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ルイーズはリシェルの肩に顔を埋め、ふう、と小さく息を吐いた。
サラサラとしたルイーズの銀髪がくすぐったい。
リシェルは恥ずかしさで、ビタッ、と動きが止まり、ルイーズは予想通りのリシェルの反応にくすくすと肩口で笑いをこぼす。
ゆっくりと顔を上げリシェルの黒い瞳を見つめるルイーズは、さっきまでの怒りも落ち着いたようだ。
ルイーズはしばらく何も言わなかったが、ふと思い出したように数メートル離れたところでハザックを一瞥する。
ハザックの男前の顔が悔しそうに歪み、手には必死に我慢するように力が入っているようだ。
ここは、トレードの城。
番が目の前にいるとは言え、過ぎた勝手は許されないと分かっているのだろう。
そんなハザックの姿を確認した後、すぐリシェルに視線を戻し、ふわふわの前髪を左右に流した。
リシェルは不思議そうにルイーズを見上げると、首を傾げた。
ルイーズは何も言わず、少し微笑むと、前髪の間から現れた白いおでこにそっと口付けた。
ルイーズから抱きしめられることは多々あったが、キスをされたのは初めて。
リシェルの小さな口がぽかん、と開き、確認するように自分のおでこを触る。
そして、瞬時にリシェルの顔は庭に咲く鮮やかな薔薇と同じくらい真っ赤になった。
「に、兄様、今、な、な、なにを・・・?」
「可愛いリシェルは私の番だ。絶対に譲らない、誰にも。」
「へっ?」
「あ゛っ?」
リシェルの髪を撫でながら、ルイーズは微笑み続ける。
今、とんでもないことを聞いた気がする。
リシェルの目はぐるぐると回るように大慌てで揺れているが、ルイーズの顔は実に穏やかだった。
今度はリシェルの頭に口付けると、そっと、リシェルの足を地面に下ろした。
もちろん、ルイーズの腕はリシェルの腰にがっしりと回されている。
「婚姻関係は結べなくてもいい。王位継承権もいずれアルジャーノに譲るつもりなんだ。・・・でも、リシェルの隣は絶対に譲らない。」
「・・・に、いさま、何を言ってるの・・・・・・?」
「本当はもっと素敵なプロポーズを考えてたのに・・・。いつかやり直しさせてね、リシェル。」
「えっと・・・・・・えええ・・・?・・・えええ??」
「ふっ・・・ふふふ、ゆっくり考えて。・・・嫌って言っても、離してあげられないけど、ね。」
突然の、それもとんでもない告白。
何が何だかさっぱり分からないリシェルは大きな目をぱちぱちと動かすしかできない。
その間もルイーズはリシェルの頭を撫でたり、頭に口付けたり。
何かの箍が外れたかのように、リシェルを愛でている。
すると今度はハザックから魔力が溢れ出す。
ルイーズは氷系の冷たい魔力だったが、ハザックは真逆。
炎系の燃えるような熱さを身体に纏う。
これが怒りなのか、戸惑いなのか、ハザック自身もわからなかった。
自分の番が、奪われてしまうかもしれない。
獣人にとっては一大事だし、命を賭ける理由には十分な内容だ。
「ルイーズ、お前・・・人間だろ。リシェルが番?俺を揶揄ってんのか・・・?」
「揶揄ってなんかないよ。私は本当のことを言ったまでだ。」
「・・・・・・死ぬか、ルイーズ。」
「望むところだよ。獣人なら君も分かるだろう?・・・番は絶対譲れない。」
「待っ、待ってください!!」
二人のただならぬ雰囲気にリシェルが大きな声を上げた。
ルイーズから慌てて離れると、二人の間に立ち、おろおろと、でも必死で叫ぶ。
「ここで、あ、争いごとは、いけません!!!」
今日から始まった二国間協議。
二人が何を揉め出したのかまだリシェルはよく分かっていないが、協議初日にこの流れは絶対に良くない、とそれだけは分かった。
「と、とにかく、一旦落ちついて話・・・を・・・・・・・・・、あ、あれ・・・?」
「??!リシェルっ?!」
リシェルが突然ぺたん、とその場に座り込む。
何か異変が起きたようだ。
魔力を纏っていた二人はすぐさま愛しい番に駆け寄る。
そして、三人の長い、長い、夜が始まろうとしていた。
サラサラとしたルイーズの銀髪がくすぐったい。
リシェルは恥ずかしさで、ビタッ、と動きが止まり、ルイーズは予想通りのリシェルの反応にくすくすと肩口で笑いをこぼす。
ゆっくりと顔を上げリシェルの黒い瞳を見つめるルイーズは、さっきまでの怒りも落ち着いたようだ。
ルイーズはしばらく何も言わなかったが、ふと思い出したように数メートル離れたところでハザックを一瞥する。
ハザックの男前の顔が悔しそうに歪み、手には必死に我慢するように力が入っているようだ。
ここは、トレードの城。
番が目の前にいるとは言え、過ぎた勝手は許されないと分かっているのだろう。
そんなハザックの姿を確認した後、すぐリシェルに視線を戻し、ふわふわの前髪を左右に流した。
リシェルは不思議そうにルイーズを見上げると、首を傾げた。
ルイーズは何も言わず、少し微笑むと、前髪の間から現れた白いおでこにそっと口付けた。
ルイーズから抱きしめられることは多々あったが、キスをされたのは初めて。
リシェルの小さな口がぽかん、と開き、確認するように自分のおでこを触る。
そして、瞬時にリシェルの顔は庭に咲く鮮やかな薔薇と同じくらい真っ赤になった。
「に、兄様、今、な、な、なにを・・・?」
「可愛いリシェルは私の番だ。絶対に譲らない、誰にも。」
「へっ?」
「あ゛っ?」
リシェルの髪を撫でながら、ルイーズは微笑み続ける。
今、とんでもないことを聞いた気がする。
リシェルの目はぐるぐると回るように大慌てで揺れているが、ルイーズの顔は実に穏やかだった。
今度はリシェルの頭に口付けると、そっと、リシェルの足を地面に下ろした。
もちろん、ルイーズの腕はリシェルの腰にがっしりと回されている。
「婚姻関係は結べなくてもいい。王位継承権もいずれアルジャーノに譲るつもりなんだ。・・・でも、リシェルの隣は絶対に譲らない。」
「・・・に、いさま、何を言ってるの・・・・・・?」
「本当はもっと素敵なプロポーズを考えてたのに・・・。いつかやり直しさせてね、リシェル。」
「えっと・・・・・・えええ・・・?・・・えええ??」
「ふっ・・・ふふふ、ゆっくり考えて。・・・嫌って言っても、離してあげられないけど、ね。」
突然の、それもとんでもない告白。
何が何だかさっぱり分からないリシェルは大きな目をぱちぱちと動かすしかできない。
その間もルイーズはリシェルの頭を撫でたり、頭に口付けたり。
何かの箍が外れたかのように、リシェルを愛でている。
すると今度はハザックから魔力が溢れ出す。
ルイーズは氷系の冷たい魔力だったが、ハザックは真逆。
炎系の燃えるような熱さを身体に纏う。
これが怒りなのか、戸惑いなのか、ハザック自身もわからなかった。
自分の番が、奪われてしまうかもしれない。
獣人にとっては一大事だし、命を賭ける理由には十分な内容だ。
「ルイーズ、お前・・・人間だろ。リシェルが番?俺を揶揄ってんのか・・・?」
「揶揄ってなんかないよ。私は本当のことを言ったまでだ。」
「・・・・・・死ぬか、ルイーズ。」
「望むところだよ。獣人なら君も分かるだろう?・・・番は絶対譲れない。」
「待っ、待ってください!!」
二人のただならぬ雰囲気にリシェルが大きな声を上げた。
ルイーズから慌てて離れると、二人の間に立ち、おろおろと、でも必死で叫ぶ。
「ここで、あ、争いごとは、いけません!!!」
今日から始まった二国間協議。
二人が何を揉め出したのかまだリシェルはよく分かっていないが、協議初日にこの流れは絶対に良くない、とそれだけは分かった。
「と、とにかく、一旦落ちついて話・・・を・・・・・・・・・、あ、あれ・・・?」
「??!リシェルっ?!」
リシェルが突然ぺたん、とその場に座り込む。
何か異変が起きたようだ。
魔力を纏っていた二人はすぐさま愛しい番に駆け寄る。
そして、三人の長い、長い、夜が始まろうとしていた。
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