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シエロさんは、顔に似合わず(失礼)甘いものが好き。
王族だけど、騎士団の、副団長でもある。
朝は割と弱くて、眠気覚ましにいつもコーヒーを飲む。
メイドさんに身体を触られるのが苦手で、髪の毛は毎日自分で結んでいる。
それから、それから・・・!
「俺の母は、人魚なんだ。病気で一昨年亡くなったが。」
突然・・・そう、本当に突然、シエロさんがそう口にしたものだから、思わず持っていたクッキーを、ぽろ、っと地面に落としてしまった。
大丈夫か?とシエロさんが拾ってくれて、ちょうど近くに居たリス達に分け与えていた。
《 うわぁ~!美味しそう! 》と喜んでいて、僕は少しだけ、心が凪いだ。
「そ、うなんですか。その銀の髪も・・・人魚に多い色ですもんね。」
「そうらしいな。・・・母は北の人魚でな、プライドが高い・・・嫌な人だった。」
「・・・・・・」
「この銀の髪も、母は大層褒めてくれた。人魚らしい、美しい色だ、と。短く切るのを嫌がってな・・・これはその名残みたいなものだ。」
ぽつり、ぽつり、と思い出すように話し出すシエロさんはまるで感情が抜け落ちたような、そんな顔をしていた。
「母は人魚至上主義と言えばいいのか・・・とにかく傲慢で、平気で人を傷付ける人だった。」
「・・・シエロさん、も傷ついた・・・ってことですか・・・?」
「・・・ああ。そうだな。人魚が疎ましく感じるくらいには・・・傷付いたのかもしれない。」
「・・・疎ましい・・・」
「周りに共感してほしい訳じゃない。ただ、俺は人魚ともう関わりたくない。だから・・・あの人魚の許嫁も。本当は・・・嫌なんだ。リトも聞いたことくらいあるだろう?王子と人魚の許嫁の話は。」
どくん、と僕の心臓が大きく動く。
聞きたくない。
離れたくない。
「相手は名前も、顔も、知らない。男だとは、聞いたが・・・。何でも特別な力を持っているそうだ。」
嫌だ。
聞きたくない。
「・・・その男の人魚と結婚して・・・一生側に居るなんて・・・俺は考えられない。」
どうして?
シエロさんと、僕は一緒に居たいのに。
言ってしまえば、楽になれるんだろうか。
でも別にシエロさんが人間のフリをしている僕のことを好きなわけでもない。
ああ、言葉が出ない。
「・・・すまない。リトには・・・話をしておきたたかったんだ。人魚のことを好ましく思う人間の方が多いことは知っている。気を悪くしたか?」
「い・・・え、大、丈夫で、す・・・」
「そう言えば・・・一度だけ、母に連れられてヤルヴのすぐそばまで行ったことがあった。その時、子ども・・・、の人魚がいたんだ。周りの大人には信じてもらえなかったが、本当に俺は見たんだ。足、と言うか、ヒレの色が・・・・・・リト?どうした、顔色が悪いぞ。」
「・・・あの、僕・・・今日は、」
「やっと会えました。探しましたよ・・・」
ひゅーっと、強く吹いた風は、僕とシエロさんの髪をふわりと舞わせる。
風に乗り、シエロさんからはあの薔薇の香りがして、僕はあの、飴の味を思い出していた。
王族だけど、騎士団の、副団長でもある。
朝は割と弱くて、眠気覚ましにいつもコーヒーを飲む。
メイドさんに身体を触られるのが苦手で、髪の毛は毎日自分で結んでいる。
それから、それから・・・!
「俺の母は、人魚なんだ。病気で一昨年亡くなったが。」
突然・・・そう、本当に突然、シエロさんがそう口にしたものだから、思わず持っていたクッキーを、ぽろ、っと地面に落としてしまった。
大丈夫か?とシエロさんが拾ってくれて、ちょうど近くに居たリス達に分け与えていた。
《 うわぁ~!美味しそう! 》と喜んでいて、僕は少しだけ、心が凪いだ。
「そ、うなんですか。その銀の髪も・・・人魚に多い色ですもんね。」
「そうらしいな。・・・母は北の人魚でな、プライドが高い・・・嫌な人だった。」
「・・・・・・」
「この銀の髪も、母は大層褒めてくれた。人魚らしい、美しい色だ、と。短く切るのを嫌がってな・・・これはその名残みたいなものだ。」
ぽつり、ぽつり、と思い出すように話し出すシエロさんはまるで感情が抜け落ちたような、そんな顔をしていた。
「母は人魚至上主義と言えばいいのか・・・とにかく傲慢で、平気で人を傷付ける人だった。」
「・・・シエロさん、も傷ついた・・・ってことですか・・・?」
「・・・ああ。そうだな。人魚が疎ましく感じるくらいには・・・傷付いたのかもしれない。」
「・・・疎ましい・・・」
「周りに共感してほしい訳じゃない。ただ、俺は人魚ともう関わりたくない。だから・・・あの人魚の許嫁も。本当は・・・嫌なんだ。リトも聞いたことくらいあるだろう?王子と人魚の許嫁の話は。」
どくん、と僕の心臓が大きく動く。
聞きたくない。
離れたくない。
「相手は名前も、顔も、知らない。男だとは、聞いたが・・・。何でも特別な力を持っているそうだ。」
嫌だ。
聞きたくない。
「・・・その男の人魚と結婚して・・・一生側に居るなんて・・・俺は考えられない。」
どうして?
シエロさんと、僕は一緒に居たいのに。
言ってしまえば、楽になれるんだろうか。
でも別にシエロさんが人間のフリをしている僕のことを好きなわけでもない。
ああ、言葉が出ない。
「・・・すまない。リトには・・・話をしておきたたかったんだ。人魚のことを好ましく思う人間の方が多いことは知っている。気を悪くしたか?」
「い・・・え、大、丈夫で、す・・・」
「そう言えば・・・一度だけ、母に連れられてヤルヴのすぐそばまで行ったことがあった。その時、子ども・・・、の人魚がいたんだ。周りの大人には信じてもらえなかったが、本当に俺は見たんだ。足、と言うか、ヒレの色が・・・・・・リト?どうした、顔色が悪いぞ。」
「・・・あの、僕・・・今日は、」
「やっと会えました。探しましたよ・・・」
ひゅーっと、強く吹いた風は、僕とシエロさんの髪をふわりと舞わせる。
風に乗り、シエロさんからはあの薔薇の香りがして、僕はあの、飴の味を思い出していた。
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