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メラン編
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「あれ、とは何のことですか・・ラドリー様。それと、俺は一人でも大丈夫なので・・・どうぞお帰りください。」
コツンコツンと靴を鳴らしながら近付いてくるラドリー。何とか穏便に事を済ませようと声をかける。この状況は何か良くない、そんな気がした。ラドリーの目もギラギラとしている。
「・・そんなツレないことを言わないでくれ。あれ、とはメランに張った結界のことだよ。・・・はあ、今思い出しても震えるよ。素晴らしい魔法だった。」
「・・・・・どうしてあなたがあそこに?」
「はは、神殿にはね、親切な友人がいるんだ。・・ああ、ダニエルではないよ。あいつは僕の幼馴染みたいなもんでね。まあ・・気は合わないが。」
「・・・・・そう、ですか。」
返す言葉が見つからない。とにかく誰かが情報を漏らしたことだけはわかった。トウヤは何とも言えない気持ち悪さに段々と身体が強張るのを感じた。
「教えてくれた友人には心から感謝したよ。あれは・・・そう。まさに神の御業だった。美しかったよ・・・魔法も、君もね。」
にこり、とラドリーはトウヤを見て笑っている。優しい笑みとはとても言えない。獲物を見る目だった。トウヤの頭の中で逃げろ、と警報が鳴り始める。しかし今のトウヤでは走ることはもちろん得意の結界も張れない。ただの弱った男である。ぎゅうっと自分の拳を握りしめた。
何も喋らないトウヤに構うことなくラドリーは話し続けた。
「君の本当の瞳は透明に近いんだね。先日は黒だったが・・・力を使い切った、ってところかな?・・・どうやって魔力を集めたんだい?溜めていると話していただろう?騎士団の詰所で。・・・とても興味があるなぁ。」
「・・・あなたには関係ありません。」
「・・ああ、いいね、その目。・・・前話したことは覚えているかな?私は強くて美しいものが好きなんだ。・・・君も強く、そして美しい。」
トウヤの警報がさらに大きくなる。「こいつ、やばい奴だ」と判断し、立ち上がって逃げようとした。しかし上手く立てず、べしゃんと床に手がついてしまった。
ふと顔を上げると、床に座り込んだトウヤを上から見下ろすラドリーと目があった。その目は笑っていなかった。
「おや、力が入らないのか?・・なら私も魔力を譲ろう。さあ、おいで。トウヤ・・様?」
ひゅうっと恐怖で喉が鳴る。まずいまずい!と頭で警報が鳴り響く。微かに手が震えてきた。再度立ち上がろうと床についた手に力を入れようとした時、ガバァっとラドリーの肩に担がれた。必死にバタバタと身体を動かし「離せ!」と抵抗するも、そのままベッドまで運ばれ腕を押さえつけられたのである。
「おや、手が震えてるじゃないか。私のことが怖いのかい?心外だなぁ。・・・さあ、あいつらはどこから魔力を渡してるんだ?教えてくれ。」
「~~っ、関係ないだろ!手ぇ離せ!気持ち悪いんだよ!」
「ははっ、いつもはしおらしいのに今日は威勢がいい。・・・益々屈服させたい。だって考えてごらん。この世で一番魔力の強い者が自分の物になるんだよ?・・・・興奮するに決まってるじゃないか。」
「お、お前のものになんか、ぜってぇなるかよ!死んでも嫌だ!離せよ!」
「いいねぇ。さあて、どこからがいい?肌から?唾液から?・・・それともあいつらはもっと深い方法なのかな?」
コツンコツンと靴を鳴らしながら近付いてくるラドリー。何とか穏便に事を済ませようと声をかける。この状況は何か良くない、そんな気がした。ラドリーの目もギラギラとしている。
「・・そんなツレないことを言わないでくれ。あれ、とはメランに張った結界のことだよ。・・・はあ、今思い出しても震えるよ。素晴らしい魔法だった。」
「・・・・・どうしてあなたがあそこに?」
「はは、神殿にはね、親切な友人がいるんだ。・・ああ、ダニエルではないよ。あいつは僕の幼馴染みたいなもんでね。まあ・・気は合わないが。」
「・・・・・そう、ですか。」
返す言葉が見つからない。とにかく誰かが情報を漏らしたことだけはわかった。トウヤは何とも言えない気持ち悪さに段々と身体が強張るのを感じた。
「教えてくれた友人には心から感謝したよ。あれは・・・そう。まさに神の御業だった。美しかったよ・・・魔法も、君もね。」
にこり、とラドリーはトウヤを見て笑っている。優しい笑みとはとても言えない。獲物を見る目だった。トウヤの頭の中で逃げろ、と警報が鳴り始める。しかし今のトウヤでは走ることはもちろん得意の結界も張れない。ただの弱った男である。ぎゅうっと自分の拳を握りしめた。
何も喋らないトウヤに構うことなくラドリーは話し続けた。
「君の本当の瞳は透明に近いんだね。先日は黒だったが・・・力を使い切った、ってところかな?・・・どうやって魔力を集めたんだい?溜めていると話していただろう?騎士団の詰所で。・・・とても興味があるなぁ。」
「・・・あなたには関係ありません。」
「・・ああ、いいね、その目。・・・前話したことは覚えているかな?私は強くて美しいものが好きなんだ。・・・君も強く、そして美しい。」
トウヤの警報がさらに大きくなる。「こいつ、やばい奴だ」と判断し、立ち上がって逃げようとした。しかし上手く立てず、べしゃんと床に手がついてしまった。
ふと顔を上げると、床に座り込んだトウヤを上から見下ろすラドリーと目があった。その目は笑っていなかった。
「おや、力が入らないのか?・・なら私も魔力を譲ろう。さあ、おいで。トウヤ・・様?」
ひゅうっと恐怖で喉が鳴る。まずいまずい!と頭で警報が鳴り響く。微かに手が震えてきた。再度立ち上がろうと床についた手に力を入れようとした時、ガバァっとラドリーの肩に担がれた。必死にバタバタと身体を動かし「離せ!」と抵抗するも、そのままベッドまで運ばれ腕を押さえつけられたのである。
「おや、手が震えてるじゃないか。私のことが怖いのかい?心外だなぁ。・・・さあ、あいつらはどこから魔力を渡してるんだ?教えてくれ。」
「~~っ、関係ないだろ!手ぇ離せ!気持ち悪いんだよ!」
「ははっ、いつもはしおらしいのに今日は威勢がいい。・・・益々屈服させたい。だって考えてごらん。この世で一番魔力の強い者が自分の物になるんだよ?・・・・興奮するに決まってるじゃないか。」
「お、お前のものになんか、ぜってぇなるかよ!死んでも嫌だ!離せよ!」
「いいねぇ。さあて、どこからがいい?肌から?唾液から?・・・それともあいつらはもっと深い方法なのかな?」
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