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目が開けられないほどの青い空。
舞い上がる土埃。
止まらない汗。
頭にはバケットハット、目にはサングラス、首には推しバンドのマフラータオルに、勿論バンドTに短パン。
辺り全体を支配したかのような、音に合わせて揺れる空気。
知らないバンドだったけど、今年のオープニングアクトは当たりだな。
ありがとう、腹に響く重低音。ご馳走様です。
一杯目のビールが全身に染み渡るぜ。
「あっっっっっっちぃぃい~~~~!最っっ高!!」
「田植えフェス危機だったけど、台風逸れて本当よかったな。」
(※雨でぬかるんだ状態のフェスを田植えフェスと言います)
「ま、田植えでも楽しむ自信あるけど。」
「いや、俺もだし。今からでもどんとこいや。」
「長靴もカッパも傘も全部駅のロッカーに置いてきたLevel.1の村人にそれ言う?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「「アハハハハハハハハ!もう何でもいいや~~!楽し~~~~!」」
アラサー男二人、青空に向かってビール入りプラカップで乾杯。
朝のシャトルバスで俺と同い年くらいの子連れパパさんに『タオル落としたよ、お兄ちゃん。』ってめちゃくそ年下扱いされたし、このビール買うのにも身分証出すまで、頑なにヤンキー兄ちゃん俺にビール売ってくれなかった。
だが、俺にとってそんなもん日常茶飯事。
今日はもうどうでもいい。(と言いながら根に持つアラサー)
俺は年に一度だけ、子どもに戻る。
今日一日、この音楽と匂いを全身の細胞の一つ一つに取り込んで、また来年まで頑張るんだ。
すーはーすーはーすーはー・・・
「で、颯太。結局今日どこで休憩?休憩無しは死ぬで?俺、ジェホとmimiは譲れん。」
「は?俺だってドニヘルとriperは譲れん。」
「「・・・・・・・・・じゃ、今日が俺らの命日かぁ。」」
うふふ。それも仕方ない。
だって颯太と穣は幼馴染だと言えどもさすがに推しが若干違う。
しかも昨日も俺はテッペン過ぎるまで仕事してたし、酒も飲んじゃった。
・・・わぁ♡熱中症ぶっ倒れフラグ立ってる~・・・
「ま、イケるしょ。まだ俺ら30歳だし。」
「・・・穣と違って俺はまだ29歳ですけど?」
「へぇへぇ、誤差誤差。それよりストレッチしたか?今年はサークルで転けて足挫くなよ?」
「・・・・・・・・・デケェ声で言うなよ。黒歴史だろ。」
「今年はもうおんぶしねぇからな。爺ちゃん。」
「ほら行くぞ、三十路。」
穣とはいつもこんな感じだ。
穣は就職と同時に隣の県に引っ越した。
だからたまにしか会えない。
今日だって現地集合、現地解散。
お互い違うシャトルバスで来て、またバラバラに帰る。
俺のアパートはこの会場から比較的近いから、ヘッドライナーからの終演花火まで全部余すことなく見届けた時間のシャトルバスに乗っても、余裕で0時前に家に着く。
ちなみに、穣は明日仕事らしい。
お互い社畜すぎて嫌んなるぜ、ほんと。
「さて!生の音楽を楽しむとしますかね!」
「出陣じゃーーーーー!」
そしてこの出陣で、ある意味大敗を喫するのだが、推しのバンドタオルを首に意気揚々と巻いたこの時の俺は、まだ知る由もない。
-----------------⭐︎
「出陣ってワードがなかなかダセェな。」
「ウルセェ。」
-----------------⭐︎
舞い上がる土埃。
止まらない汗。
頭にはバケットハット、目にはサングラス、首には推しバンドのマフラータオルに、勿論バンドTに短パン。
辺り全体を支配したかのような、音に合わせて揺れる空気。
知らないバンドだったけど、今年のオープニングアクトは当たりだな。
ありがとう、腹に響く重低音。ご馳走様です。
一杯目のビールが全身に染み渡るぜ。
「あっっっっっっちぃぃい~~~~!最っっ高!!」
「田植えフェス危機だったけど、台風逸れて本当よかったな。」
(※雨でぬかるんだ状態のフェスを田植えフェスと言います)
「ま、田植えでも楽しむ自信あるけど。」
「いや、俺もだし。今からでもどんとこいや。」
「長靴もカッパも傘も全部駅のロッカーに置いてきたLevel.1の村人にそれ言う?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「「アハハハハハハハハ!もう何でもいいや~~!楽し~~~~!」」
アラサー男二人、青空に向かってビール入りプラカップで乾杯。
朝のシャトルバスで俺と同い年くらいの子連れパパさんに『タオル落としたよ、お兄ちゃん。』ってめちゃくそ年下扱いされたし、このビール買うのにも身分証出すまで、頑なにヤンキー兄ちゃん俺にビール売ってくれなかった。
だが、俺にとってそんなもん日常茶飯事。
今日はもうどうでもいい。(と言いながら根に持つアラサー)
俺は年に一度だけ、子どもに戻る。
今日一日、この音楽と匂いを全身の細胞の一つ一つに取り込んで、また来年まで頑張るんだ。
すーはーすーはーすーはー・・・
「で、颯太。結局今日どこで休憩?休憩無しは死ぬで?俺、ジェホとmimiは譲れん。」
「は?俺だってドニヘルとriperは譲れん。」
「「・・・・・・・・・じゃ、今日が俺らの命日かぁ。」」
うふふ。それも仕方ない。
だって颯太と穣は幼馴染だと言えどもさすがに推しが若干違う。
しかも昨日も俺はテッペン過ぎるまで仕事してたし、酒も飲んじゃった。
・・・わぁ♡熱中症ぶっ倒れフラグ立ってる~・・・
「ま、イケるしょ。まだ俺ら30歳だし。」
「・・・穣と違って俺はまだ29歳ですけど?」
「へぇへぇ、誤差誤差。それよりストレッチしたか?今年はサークルで転けて足挫くなよ?」
「・・・・・・・・・デケェ声で言うなよ。黒歴史だろ。」
「今年はもうおんぶしねぇからな。爺ちゃん。」
「ほら行くぞ、三十路。」
穣とはいつもこんな感じだ。
穣は就職と同時に隣の県に引っ越した。
だからたまにしか会えない。
今日だって現地集合、現地解散。
お互い違うシャトルバスで来て、またバラバラに帰る。
俺のアパートはこの会場から比較的近いから、ヘッドライナーからの終演花火まで全部余すことなく見届けた時間のシャトルバスに乗っても、余裕で0時前に家に着く。
ちなみに、穣は明日仕事らしい。
お互い社畜すぎて嫌んなるぜ、ほんと。
「さて!生の音楽を楽しむとしますかね!」
「出陣じゃーーーーー!」
そしてこの出陣で、ある意味大敗を喫するのだが、推しのバンドタオルを首に意気揚々と巻いたこの時の俺は、まだ知る由もない。
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「出陣ってワードがなかなかダセェな。」
「ウルセェ。」
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