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メラン編
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「腹減ったなぁ~、今日の夕飯なんだろう?何か肉食いてぇな、肉。」
「居候の分際で、図々しいなハンス。・・でもいいな、肉。」
「ふふん。だろ?あ、俺、昼間にあっちの噴水がある広場で串焼きの屋台見つけたんだよ!ケインさんちに帰る前のおやつにしようぜ!」
そんなこといつの間に調べたのか、とトウヤは呆れたがもう気づけば夕方だ。
昼食はすでに消化され、肉を想像した瞬間、涎がじゅるっと口の中に溢れた。
アルトとマルクルに「すぐ戻るから」と声をかけ、2人は肉の元に向かったのである。
広場の周りには食べ物屋が集まっており、其処彼処から良い匂いがする。
2人は目的の串焼きを買うと、噴水に座っておやつを食べた。
口の中にジュワっと肉汁が広がる。
高級な肉では無いため、やや硬さがあるが、下処理をしっかりしているのだろう。嫌な臭みもなく、タレにスパイスが効いている。
「中央のはスパイスが結構効いてんだな~。これはこれでうまい。」
「イグニス領は基本塩だけだもんな。他の領地の串焼きはまた違うのかな。」
串焼きをペロリと食べ終わり、2人がたわいもない話をしながら、アルト達の所へ戻ろうとした時。
ドンっと誰かがトウヤの背中にぶつかった。
「うっわぁ!お兄さん!前見てなかった!ごめんね、大丈夫?・・あ!!ついでにちょっと動かないで欲しいんだ!うわ!もう来た!じっとしててね!」
「???うぇ?お、お前だれだよ?ぇえ?か、隠す?何だ?悪いやつに追われてんのか?それともいじめられてんのか?」
トウヤの言葉に、屈んで身体を隠しながら、「そうそう!僕、か弱いんだ!」と少年は適当に相槌を打っている。
そんなやり取りの後すぐに、頭に布を巻き、腰に半月刀を差した数人の男達が辺りをキョロキョロ見渡して何か探しているいることに気づく。
「おい、おい!トウヤ!そいつなんか訳ありだってぇ。・・って、あれ、黄の領地の騎士じゃねぇの?やばいってぇ。」
訳もわからないまま何かに巻き込まれたであろうハンスは半泣きで囁く。
「だって・・こいつ困ってんだろ?まだ小さいぜ、誰かが助けてやらねーとかわいそうじゃねーか!」
「お、お兄さん、お人好し~!おもしろ~い!」
キャハハッと、少年が笑い始める。
その甲高い笑い声に気付いた騎士らしき人物とトウヤの目が合う。
そしてそのトウヤの背後にちょこんと座り、まだ笑い続けている少年を見つけると、物凄い勢いで近付いてきた。
トウヤは一瞬身構えたが、騎士の表情が必死で、困り果てた表情をしていることに気付き、そのまま様子を窺った。
「もぉ~タミル様ぁ~~!そんな所にいらっしゃったのですね!いけませんよ!馬車にお戻りください!」
騎士がタミル様、と呼んだ少年。
トウヤが振り返ると一通り笑い終えて満足したのか、お尻に付いた砂をパンパンと払い、立ち上がった。
よく見ると、瞳が黄金に輝いている。
服装も・・・白地に金色の刺繍が施された丈の長いズボンと上着を着ている。
どうやら、身分が高そうだ。
「え~、だって美味しそうな匂いがしたんだもの。長旅だったんだから、少しくらい自由にしてもいいでしょお、ダスールのケチ。」
タミルは腰ぐらいまで伸びた金髪を後ろで三つ編みにし、束ねている。
その綺麗に編まれた三つ編みをぶんぶん左右に振り回し、頬を膨らませ駄々をこねた。
どうやら、いじめられている訳じゃないらしい。
「・・おっと、失礼。メランの方ですか?主を保護していただいたようで感謝致します。」
ダスールと呼ばれた騎士は、頭を綺麗に30度程ピシッと下げる。
「い、いえ、保護なんてそんな・・ことしてないです。こいつ・・いや、この方が困ってたので・・その・・。じゃ、俺たち仕事あるんで。失礼しまーーー」
「ーす。」と言い終わる前に、後ろにいた少年から力の限りぎゅうぅぅと抱きしめられた。
急に抱きしめられた驚きと、こいつ力つよっ、という驚きでトウヤの目が見開かれる。
「僕、このお兄さんのとこ遊びに行きたい!ねぇ、いいでしょお?」
「な、何をおっしゃいますか!王城に向かってたの忘れたんですか!そんな訳ないですよね!」
「だって、このお兄さん、とっっても良い人だよぉ。僕好きになっちゃった。それにねーーー・・」
「ーーーとっても、不思議な感じがする。」
最後はトウヤにだけ聞こえる声で囁くと、タミルはふわりと微笑んだ。
「居候の分際で、図々しいなハンス。・・でもいいな、肉。」
「ふふん。だろ?あ、俺、昼間にあっちの噴水がある広場で串焼きの屋台見つけたんだよ!ケインさんちに帰る前のおやつにしようぜ!」
そんなこといつの間に調べたのか、とトウヤは呆れたがもう気づけば夕方だ。
昼食はすでに消化され、肉を想像した瞬間、涎がじゅるっと口の中に溢れた。
アルトとマルクルに「すぐ戻るから」と声をかけ、2人は肉の元に向かったのである。
広場の周りには食べ物屋が集まっており、其処彼処から良い匂いがする。
2人は目的の串焼きを買うと、噴水に座っておやつを食べた。
口の中にジュワっと肉汁が広がる。
高級な肉では無いため、やや硬さがあるが、下処理をしっかりしているのだろう。嫌な臭みもなく、タレにスパイスが効いている。
「中央のはスパイスが結構効いてんだな~。これはこれでうまい。」
「イグニス領は基本塩だけだもんな。他の領地の串焼きはまた違うのかな。」
串焼きをペロリと食べ終わり、2人がたわいもない話をしながら、アルト達の所へ戻ろうとした時。
ドンっと誰かがトウヤの背中にぶつかった。
「うっわぁ!お兄さん!前見てなかった!ごめんね、大丈夫?・・あ!!ついでにちょっと動かないで欲しいんだ!うわ!もう来た!じっとしててね!」
「???うぇ?お、お前だれだよ?ぇえ?か、隠す?何だ?悪いやつに追われてんのか?それともいじめられてんのか?」
トウヤの言葉に、屈んで身体を隠しながら、「そうそう!僕、か弱いんだ!」と少年は適当に相槌を打っている。
そんなやり取りの後すぐに、頭に布を巻き、腰に半月刀を差した数人の男達が辺りをキョロキョロ見渡して何か探しているいることに気づく。
「おい、おい!トウヤ!そいつなんか訳ありだってぇ。・・って、あれ、黄の領地の騎士じゃねぇの?やばいってぇ。」
訳もわからないまま何かに巻き込まれたであろうハンスは半泣きで囁く。
「だって・・こいつ困ってんだろ?まだ小さいぜ、誰かが助けてやらねーとかわいそうじゃねーか!」
「お、お兄さん、お人好し~!おもしろ~い!」
キャハハッと、少年が笑い始める。
その甲高い笑い声に気付いた騎士らしき人物とトウヤの目が合う。
そしてそのトウヤの背後にちょこんと座り、まだ笑い続けている少年を見つけると、物凄い勢いで近付いてきた。
トウヤは一瞬身構えたが、騎士の表情が必死で、困り果てた表情をしていることに気付き、そのまま様子を窺った。
「もぉ~タミル様ぁ~~!そんな所にいらっしゃったのですね!いけませんよ!馬車にお戻りください!」
騎士がタミル様、と呼んだ少年。
トウヤが振り返ると一通り笑い終えて満足したのか、お尻に付いた砂をパンパンと払い、立ち上がった。
よく見ると、瞳が黄金に輝いている。
服装も・・・白地に金色の刺繍が施された丈の長いズボンと上着を着ている。
どうやら、身分が高そうだ。
「え~、だって美味しそうな匂いがしたんだもの。長旅だったんだから、少しくらい自由にしてもいいでしょお、ダスールのケチ。」
タミルは腰ぐらいまで伸びた金髪を後ろで三つ編みにし、束ねている。
その綺麗に編まれた三つ編みをぶんぶん左右に振り回し、頬を膨らませ駄々をこねた。
どうやら、いじめられている訳じゃないらしい。
「・・おっと、失礼。メランの方ですか?主を保護していただいたようで感謝致します。」
ダスールと呼ばれた騎士は、頭を綺麗に30度程ピシッと下げる。
「い、いえ、保護なんてそんな・・ことしてないです。こいつ・・いや、この方が困ってたので・・その・・。じゃ、俺たち仕事あるんで。失礼しまーーー」
「ーす。」と言い終わる前に、後ろにいた少年から力の限りぎゅうぅぅと抱きしめられた。
急に抱きしめられた驚きと、こいつ力つよっ、という驚きでトウヤの目が見開かれる。
「僕、このお兄さんのとこ遊びに行きたい!ねぇ、いいでしょお?」
「な、何をおっしゃいますか!王城に向かってたの忘れたんですか!そんな訳ないですよね!」
「だって、このお兄さん、とっっても良い人だよぉ。僕好きになっちゃった。それにねーーー・・」
「ーーーとっても、不思議な感じがする。」
最後はトウヤにだけ聞こえる声で囁くと、タミルはふわりと微笑んだ。
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