28 / 40
第27話
しおりを挟む
「は……?」
戦って認めさせる?
僕が? イーリスと?
「いやいや、ちょっと待ってよ。さすがにこんなに小さな子と戦うなんて出来ないよ」
僕が、戦う意思がないことを伝えると、先程までの笑みが次第に消えていき、瞬きをした瞬間にはその場にいなかった。
「なっ! ——ッ!」
すぐにイーリスを探すと、後ろから何かが飛んできた。
僕がその場を飛び退くと、さっきまで僕が立っていた場所に氷の柱が突き刺さっていた。
「なんじゃ、せっかく妾が試してやると言っておるに、そんな態度でこられたら白けるじゃろ」
「……吸血鬼ってのはみんなこんなに好戦的なのかな?」
「どうじゃろうな。妾は吸血鬼の中でも若い方じゃから、多少血の気は多いかもしれんがの」
そう言いながら、イーリスは赤い瞳で僕のことを射るように見つめる。
「侮ってたことは謝るよ。イーリスの見た目で、戦えないなんて言ってごめん」
僕はそう謝ってから、剣を構える。
すると、一瞬ムッとした顔をした後に、すぐに口角を上げ楽しそうな顔で僕のことを見てくる。
その際に口の端から、鋭く尖った歯が覗いていたことから、やはりイーリスは吸血鬼なんだということを再確認した。
「まぁ、今はそれでいいのじゃ。そのうちそんな余裕もなくなるじゃろうから、なっ!」
イーリスは僕目掛けて、一直線に飛んでくる。
さっきは油断してたから見失ってしまったけれど、注意していれば何とか目で追える。
それでもギリギリってところなので、イーリスの速度が相当なものであることがわかる。
それを、僕は全力で横に飛ぶことで回避する。
「避けてばかりでは、妾には勝つことは出来ぬぞ!」
イーリスは避けられたことに気づくと、右手を僕の方に向け、手のひらからスイカ程の大きさの炎弾を飛ばしてきた。
「はぁっ!? 詠唱はどうしたんだよ!」
見た感じ、この炎弾は魔法だと思うのだが、魔法には必ず詠唱というものが必要になると聞いたことがある。
だが、イーリスの炎弾は詠唱がなかったように思う。
「これは血魔法と呼ばれるものじゃ! 吸血鬼固有の魔法じゃから貴様が見るのは初めてじゃろうな!」
くっそ、吸血鬼何でもありか!
僕は瞬時に横に転がり、炎弾の直撃を回避する。
すると、後ろから大爆発が起きた。
「まさか、一番最初に森に同じの撃った?」
「そのまさかじゃな」
まじか……
木々が吹き飛んでたからとんでもない威力の爆発だと思ってたんだけど、まさかこんなものだったとは。
「そんなことより! 貴様、これでも抜かぬとは……もっと広範囲、高威力でないと抜かせることは出来ぬか」
と、イーリスはそんなことをブツブツと呟いてから、両手をこちらに向けてきた。
ヤバッ!
そう思い、イーリスの方に急いで駆け出すが、やはり詠唱がない分イーリスの方が早く、両の手のひらからとてつもない熱量を持った青い炎が吹き出した。
「避けれねぇ!」
僕は咄嗟に、身体を捻り、左側を前にして炎を受ける。
腕で顔は遮っているものの、そんなことは関係ないと言わんばかりに、炎は僕の身体を焼いていく。
「がああぁぁぁぁ!」
一瞬、有り得ない程の痛みを感じ、耐えられずに叫ぶ。
少しの間、炎に耐えていると、炎が止んだ。
「はぁ……はぁ……」
「……貴様、何故剣を抜かぬのじゃ」
イーリスが何か言っているが、上手く聞こえない。
左目も見えず、鋭い痛みだけが走っている。
「期待はずれじゃな……所詮は人間か」
辛うじて見える右目で、イーリスを見れば、心底残念そうな顔をして、こちらに片手を向けていた。
そして、その手のひらに青白い光が集まっていき、氷の槍が作られた。
「さらばじゃ、今代の裁定者よ」
イーリスの手から、氷の槍が放たれ、槍は僕の腹を貫通した。
戦って認めさせる?
僕が? イーリスと?
「いやいや、ちょっと待ってよ。さすがにこんなに小さな子と戦うなんて出来ないよ」
僕が、戦う意思がないことを伝えると、先程までの笑みが次第に消えていき、瞬きをした瞬間にはその場にいなかった。
「なっ! ——ッ!」
すぐにイーリスを探すと、後ろから何かが飛んできた。
僕がその場を飛び退くと、さっきまで僕が立っていた場所に氷の柱が突き刺さっていた。
「なんじゃ、せっかく妾が試してやると言っておるに、そんな態度でこられたら白けるじゃろ」
「……吸血鬼ってのはみんなこんなに好戦的なのかな?」
「どうじゃろうな。妾は吸血鬼の中でも若い方じゃから、多少血の気は多いかもしれんがの」
そう言いながら、イーリスは赤い瞳で僕のことを射るように見つめる。
「侮ってたことは謝るよ。イーリスの見た目で、戦えないなんて言ってごめん」
僕はそう謝ってから、剣を構える。
すると、一瞬ムッとした顔をした後に、すぐに口角を上げ楽しそうな顔で僕のことを見てくる。
その際に口の端から、鋭く尖った歯が覗いていたことから、やはりイーリスは吸血鬼なんだということを再確認した。
「まぁ、今はそれでいいのじゃ。そのうちそんな余裕もなくなるじゃろうから、なっ!」
イーリスは僕目掛けて、一直線に飛んでくる。
さっきは油断してたから見失ってしまったけれど、注意していれば何とか目で追える。
それでもギリギリってところなので、イーリスの速度が相当なものであることがわかる。
それを、僕は全力で横に飛ぶことで回避する。
「避けてばかりでは、妾には勝つことは出来ぬぞ!」
イーリスは避けられたことに気づくと、右手を僕の方に向け、手のひらからスイカ程の大きさの炎弾を飛ばしてきた。
「はぁっ!? 詠唱はどうしたんだよ!」
見た感じ、この炎弾は魔法だと思うのだが、魔法には必ず詠唱というものが必要になると聞いたことがある。
だが、イーリスの炎弾は詠唱がなかったように思う。
「これは血魔法と呼ばれるものじゃ! 吸血鬼固有の魔法じゃから貴様が見るのは初めてじゃろうな!」
くっそ、吸血鬼何でもありか!
僕は瞬時に横に転がり、炎弾の直撃を回避する。
すると、後ろから大爆発が起きた。
「まさか、一番最初に森に同じの撃った?」
「そのまさかじゃな」
まじか……
木々が吹き飛んでたからとんでもない威力の爆発だと思ってたんだけど、まさかこんなものだったとは。
「そんなことより! 貴様、これでも抜かぬとは……もっと広範囲、高威力でないと抜かせることは出来ぬか」
と、イーリスはそんなことをブツブツと呟いてから、両手をこちらに向けてきた。
ヤバッ!
そう思い、イーリスの方に急いで駆け出すが、やはり詠唱がない分イーリスの方が早く、両の手のひらからとてつもない熱量を持った青い炎が吹き出した。
「避けれねぇ!」
僕は咄嗟に、身体を捻り、左側を前にして炎を受ける。
腕で顔は遮っているものの、そんなことは関係ないと言わんばかりに、炎は僕の身体を焼いていく。
「がああぁぁぁぁ!」
一瞬、有り得ない程の痛みを感じ、耐えられずに叫ぶ。
少しの間、炎に耐えていると、炎が止んだ。
「はぁ……はぁ……」
「……貴様、何故剣を抜かぬのじゃ」
イーリスが何か言っているが、上手く聞こえない。
左目も見えず、鋭い痛みだけが走っている。
「期待はずれじゃな……所詮は人間か」
辛うじて見える右目で、イーリスを見れば、心底残念そうな顔をして、こちらに片手を向けていた。
そして、その手のひらに青白い光が集まっていき、氷の槍が作られた。
「さらばじゃ、今代の裁定者よ」
イーリスの手から、氷の槍が放たれ、槍は僕の腹を貫通した。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~
ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。
ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!!
※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました
お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。
その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる