんだ・・・」「こんなに近くでエバンズ様見るの初めて」「最早彫刻の美しさ・・・」と普段割と落ち着いているクラスメイト(今日に限り終始落ち着きはなかった)でさえ騒ぎ出す。
一方、俺は先日チョコレートを漁られたあの鞄を片手に「NO!」という態度をあからさまに出した。
それでも、約3m前のフィンリー・エバンズは嬉しそうに微笑んだままで、俺が側に来るのを今か今かと待っている。
・・・なあ、今気づいたけどそのネクタイピン、俺のだよな?見当たらないと思ってたけど、犯人やっぱお前かよ。
そんなボロいの公爵家が用意する訳ないよな。明らかに俺のじゃん。
あ。俺の視線に気付いた。
前髪の隙間から見てんのによくわかっ・・・・・・え?!
おい!フィンリー・エバンズ!!それ、お、俺の、ネ、ネ、ネクタイピン!!そ、そ、そんな愛おしそうに撫でんな!!触んな!やめろ!
このストーカー野郎め!
「・・・・・・・・・・・・・・・行かな」「行きます!行きます!アルフレッド君はすぐ行きますので!」
「ピノ、邪魔すんな。やっぱこいつ一発蹴ら」「もう黙れって!あの件忘れたのかよ?!お前にとっても悪くない話だったろうが!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「アル?また体調でも優れないのかい?」
「・・・・・・・・・お前のせいだろ。」
「こら、アル!言い方!!」
「ふっ、ふふ。ロベルト君気にしないで。じゃあ行こうね、アル。」
「・・・・・・なんて寛大な方だ・・・っ」
「?!ピノ!騙されんなよ!こいつはなぁ、」
後ろに居たピノの方を振り返り、フィンリー・エバンズへの怒りをぶちまけようとした時、突然後ろから俺の腹あたりに手が回され、身動きが取れなくなってしまった。
「んひっ」と思わず漏れかけた声(悲鳴)を必死に我慢して、手が伸びてきた背後をぎぎぎ、とぎこちなく振り返る。
目が合うと、にこりと微笑まれ急いで目線を元に戻した。
何という早業、いつのまに移動したんだ、フィンリー・エバンズ。
・・・そんでもって力まで強いのかよ、全く腕が解けねぇ。
俺が腕の強さに気を取られていると、ぎゅっと包み込まれるように抱きしめられた。
また漏れかけた悲鳴を口の中で必死に留め、ごくりと飲みこむ。
「・・・アルの口から他の男の名前をあまり聞きたくないなぁ。」
小さな小さな囁き声だった。
本当に俺しか聞こえないくらい小さな声なのに、どこか圧がある。
堪らず背中がぞくりとして、もう一度フィンリー・エバンズの方を振り返った。
・・・さっきよりも顔が近い。めちゃくちゃ近い。
菫色の瞳の奥で、何か恐ろしいものが揺れている。
こいつ・・・やっぱヤバい。
俺なんかのストーカーするぐらいだ。
分かってた・・・、分かってたけど・・・っ!
でも傍から見れば、そうは見えないらしい。
フィンリー・エバンズからの突然の抱擁に、周囲からは悲鳴が上がりっぱなしだった。
【天下の二年ステラ組】が、かつてこんなにざわついた事があっただろうか。
放課の鐘と同時に俺の教室に現れたフィンリー・エバンズ。
・・・まさかの転移魔法かよ。
それはそんな気安く使える魔法じゃない。魔力お化けじゃねぇか。
現れたフィンリー・エバンズを見て「本当にパートナーになったんだ・・・」「こんなに近くでエバンズ様見るの初めて」「最早彫刻の美しさ・・・」と普段割と落ち着いているクラスメイト(今日に限り終始落ち着きはなかった)でさえ騒ぎ出す。
一方、俺は先日チョコレートを漁られたあの鞄を片手に「NO!」という態度をあからさまに出した。
それでも、約3m前のフィンリー・エバンズは嬉しそうに微笑んだままで、俺が側に来るのを今か今かと待っている。
・・・なあ、今気づいたけどそのネクタイピン、俺のだよな?見当たらないと思ってたけど、犯人やっぱお前かよ。
そんなボロいの公爵家が用意する訳ないよな。明らかに俺のじゃん。
あ。俺の視線に気付いた。
前髪の隙間から見てんのによくわかっ・・・・・・え?!
おい!フィンリー・エバンズ!!それ、お、俺の、ネ、ネ、ネクタイピン!!そ、そ、そんな愛おしそうに撫でんな!!触んな!やめろ!
このストーカー野郎め!
「・・・・・・・・・・・・・・・行かな」「行きます!行きます!アルフレッド君はすぐ行きますので!」
「ピノ、邪魔すんな。やっぱこいつ一発蹴ら」「もう黙れって!あの件忘れたのかよ?!お前にとっても悪くない話だったろうが!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「アル?また体調でも優れないのかい?」
「・・・・・・・・・お前のせいだろ。」
「こら、アル!言い方!!」
「ふっ、ふふ。ロベルト君気にしないで。じゃあ行こうね、アル。」
「・・・・・・なんて寛大な方だ・・・っ」
「?!ピノ!騙されんなよ!こいつはなぁ、」
後ろに居たピノの方を振り返り、フィンリー・エバンズへの怒りをぶちまけようとした時、突然後ろから俺の腹あたりに手が回され、身動きが取れなくなってしまった。
「んひっ」と思わず漏れかけた声(悲鳴)を必死に我慢して、手が伸びてきた背後をぎぎぎ、とぎこちなく振り返る。
目が合うと、にこりと微笑まれ急いで目線を元に戻した。
何という早業、いつのまに移動したんだ、フィンリー・エバンズ。
・・・そんでもって力まで強いのかよ、全く腕が解けねぇ。
俺が腕の強さに気を取られていると、ぎゅっと包み込まれるように抱きしめられた。
また漏れかけた悲鳴を口の中で必死に留め、ごくりと飲みこむ。
「・・・アルの口から他の男の名前をあまり聞きたくないなぁ。」
小さな小さな囁き声だった。
本当に俺しか聞こえないくらい小さな声なのに、どこか圧がある。
堪らず背中がぞくりとして、もう一度フィンリー・エバンズの方を振り返った。
・・・さっきよりも顔が近い。めちゃくちゃ近い。
菫色の瞳の奥で、何か恐ろしいものが揺れている。
こいつ・・・やっぱヤバい。
俺なんかのストーカーするぐらいだ。
分かってた・・・、分かってたけど・・・っ!
でも傍から見れば、そうは見えないらしい。
フィンリー・エバンズからの突然の抱擁に、周囲からは悲鳴が上がりっぱなしだった。
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